ビジネスシーンでよく耳にする「フィードバック」という言葉。いざ自分が上司として部下にフィードバックをする立場になると、どのように行えばいいのかと不安になることもあるでしょう。
本記事では「フィードバック」について解説。フィードバックの役割や実行する際のポイント、またタイミングや避けるべきことなど、フィードバックをする上で役立つ情報を紹介します。
フィードバックとは?
最も有力なフィードバックの語源は、英単語の「Feed」と「Back」です。「(人や動物に)食べ物・餌を与える」「栄養」という意味の「Feed」と、「戻す」「返す」という意味をもつ「Back」という単語が合わさって、「栄養を戻す、食べ物を返す」という意味になっています。
そんなフィードバックは、元々はITの分野で使用されていたIT用語です。IT用語としてのフィードバックは、「外部との入力、出力関係がある場合に、改善や修繕をするため、出力されていたものの一部または全部を入力の方に戻す作業のこと」をいいます。
現在ではさまざまな分野で用いられるフィードバックですが、ITの分野では電子回路や制御システムの基本的な仕組みを表す際に主に用いられる言葉です。
ビジネスにおける「フィードバック」の2つの意味
ビジネスシーンでよく使われるフィードバックには、以下の2つの意味があります。
1. 商品やサービスを対象とした「フィードバック」
2. 業務や振る舞い、姿勢に対して行われる「フィードバック」
1のフィードバックは、「カスタマーフィードバック」といわれ、商品やサービスを利用した消費者から、その商品やサービスに対して寄せられる意見や提案のことを指します。
カスタマーフィードバックを得ることのメリットは、生産者側では見落としていた消費者目線の問題点や、商品の改善点が見つかることで、よりよい商品づくりに活かすことができる点です。これにより、消費者の満足度やリピート率を上げることができます。
一方、2のフィードバックは、社員の業務や行動を評価し、改善点を示すことで、仕事でのパフォーマンスを向上させるという目的があります。社員の業務や行動に対するフィードバックであるということが1との大きな違いです。
そのため、フィードバックをただ伝えて終わりなのではなく、フィードバックをもらった社員の行動や業務が改善され、個人としてパフォーマンスがあげられるような、実のある内容であることが求められます。
フィードバックの役割
フィードバックには、主に4つの役割があります。どのような目的でフィードバックを行うかを念頭に置いて考えることで、相手に有益なフィードバックができるようになります。
生産性(効率)を上げる
フィードバックの1つ目の役割は、生産性(効率)を上げることです。すでにスキルを持っている人から的確なアドバイスをもらうことで、自分で模索するよりも簡単に、かつ短期間で成長させることができ、結果として業務の生産性(効率)をあげることができます。
モチベーションを上げる
2つ目のフィードバックの役割は、モチベーションを上げることです。フィードバックをもらうことで、短期間での成長が可能なため、できなかった業務ができるようになっていく達成感や満足感を得ることができます。
より高いゴールを設定し、更に上へ上へと学ぶ気持ちが膨らむので、業務に対するモチベーションを上げることができるでしょう。
人材を育成させる
フィードバックの3つ目の役割は、人材を育成させることです。組織の中でフィードバック制度を導入することにより、部下が抱えている不得意な部分に対し、先輩社員がうまくアドバイスすることができます。
わざわざ時間を割いてくれる先輩という大きな存在が、人材の育成に大きな影響を及ぼすことでしょう。
従業員を定着させる
4つ目のフィードバックの役割は、従業員を定着させることです。フィードバックをすることにより、仕事のパフォーマンスが上がるだけでなく、上司と1対1でコミュニケーションを取る機会が定期的に作られることで、離職率が抑えられ、結果として従業員を定着させることができます。
フィードバックのポイント
相手に対して有益なフィードバックをするために意識したいポイントは、以下の5つです。
1.フィードバックをする環境を整える
まずはフィードバックをする環境を整えましょう。フィードバックは、受け手によって受ける印象やインパクト、解釈が異なります。そのため、なるべく静かで相手がリラックスできるような環境で行うと効果的です。
2.事前に設定した目標と照らしながら行う
フィードバックをする際は、事前に設定した目標と照らしながら行いましょう。
短期間で成長するためには、立てた目標に対して、どのようなスキルが不足していたのか、今後どうすれば達成できるようになるのかを考えていく必要があります。目標がなければ何を目指していけばいいのかがわからなくなってしまうので、予め目標を立て、立てた目標にそってフィードバックを行うと伝わりやすいです。
3.内容はわかりやすく、かつ具体的に
フィードバックの内容はわかりやすく、かつ具体的に伝えましょう。フィードバックの趣旨は、なんといっても相手に有益なアドバイスを与えて成長させることです。
どこをどう改善するべきなのか、相手に行動レベルでくわしく伝えることにより、次にするべき行動を示すことができます。
4.フォローアップを欠かさずに行う
フィードバックをしたらフォローアップを欠かさずに行いましょう。立てた目標を達成させるためには、フィードバック時にアドバイスして終わりではなく、日常的に相手の成長に関与する必要があります。
5.人間関係の構築
フィードバックを有効なものとするために、人間関係の構築は重要です。フィードバックは、相手の弱点を指摘しなくてはいけない、少しセンシティブな制度となります。そのため、ベースとなる人間関係をしっかり構築し、信頼関係を築いておくことが大切です。
フィードバックをするにあたって避けるべきこと
せっかくのフィードバックも、ネガティブに捉えられてしまうと、成長につなげる事はできません。フィードバックをするにあたって避けるべきことも押さえておきましょう。
人格や能力を否定すること
フィードバックをする際は人格や能力を否定することは避けましょう。人格や能力を否定された時点で、相手は聞く耳を閉ざしてしまいます。相手のやる気を削ぐようであれば、フィードバックの意味がなくなってしまいます。
相手を責めること
相手を責めることはしないでください。フィードバックの目的は、相手を成長させることであって、相手を責めることではありません。
フィードバックに主観を挟むこと
フィードバックに主観を挟むのはNGです。フィードバックは客観的な視点からいうべきなので、好き嫌いなどの主観を挟むことは絶対にしないでください。
他の社員と比較すること
フィードバックする際に他の社員と比較することは避けましょう。得意不得意はそれぞれ違いますし、比較されることで、相手のモチベーションを下げてしまいます。
人前でフィードバックをすること
自分の弱点を人前で言われたら誰しも嫌な気持ちになりますよね。フィードバックなどのプライベートなことは、話すタイミングや場所に気をつけ、人前では行わないようにしましょう。
フィードバックをする適切なタイミングと頻度
フィードバックをする適切なタイミングや頻度は、プロジェクトの長さや受け手によって変わります。相手が課題を知ってから改善していく期間や、プロジェクト全体の流れを把握することで、フィードバックをするタイミングや頻度を的確に判断する必要があります。
ポイントを抑えて有効なフィードバックを行いましょう
ビジネスシーンで使われるフィードバックは、相手の成長をサポートし、仕事のパフォーマンスを向上させることが一番の目的です。そのため、フィードバックの伝え方や伝える環境のせいで、相手のモチベーションを下げてしまわないよう気をつける必要があります。
フィードバックをする際は、具体的で的確なアドバイスを、適切なタイミングと頻度で行いましょう。