夫婦には様々な形があります。夫婦ともどもバリバリと第一線で働くことをライフスタイルにしているケースもあれば、どちらかはパート程度で主たる働き手の収入を補完するケース、完全に片方が家庭に専念するケースといろいろです。
パートで働く際の「〇〇の壁」といった損得のガイドラインは以前からよく知られていますが、それらの選択は本来、自分たちのライフスタイル線上にあるはずで、必ずしも損得によるものではないはずです。ここでは税や年金の仕組みを理解して、共働きと片働きのメリットやリスクを知り、ライフスタイルに即した人生を健全に過ごしていくには、どう注意すればよいかを考えてみましょう。
30歳同士の夫婦で比較してみよう
最初に、現状の給与の控除の内訳や税について比較してみましょう。所属の健康組合によって健康保険料や手当などに違いがあるケースもあり、また住んでいる地域によって住民税に違いがあるケースもあります。あくまでも目安と考えてください。比較するサンプルは下記のケースとします。
片働きケース
- 夫30歳、妻30歳
- 会社員で年収は1,000万円、配偶者は専業主婦(夫)
- 賃貸住まい
- 子どもなし、ただし2人産む予定
共働きケース
- 夫30歳、妻30歳
- ともに会社員で、年収はそれぞれ500万円
- 賃貸住まい
- 子どもなし、ただし2人産む予定
- 育児休暇をそれぞれ1年間取得予定
上記の比較はあくまで当初のものであり、育児休業期、住宅ローン控除を受ける際、その他諸々の状況の変化によって、実質収入は変わっていきます。
また、病気やケガ、災害、死亡など、予期せぬ事態に対するリスクも違いがあります。大切なことはそれぞれのライフスタイルに即した生活ができるか、これから起きるかもしれないリスクに対応できるかどうかです。むしろ、それぞれのケースの問題点の方が当初の数字比較よりも大切ですので、共働き、片働きの問題点を考えてみましょう。
共働きケースの問題点
共働きのケースは、それぞれ収入があるので、生活が広がりやすくなります。不測の事態が起きても、それぞれの収入の範囲で解決できる生活レベルを維持することが大切です。
育児
- 育児休暇中の収入減対策が必要
- 保育園費がかかる
住宅
住宅ローンを「連帯保証」「連帯債務」などを利用した場合に、返済に窮した場合、配偶者が返済する必要があります。「ペアローン」を利用した場合は、一方が死亡や所定の高度障害になった場合は、その人の分は団信により残債が弁済されますが、もう片方のローンは残ります。返済は可能かもしれませんが、家計収入が半減しますので、やりくりは大変になるでしょう。ただしフラット35の「デュエット」を利用したケースは、どちらかが死亡したり所定の高度障害になったりした場合は、残債が全額弁済されます。
育児休暇中は、就業規則に特段の規定がない限り無給となり、所定の育児休業給付金のみとなります。住宅ローンの支払いなど、収入減少を見込んでおく必要があります。子供の病気や親の介護など、何らかの理由で退職を余儀なくされたとき、返済に窮する場合も考えられます。
日々の生活
- 共働きと言っても、今回の比較ケースは片働きと同額の収入しかありません。それぞれ財布は別というケースも珍しくはないでしょう。それぞれが独身のつもりで生活が広がってしまうと、万一の場合に対応できない事態も考えられます。
老後
- どちらか片方になった場合、年金額は半減します。専業主婦は遺族年金として夫の厚生年金の3/4+自分の老齢基礎年金がもらえます。この比較ケースでは、今まで年金保険料も支払わず、所得税も支払わなかった専業主婦(夫)の年金額の方が、共働き夫婦の一人分の収入より多くなりそうです。
片働きケースの問題点
日本の制度は、片働きに都合の良いようにできています。確かにそれは順風満帆のときであればその通りですが、不測の事態には弱いものです。それ相応の準備が大切です。
育児
育児のために専業主婦(夫)を選択することが多いと思います。ただし、離別や死別等で単親家庭になったときの用意は必要です。これからの時代、離婚率も増えていくでしょう。新型コロナの流行で、人生何があるかわからないことを改めて実感したのではないでしょうか。
妻が働き手の場合は、妻が育児休暇を取る予定だと収入減対策が必要
住宅
住宅ローンの債務者の病気が長引いたり障害を負ったりして働けなくなると返済に困る事態も考えられます。団体信用生命保険により、住宅ローンの弁済の対象となる障害ではない場合、そのための特約保険やその状況を補完する生命保険等に加入しない限り、住宅ローンの返済は重くのしかかります。
共働きの場合、「連帯債務」「ペアローン」を利用した場合は、二人とも住宅ローン控除を受けられますが、片働きは当然ながら一人分のみです。
日々の生活
- 育児だけでなく、離婚や働き手が病気になるなど万一の時は大きく生活が変わる可能性があります。何かしらの技能を持っていても長いブランクがあれば、職を得るのは簡単ではないでしょう。ただし夫が死亡の場合は「死亡退職金」「遺族厚生年金」、18歳以下の子供があれば子供が18歳に到達した年度末までは「遺族基礎年金」も受け取れます。住宅ローンの残債も団信で弁済されますので、借入のない自宅が手に入ります。さらに生命保険等に加入していれば保険金も支払われますので、ある程度生活の基盤は確保できます。
老後
- 離婚に至るなどすると年金額が少なくなります。