King & Princeのメンバーで俳優としても活躍する永瀬廉が、NHKの連続テレビ小説『おかえりモネ』(総合 毎週月~土曜8:00~ほか)で、清原果耶演じるヒロイン・モネこと永浦百音の同級生、及川亮役でこれまでにない新鮮な魅力を放っている。国宝級イケメンの最上級である“全角度国宝級”の異名を持つ永瀬だが、近年はキラキラ系オーラを敢えて封じ、野心的に様々な役柄にチャレンジしてきた。
『おかえりモネ』は、天気予報の奥深さに目覚めたヒロインが、気象予報士を目指していく物語。モネや亮は、気仙沼湾沖の自然豊かな亀島で育った幼なじみで、中学時代にはモネがアルトサックス、亮がトランペットと、共に吹奏楽に打ち込んだ仲間でもある。高校卒業と同時にモネは故郷を離れて、登米市の森林組合で働き始め、亮は父親の新次(浅野忠信)と同じ漁師の道を選んだ。
亮役をオーディションで勝ち取った永瀬は「まさか自分が“朝ドラ”に出演させていただけるとは思っていなかったので、驚きと共にこの作品の一部になれることがとても光栄です」としながら「プレッシャーもありますが、自分らしく楽しんで演じていきたいです」と意欲を口にしていた。
舞台である気仙沼は、本役が決まってから初めて訪れたという永瀬。茶髪で日に焼けた浅黒い肌となった永瀬は、表情も含めてすっかり地域に根づいた漁師らしいたたずまいになっていて驚いた。実際に漁師見習いの作業も体験したと言う。
昔から学校の人気者である亮にずっと恋心を抱き続けている同級生の明日美(恒松祐里)が、亮についてモネに「色気ダダ漏れだよ」と興奮するシーンもあったが、確かに男らしさとセクシーさをまとう永瀬は、女性陣のハートを鷲づかみにした。
そんな亮に暗い影を落とすのが、父・新次の存在だ。東日本大震災の被害を受けて漁師をやめて以降、毎日飲んだくれ状態の様子。ちなみに、浅野も朝ドラ初出演となったが、永瀬と共に漁師ならではの男くささだけではなく、どこか危ういデンジャラス感を漂わせているせいか、永瀬と浅野の2ショットが登場した際に、Twitterでは「新宿歌舞伎町」というワードがトレンド入りした。
6月10日の放送回でも、飲み屋で酔いつぶれた新次が警察官に注意されるなか、亮が新次に肩を貸すシーンが登場。『おかえりモネ』のあとに放映される『あさイチ』の朝ドラウケでは、再び「歌舞伎町感がある!」と、MCを務める博多華丸・大吉と鈴木奈穂子アナが興奮気味にうなずきあっていた。
今や俳優としても脚光を浴びる永瀬だが、King & Princeで最初に俳優としてスポットライトを浴びたのは平野紫耀だった。彼はバラエティで見せる天然さとは真逆に、新進俳優としてはコミカルな役からシリアスな役まで、オールマイティにいけるような伸びしろを感じさせ、頭一つ抜きん出た。そんな平野に続いたのが永瀬である。
初のドラマ出演作は『信長のシェフ』(13)の森蘭丸役だったが、永瀬の風貌からすると、納得のキャスティングだった。その後、永瀬が俳優として注目されたのは、おそらく初主演映画『うちの執事が言うことには』(19)ではないだろうか。本作で演じた正真正銘の見目麗しいおぼっちゃま、烏丸花穎役は、全角度国宝級イケメンにふさわしいハマリ役だったといえる。
だが、彼の俳優としての面白さが際立ってきたのは、それ以降だと思う。クレバーな彼はその後、かなり攻めに出た。おそらくキンプリのファン「ティアラ」たちの度肝を抜いたのは、『弱虫ペダル』(20)で演じた、主人公・小野田坂道役だろう。人気コミックやアニメには熱狂的なファンがついていたため、永瀬が実写映画化作品で主演を務めると発表された際に、賛否両論が巻き起こったのは当然だ。
だが、意を決して前髪パッツン&メガネの坂道になりきった永瀬は、当時のインタビューで「外見の役作りが、一番目に見えてわかりやすいと思ったのですが、僕自身のジャニーズ史に残る役作りでした。いざ前髪を切ってみると、新しい自分と出会えたような感じで、鏡を見るたびに『どうも!』という感じになりましたね」と笑顔で語っていた。
実際にシャカリキに自転車を漕ぐ坂道のガッツと仲間たちとの熱い友情のドラマは、観るものの心を大いに揺さぶった。このとことん泥くさいド根性な坂道役を演じたことで、永瀬は大いに俳優としての株を上げ、第44回日本アカデミー賞新人俳優賞も受賞した。
ちなみに、永瀬の最新主演映画は、若い層から圧倒的に支持されている作家Fの小説を映画化した『真夜中乙女戦争』(来秋公開予定)だ。
「撮影を経て、作品として完成した時に、最後にどんな“私”になっているのか…今まで皆さんが思い描いていた“永瀬廉”のイメージとは違っているはずです」という公式コメントからは、ただならぬ意気込みが感じ取れる。
とはいえ、まずは『おかえりモネ』での亮をもっと見てみたい。ひょうひょうとした亮だけに、まだ心の内をあからさまに吐露するようなシーンは登場していないので、今後に期待がかかる。また、モネとどんなふうに絡んでいくのかも実に楽しみである。