フォロワーシップは、ビジネスシーンでよく使われる言葉です。しかし、聞き馴染みのあるリーダーシップとの違いなど意味をしっかりと理解できている方は少ないでしょう。
フォロワーシップは企業や組織で求められているスキルのひとつです。この記事では、フォロワーシップの意味やリーダーシップとの違い、また具体的な行動例を紹介します。
フォロワーシップの意味
フォロワーシップとは、組織のメンバーがリーダーをサポートすることでチームワークの向上を目指す考え方のことです。
従来のリーダーシップは、リーダーがメンバーを率先して引っ張り、影響力を持つ役割が求められてきました。それに対して、フォロワーシップには「リーダーへの積極的な支援」、「組織への自律的な貢献」といった意味をもっており、リーダーでなくとも主体的・積極的に動くことが重要とされています。
近年の日本の企業では、管理職の負担が大きくなっているのが現状です。そのため、メンバーがリーダーの負担や役割を保管し、チーム全体で組織の成長を促すフォロワーシップが理想的であり、求められています。
フォロワーシップの英語表記
フォロワーシップを英語表記は「followership」です。従者や家来という意味を持つ「follower」と、名詞の状態を表す接尾辞の「ship」からできています。意味は日本のビジネス用語として使われている意味と同じです。
フォロワーシップが重要な理由
フォロワーシップの提唱者であるロバート・ケリー教授の調査によると、組織の中でリーダーが与える影響は1~2割であるのに対して、フォロワー(部下やリーダーを補佐する)が与える影響は8~9割もあるといわれています。つまりチームでの役割や与える影響の関係には、フォロワーの存在が大きいのです。
いくら能力のあるリーダーでも、フォロワーの存在は必要不可欠であり、目標達成にはメンバーのフォロワーシップの向上が重要になります。フォロワーシップを行うと、部下やフォロワーの自発的な発言を促進することが可能です。上司が部下に支援を求めるだけではなく、部下は上司やリーダーの性格や目標・ビジョン、業界の戦略や方向性などさまざまな視点でコミュニケーションをする必要があります。
また、フォロワーシップが浸透することで一体感が芽生える効果もあるのです。支援を受けるリーダーや上司だけではなく、フォロワー全体にメリットがうまれます。
フォロワーシップで組織を動かす11の行動
『リーダーシップ・マスター』(マーシャル・ゴールドスミス著)には「フォロワーの正しい11の行動」が書かれています。マーシャル・ゴールドスミス氏は、経営者向けのコーチングの第一人者といわれている人物です。
では、実際にビジネスや組織の現場でフォロワーシップを活用していくには、どのような行動をするべきなのこの「フォロワーの正しい11の行動」を参考に見ていきましょう。
フォロワーの正しい11の行動の具体例
組織やチームワークの向上のために生かすことができる、フォロワーの考え方やすべき11の行動の具体例は次の通りです。
- すべての決定は決定権者のある人によって行われ、決定権は誰であるかを理解する
- 採用されるか否かに関わらず、アイデアを積極的に提案する
- 目標やノルマだけではなく、社会や顧客、より多くの人々の利益への貢献を大切にする
- 足の引っ張り合いや派閥抗争といった心理的欲求にエネルギーを使わずに、本来の目的を考え誠実に行動する
- 数字でアイデアの説得力を持たせ、費用対効果分析を提示する
- フォロワーであっても、倫理違反があるときは異議申し立てをする
- リーダー・上司も完璧でないことを理解し、失敗や弱点があることを受け入れる
- 優れたフォロワーは対人マナーに優れており、気持ちやニーズを考えて行動できる
- 説得力ある表現で伝え、組織の最終決定は支持をする
- 自分の行動が組織に貢献しているか検証する
- 過去に執着せず、未来志向で考えて行動する
明日からでも仕事に生かすことができる考え方や行動もありますね。
部下やフォロワーだからといって、リーダーに全て任せるのではなく、主体的にアイデアを出したり、リーダーや組織に貢献できているかを考えたりするだけでも行動は変わります。
フォロワーシップを意識することで、円滑なコミュニケーション能力も養うことができるでしょう。
フォロワーシップとリーダーシップの違い
フォロワーシップとリーダーシップの違いについて解説します。
リーダーシップとは
リーダーシップとは組織やチームを導く存在、また資質や能力のことです。リーダーシップは古英語「lædan」が語源になっており、何かを生み出したり導いたりするという意味があります。リーダーはメンバーやフォロワーの行動の模範になり、メンバーにいい影響を与える必要があります。
リーダーシップにはコミュニケーション能力や決断力、目標設定や育成能力が必要です。目標のためにチームをまとめ、トラブルが起こった際に対処できる力が求められます。実際にリーダーという立場でなくとも、ビジネスにおいてもっていると強みになる能力です。
フォロワーシップとリーダーシップの関係性
フォロワーシップは常にリーダーシップとセットの関係で機能します。リーダーが決定した方針や目標に対して、部下やフォロワーが実現可能なタスクや施策に落とし込むイメージが分かりやすいでしょう。
リーダーは「決定」すること、フォロワーは「提言・健全な批判」をする関係性が理想的です。
フォロワーシップはこれからの時代に必要
フォロワーシップとは、チームの成果の向上や目標達成のために自主的・主体的にリーダーや他のメンバーに働きかけ支援することです。フォロワーシップを身に付けることで、上司との関係や個人のスキルアップだけではなく、チームワークが良くなる効果もあります。
いつかはリーダーになりたいと思っている人でも、いいフォロワーシップを身に付け、リーダーとフォロワーの役割を理解することが重要です。
フォロワーシップが不足している今、ほとんどの仕事はチームや複数で進めていく必要があるので、フォロワーシップを身に付けることでさまざまな企業・人から求められる人材になることができるでしょう。