著名なメーカーの商品から、聞いたことがないメーカーの品まで、さまざまなアイテムが所狭しと並ぶAmazon。なかには“やらせレビュー”で評価を釣り上げている商品も少なくありません。消費者としては、なるべくそれに引っかからないよう自衛しなくてはいけませんが、それらを見分けるのは容易なことではありません。
今回新しく登場した「サードモール」は、Amazonで販売されている商品レビューの信用度を、商品ページのURLを読み込ませるだけで分析できる無料のスマホアプリです。いうなれば、レビューの「やらせ度」をチェックできるアプリということになります。
この分野では「サクラチェッカー」という著名なサービスがありますが、この「サードモール」はスマホでの利用を前提にアプリとして提供されており、iOSまたはAndroidの共有メニューから手軽に判定できることが特徴です。
具体的にどのような手順で使用するのか、また、表示されるスコアおよび評価はサクラチェッカーとどう違うのか、実際に試してみました。
Amazonのアプリから簡単に呼び出して判定できる
本アプリは、URLを直接コピーアンドペーストしてのチェックにも対応しますが、もっとも簡単なのは、アプリに用意されている共有メニューからの呼び出しです。特にAmazonのショッピングアプリを使っている場合はURLが表示されませんので、共有メニューから使えるのは手軽で便利です。今回はこちらの方法を試してみましょう。
まずは、Amazonのショッピングアプリで、目的とする商品を表示した状態で、画面の右上にある共有ボタンを押し、表示される共有メニューの中から「サードモール」のアイコンを探してタップします。インストール直後は、このアイコンがいちばん右の「その他」の中に隠れているため、必要に応じて先頭に来るよう並び替えておきましょう。
「サードモール」アイコンをタップすると画面がアプリに切り替わり、商品の分析が始まります。最大で十数秒ほど待つと、実際のカスタマーレビューのスコアをもとにした、補正評価のスコアが表示されます。やらせがないと判断されればスコアはそのままですし、やらせがあると判断されればその度合いに応じ、スコアから点数がマイナスされる仕組みです。
評価の内訳を知りたければ、下段にある「アプリで分析結果の詳細を見る」をタップし、詳細ページを開きます。すると「商品情報」「販売元情報」「レビュー情報」という3項目に関して、詳細な分析が表示されます。減点要因があればその具体的な内容が箇条書きで表示されますので、なぜスコアが下がったかを手軽に確認できるというわけです。
ちなみに評価は、上から順に「安心」「確認」「注意」があり、「注意」は高い確率で“クロ”、「確認」も表現こそ緩やかですが相当な“グレー”であると考えておけば、判断しやすいでしょう。
実際に「やらせ」の商品をチェック! 果たしてスコアは?
さて、実際に精度はどのくらいのものでしょうか。今回は、過去にネット上でやらせレビューを募集していた“前科”のある3つの商品について、この「サードモール」と、前述の類似サービス「サクラチェッカー」を使って、評価の違いをチェックしてみました。
最初はノートPC用のUSB PD充電器です。Amazonでは星4.5という高い評価が付いており、「Amazon's Choice」のアイコンまで表示されていますが、先日までTwitter上でやらせレビューの募集が実際に行われていた商品です。そのせいか、日本国内ではほぼ無名のメーカーにもかかわらず、500件以上という異常な数のレビューが投稿されています。
この商品をサクラチェッカーでチェックした場合は、スコアが「1.98」という、とてつもなく低い点数が表示されます。サクラ度も90%と高く、詳細を見ると、メーカーおよびショップがもともと要注意であること、また過去にAmazon側が問題のあるレビューを削除したせいで評価件数が減少したことが、点数を下げる要因になっていることが分かります。
では、同じ商品を「サードモール」アプリで検索してみましょう。結果は、実際のAmazonレビューの星4.5から2.0がマイナスされた2.5点ということで、こちらもかなり低い結果が出ました。具体的なマイナス要因としては、商品名が極端に長く不自然なキーワードがあること、また販売店舗に問い合わせ電話番号やレビューがないことなどが要因として挙げられています。
その一方で、レビューの内容については「特に問題が見つかりません」とされており、レビューそのものよりも、販売店舗で判断している部分が大きいようです。スコアが低いのはサクラチェッカーと同様ですが、その根拠は微妙に異なっていることが分かります。
サクラチェッカーと似た評価だがその根拠は微妙に異なる
続いては、こちらも過去にやらせレビューの実施を確認している、中国メーカーのAndroidタブレットをチェックしてみましょう。8インチながら実売8,999円という激安のプライスが特徴で、日本国内ではまったく無名の商品ながらレビューは100以上、かつ必ずしもスペックは高くないにもかかわらず評価は4.0と高いなど、露骨な怪しさが目を引く商品です。
さて、この商品をサクラチェッカーで評価するとどうなるでしょうか。サクラチェッカーの評価は「1.76」点ということで、こちらも散々なスコアです。具体的なポイントとしては、商品名が怪しく、なおかつメーカーが要注意であることが挙げられています。また、やらせレビューにありがちな評価日の偏りが見られることも怪しいポイントとして指摘しているなど、根拠としては納得のいく内容になっています。
では「サードモール」ではどうなるでしょうか。こちらは、実際の4.0という評価から0.8マイナスされて3.2と、数値自体はやや高いままですが、やはり要注意の評価となっています。具体的には、商品名に不自然なキーワードがあること、また、販売元に問い合わせ電話番号やレビューがないことが、怪しいとされています。
一方でレビュー情報に関しては特に問題なしとされており、先の商品と同様、レビューの内容そのものはあまりチェックできておらず、販売店舗の情報で判断している部分が大きいようです。
なかにはサクラチェッカーと評価が乖離するケースも?
最後に紹介するのは、マイク付きの有線ヘッドホンです。こちらの商品も、過去にやらせレビューを募集していた時期があり、Amazonでは600件を超える評価がつくとともに、星4.1という高いスコアが付けられています。
まずサクラチェッカーを使った場合、星はなんと1.80と、極端に低いスコアが表示されます。具体的には、メーカーおよびショップが要注意であること、また評価件数が過去に減少するなど削除された形跡があること、さらにやらせレビューの典型的な傾向である評価日の偏りが見られることが、要因として指摘されています。
では、これを「サードモール」で評価するとどうなるでしょうか。こちらは先の2商品が「注意」であるのに対して「確認」と、やや緩めの警告で、星も4.1から0.4点減点された3.7と、それほどマイナスされていません。
販売元の問い合わせ電話番号およびレビューがないことがマイナス要因として挙げられていますが、商品情報およびレビューは問題なしとされており、今回見た3商品の中では唯一、サクラチェッカーと評価が乖離している印象です。このメーカーはAmazon上にストアを構えているので、そうした部分で評価が甘めになっているのかもしれません。
評価軸はまだ少ないが基準を決めて使えば有用なアプリ
以上、3つの商品をチェックしましたが、「サードモール」ではレビューそのものよりもメーカーやショップの評価を重視していることがよく分かります。スコアの付け方も、サクラチェッカーのようにオリジナルから点数が半減するようなインパクトはなく、せいぜい4点台のスコアが3点台になるといった、緩やかな変化しかありません。あまり販売元を刺激しないようにという配慮かもしれません。
また、レビュー内容はほぼノーチェックなようで、全体的に評価軸はサクラチェッカーに比べて少ない印象を受けます。ただし、スコアに反映されない一方で、下げるところはがっつりと下げる傾向がありますので、例えば「安心」「確認」「注意」の3択のうち「安心」以外は購入を見送るなど、自分なりの基準を設けておけば、かなり重宝しそうです。
ひとつ気をつけたいのは、最終的にスコアが出てくるまで、若干の時間がかかることです。最初の分析まで十数秒かかるのですが、この時点で表示されるスコアは「レビューの内容」が反映されておらず、しばらく時間をあけて再度チェックすると、レビューの内容が加味された新しいスコアが表示されたりします。「さらに詳細な分析中です」と表示されたままになっており、どのくらい待てばよいか分かりにくいのはマイナスです。
今回は、アプリの共有メニューから使う方法を紹介しましたが、URLのコピーペーストでも行えますし、またブラウザーの共有メニューから開くこともできます。スマホを使ってAmazonで買い物をする機会が多い人は、自分なりの基準を決めて使えば、有用なアプリといえそうです。