モトローラ・モビリティ・ジャパンの「moto g100」は、5万円台というミドルクラスながら、十分以上のスペックを備える快適なSIMフリースマホです。完成度が高く、幅広いニーズに応えられるスマホと言えそうです。
大画面の縦長ボディで扱いやすい
moto g100(以下、g100)は「moto gシリーズ史上で最もハイパフォーマンス」とアピールされているように、gシリーズの中でもスペックを重視したモデルです。SoCはSnapdragon 870で、メモリは8GB、ストレージは128GB、microSDカードもサポートしています。Wi-Fi 6にも5Gにも対応しており、この辺りはハイエンドモデルにも引けを取りません。
一見して目を引くのが縦長の細身ボディです。アスペクト比21:9の6.7インチディスプレイは、画面サイズの割に横幅が狭いのがポイント。ディスプレイサイズが大きいので横幅も73.97mmと大柄ですが、同じ画面サイズで見れば細身で持ちやすいデザインです。
側面に電源ボタン一体型指紋センサーを搭載するので、画面比を含めてソニーのXperia風とも言えますが、手に持つと大きく感じるものの画面サイズほど持ちにくさはありません。個人的にデザイン面では好印象です。ただし、左側面のGoogleアシストボタンはカスタマイズもできないようで、あまり用途のない存在となっています。Google側の制約かもしれませんが、ちょっともったいない仕様です。
ディスプレイの解像度は2,520×1,080ピクセル、リフレッシュレートは90Hzとやや控えめ。ゲーミングスマホといったハイエンドとはいきませんが、一般的な使い方では十分でしょう。
ベンチマークスコアを紹介しておくと、GFXBenchの1080p ティラノサウルスレックスオフスクリーンが「12,489 Frames(223fps)」、ティラノサウルスレックスが「5,021 Frames(90fps)」。Geekbenchはシングルコアが「963」、マルチコアが「2815」。3DMarkは、Wild Lifeにおけるスコアが「4,145」でした。
結果はテストによりますが、ハイエンド並みのものもあれば、ミドルクラスよりも少し高めといったものもあって、総じてミドルクラス以上のパフォーマンスでしょう。実際に使っていて、もっさり感じるような場面はありませんでした。
GFXBenchのバッテリーテストを実施したところ、推定時間は「506.4分(約8時間26分)」だったので、バッテリー持続時間も十分でしょう。このテストはベンチマークを実行しながらバッテリー駆動時間を計測するので、ハードに8時間使い続けられるということになります。通常の使い方なら1日以上はバッテリーが持ちそうです。バッテリー容量は5,000mAh。公称の利用時間は40時間とされています。
「素」のAndroidに近いながら、便利な独自機能も
モトローラのスマホは基本的に、特別な独自UIを搭載することはなく、Android標準のシンプルなUIとなっています。独自アプリも多くはないので、素のAndroidに近い使い勝手です。
そんな中でも、いくつかの独自機能を搭載しています。特にジェスチャー機能が豊富で、スマートフォンを持った手首を2回ひねるとカメラが起動する「クイックキャプチャー」、電源ボタンを2回タッチしてアプリのショートカットを起動する「パワータッチ」は便利です。
「スワイプで分割」機能は、画面上で2回、左右にスワイプすると、分割画面になるというもの。21:9という画面比率なので、上下にアプリを並べるマルチウィンドウはまずまず快適です。簡単に分割画面にできるジェスチャーはいいとして、操作のコツをつかむまで少し慣れが必要かもしれません。YouTubeのような16:9の画面比率が上部3分の1ぐらいでピッタリ表示でき、残りは縦長のWebサイトやSNSを表示するとちょうど良くなります。
価格以上の高画質カメラ
カメラは有効6,400万画素のメインカメラと、有効1,600万画素の超広角カメラという構成。さらに深度センサー用の200万画素カメラ、ToFレーザーAFセンサーを搭載しています。写真を記録する機能を持ったカメラは2つです。
メインカメラは開放F値がF1.7のレンズを採用しており、センサーの4つのピクセルを1つのピクセルとして使うクアッドピクセルによって、約1,600万画素の画像として記録されます。モード切り替えで「Ultra Res」を選ぶと、6,400万画素でも記録できます。ただし、クアッドピクセルと比べて手ブレしやすく、ノイズも出やすくなるなど画質は落ちるので、よほど高画素が必要なシーン以外では積極的に使う必要はないでしょう。
クアッドピクセルを使ったメインカメラの画質は、価格以上のレベルという印象。立体感のある描写で質感も高く、背景のボケは堅ではあるものの、スナップ撮影で不満を感じることは少ないでしょう。強い光源があるとフレアやゴーストは発生しますが、トータルとしての画質は期待以上です。
対して、超広角カメラの画質がやや惜しいところ。細部の描写が甘く、塗り絵感が残ります。とはいえそれでも、117度という広大な画角は広い景色を撮影する場合などに大変ありがたく感じます。
それ以上に面白いのがマクロ機能です。超広角カメラとデジタルズームを使うことで、メインカメラと同じ画角でレンズ前の数cmまで寄れます。
超広角カメラは、ズームすることで被写体に近寄ってもスマートフォンの影が入りにくくなり、十分に寄れるようになっています。さらに、レンズ周囲にリングライトを搭載しており、マクロモードで利用可能です。料理や小物をマクロ撮影するとき、被写体を明るく照らせるリングライトは心強い装備です。
リングライトの光量自体は大きくありませんが、近接撮影なのでそれなりに効果はあります。被写体を明るくして撮影できるので、マクロ撮影の問題点を解決してくれます。
メインカメラの画質とマクロ機能だけでも十分なカメラですが、AIによってシーンを判別する「ショット最適化」や、深度センサーを使って背景をぼかして撮影する「ポートレート」、各種の撮影設定をコントロールできる「プロ」モード、写真の一部だけが動く「シネマグラフ」、指定カラーだけを残してモノクロ撮影する「スポットカラー」といった撮影機能も搭載。なかなか遊べるカメラになっています。
動画モードでは、ポートレートやスポットカラー、タイムラプスといったモードに加え、アウトカメラとインカメラを同時に記録する「デュアル撮影」機能があります。撮影者も同時に動画として残せるため、家族や友人同士の撮影記録にも良さそうです。最近のAndroidスマートフォンには同様の機能を搭載した製品が出てきているので、「パパがいつも撮影してパパの映像がない」というのは全世界で共通なのでしょう。
カメラのズームに合わせて、マイクもズームするオーディオズームも新機能。ただし、レンズが広角(メイン)と超広角の2つしかないため、ズーム時は画質が低下します。最大倍率までデジタルズームして画質が落ちても、オーディオ自体はズームしてくれるので、シーンによっては有効ではないでしょうか。
前述のジェスチャー機能によって、手に持って手首を2回ひねってカメラが起動するのも便利ですし、楽しい撮影機能も複数搭載。カメラとしても、メインカメラの画質やマクロ機能は機能十分で、価格以上に満足できるカメラ機能です。
ジェスチャー機能などはmotoシリーズの他機種も搭載していますが、g100は縦長ディスプレイに必要十分なスペック、高機能なカメラなど、g100ならではの機能が盛りだくさん。幅広いユーザーのニーズに応えられるスマホと言えるでしょう。
moto g100の主な仕様
- OS:Android 11
- CPU:Qualcomm Snapdragon 870
- 内蔵メモリ:8GB
- ストレージ:128GB
- 外部メディア:microSD/SDHC/SDXC(最大1TB)
- サイズ:W73.97×D9.69×H168.38mm
- 重さ:215g
- ディスプレイ(解像度):6.7インチFHD+液晶(2,520×1,080ドット、HDR)
- メインカメラ:1,600万画素(超広角)+6,400万画素(広角)+200万画素(深度)+ToF
- インカメラ:1,600万画素(広角)+800万画素(超広角)
- バッテリー容量:5000mAh
- 対応SIM:nanoSIM×2
- 対応バンド
- 5G(sub6):n1/n3/n5/n7/n8/n28/n38/n41/n66/n77/n78
- 4G:B1/B2/B3/B4/B5/B7/B8/B12/B13/B17/B18/B19/B20/B26/B28/B32/B34/B38/B39/B40/B41/B42/B43/B66
- 生体認証:○(指紋認証)
- 防塵・防水:IP65、IP68
- 充電端子:USB Type-C
- カラー:インディセントスカイ