舞台『首切り王子と愚かな女』の公開ゲネプロが15日に東京・PARCO劇場で行われ、井上芳雄、伊藤沙莉、若村麻由美、蓬莱竜太(作・演出)が取材に応じた。
同作は岸田國士戯曲賞や読売演劇大賞優秀演出家賞ほか受賞の蓬莱竜太氏が作・演出を手掛けるオリジナル作。架空の国・ルーブを舞台に、傍若無人な首切り王子・トル(井上)と、死のうとしていた女・ヴィリ(伊藤)が出会ったことから始まる、王国を取り巻く物語を描く。ほか高橋努、入山法子、太田緑ロランス、石田佳央、和田琢磨らが出演する。
井上は「こういう中でとにかく今日までこぎ着けた、一人も欠けることなく公演を迎えられたことが嬉しいです」と喜び、伊藤は「舞台が4年ぶりなのでちょっとシンプルに吐きそうなんですけど、この作品がとっても大切だし、大好きなので、本当にたくさんの方々に観て頂きたいです。この時代だからこそ、たくさんの方に届いてほしいと思うので、精一杯、頑張ります」と意気込んだ。
「ミュージカル界のプリンス」と言われる井上だが、久しぶりの王子役について「蓬莱さん的には僕のフィールドに寄ってくれたところがあるらしいんだけど、設定が王子ってことくらいかな」と苦笑。「『これこそ王子なんじゃないかな』と思ってやっているので、僕の王子役の集大成として」と笑いつつ、「まあ別に(王子の)オファーもそんなに来ないんですけども、それくらいの気持ちでやりたい」と語る。
そんな井上について、伊藤は「私が取材を受ける時に、わざわざ来て挨拶してくださって、本当に王子様。見た目も中身も王子様だなと思うんですけど、この世界の王子をやるのにも特に違和感のない感じはしていて。別に傍若無人と言ってるわけじゃなくて、すごく切ない顔とかそういうのがすごく似合う人だなあって。笑顔も素敵ですけど、そういうところにも注目してほしい」と語る。若村も「王子は王子です。首切りだろうがなんだろうが王子は王子で、いいやつというのがにじみ出てくる。ある意味、かわいそうな王子というのが出てくる」と表していた。
井上は作品に共感する部分として「今の自分の年齢だからこそ重ねられるところがある。自分が引っ張らなきゃというだけじゃなくて、年齢が上がってくると、もっと若い人たちに託したり、繋いで行ってもらうということも。上の世代にしてもらったように、僕もしないといけないんだなというのを思うような結末」と明かす。「癇癪持ちで傍若無人」というキャラクターの性格については「実際のところは全然ないですけど、願望があるんだなという気がします。すごく気持ち良い。舞台上でそれをやってるので、ふだんはより優しくなれると思います」と自己フォローも。
また、特徴的なセットについて演出の蓬莱が「演劇の想像力の豊かさということをそのまま舞台にあげたかった。稽古場をそのまま再現して、そこからどうお客さんにファンタジーの世界に見えてくのかという演出をしたいというのはありまして、帝国劇場とかでは絶対にあり得ないセット」と言うと、井上も「まあ、見たことないですね」と同意。
蓬莱は「役者が稽古場を見ているという状態で始まり、出たり入ったりするんですけども、そういうオフの役者の姿と、オンになる瞬間を同時に見られる。『こういうことをやりながらファンタジーの世界を生きて作っているんだ』と。見てくれる人もだんだんそういう世界に見えて来るというのができたらいいな」と意図を説明し、「まあ、多分トイレに行きたくなったりしたらしれっといなくなったりする。水を飲んだり台本を読んだりするかもしれない」と行動を予想する。開演前のスタンバイ状態からも見られると言うことで、若村は「5分前から出ているということを伝えてください。ちゃんと間に合うように来たのに、『あの人、遅れてきた』って、ほかのお客さんに思われないようにしてあげてほしいな」と希望していた。
東京公演はPARCO劇場にて6月15日~7月4日、大阪公演はサンケイホールブリーゼにて7月10日~11日、広島公演はJMSアステールプラザ 大ホールにて7月13日、福岡公演は久留米シティプラザ ザ・グランドホールにて7月16日~17日。