マーケティングにおいてよく登場する用語の一つに「プロダクトアウト」があります。このフレーズは対となる用語「マーケットイン」とともによく用いられています。マーケティングになじみがない人でも、この2つの言葉の意味を把握しておくことはビジネス面にとってプラスに働くはずです。
そこで本記事では、プロダクトアウトのメリットやデメリット、具体的な事例を、対義語であるマーケットインとともに解説します。
プロダクトアウトとは
マーケティング用語であるプロダクトアウトとマーケットインについて解説します。
プロダクトアウトの意味
プロダクトアウトの意味は、「顧客のニーズよりも企業側の強みや考えを優先させて商品開発や生産・販売活動を行うこと」です。会社の方針にあわせて商品を開発・販売するプロダクトアウトは、企業の技術力や得意とするものを生かして開発が進められるので、自社の力を世間にアピールできるという側面を持ちます。
プロダクトアウトの対義語・マーケットインとは
プロダクトアウトの対義語はマーケットインで、その意味は「市場や顧客の視点に立ち、商品やサービスの開発を行うこと」。顧客視点の考え方に立ち、ユーザーのニーズに応える形で企業が商品開発を行います。マーケットインは、顧客が必要としているものを調べて商品開発するので、より顧客が求めるものを生み出すことができます。
プロダクトアウトのメリット
ここからはプロダクトアウトのメリットを3つ紹介します。
自社の技術力や強みを濃く反映できる
プロダクトアウトは、企業の作りたいものや方針に合わせて開発をしていくという考え方なので、自社の技術力や強みを商品やサービスに色濃く反映できるというメリットがあります。自社の技術力や強みをアピールできるうえ、まだ世に出ていない唯一無二の商品を開発できれば会社にとって大きな躍進につながります。
また、自社の代表となるヒット商品が開発できれば「〇〇といえば、あの会社」というイメージ作りもでき、ブランディングを強化できるという面でもメリットがあります。
他社にないヒット商品を生み出しやすい
自社の強みを生かして他社にはない商品が完成したとします。その商品がヒットするかどうかは販売してみないとわからないところではありますが、「今までになかった新しいものだ」と話題になって多くの人の目に留まれば、大ヒットする可能性も大いに考えられます。
コストを抑えられる
自社がすでに強みとしているものを生かして商品開発ができるので、余計な市場調査や部門の新設などの手間が省けます。結果的に必要なところにしっかりコストをかけられるので、より有意義な資金の使い方ができるでしょう。
プロダクトアウトのデメリット
一方で、もちろんプロダクトアウトにもデメリットはあります。しっかりとこちらも把握しておきましょう。
商品が売れ残る可能性がある
プロダクトアウトのデメリットとして、顧客のニーズに合わないと商品が売れない可能性があるという点が挙げられます。他社にはない商品が完成すればヒットする可能性があるわけですが、その部分とまさに紙一重だと言えるでしょう。
他社にない商品を開発したはいいものの、今まで他社になかったのはユーザーからのニーズがあまりないからだったとも考えられます。開発した商品の需要と供給が噛み合わなかったとき、開発した商品が売れない可能性もあるのがプロダクトアウトのデメリットです。
マーケットインのメリット
プロダクトアウトとよくあわせて登場するマーケットインのメリットについて解説します。
顧客のニーズに合わせた商品開発ができる
マーケットインは、商品の本格的な開発に取り掛かるまでにターゲットのニーズをしっかりと調査するので、顧客が本当に求めているものを明確にしてから開発を進めることができます。
顧客のニーズに沿った商品開発を重ねることで顧客側の信頼も得やすく、期待に応えられる商品を作り続ければ、「この会社の商品をまた購入したい」というファンの獲得にもつながります。
売り上げの予測がしやすい
事前の調査によってある程度市場のニーズが把握できるので、売り上げ予測がしやすいという点もマーケットインのメリットです。売り上げ予測は会社の経営に密接に関わってくるので、実際の値に近い売り上げ予測をすることは大切です。
開発の目標を設定しやすい
マーケットインは主に顧客視点なので、顧客のニーズと製品の特徴とが一致していると言えます。
例えば、顧客のニーズが「ヴィーガンにも対応できる動物性食品完全不使用のハンバーガーが食べたい」だとします。そのニーズに応えるには、既存の動物性の食材をどのように代替えするか、何をカットすればいいのかという課題が出てくるはずです。
マーケットインでは、そうして浮き出てきた課題の解決を目標として開発を進めればいいだけなので、目標設定がしやすいと言えます。
マーケットインのデメリット
次に、マーケットインのデメリットを2つ紹介します。
他の企業に類似商品を開発される可能性がある
開発した商品が顧客のニーズが高いことに加え、特別な強みや技術が必要ない場合、他社に類似商品を作られて自社の製品と競合になってしまう可能性があります。
しかし、競合がいることで自社の製品の弱みや改善点が見えるので、既存の商品を改良してヒットしたという事例もあります。逆境に立ち向かい、柔軟な対応を行えば、デメリットをメリットに変えることも可能だということです。
企業イメージがブレる可能性がある
プロダクトアウトとは反対で、マーケットインでは顧客のニーズに合わせて企業が動くので、「○○といえばあの企業」というイメージがつきにくいというデメリットがあります。
むしろ、いろいろなコンセプトや商品に手を出した結果、企業イメージがブレやすくなる可能性があります。ただし、マーケットインは顧客のニーズを優先的に考えることが特徴なので、仕方ない点でもあります。
プロダクトアウトの成功/失敗事例
ここからはプロダクトアウトの実際の成功事例と失敗事例を紹介します。
成功事例
企業の強みや技術力が活きた革新的なアイディア・サービスがプロダクトアウトの成功事例と言えます。まずは成功事例をみていきましょう。
iPhone
iPhoneはApple社が自社の技術力を活かして開発した製品で、スマートフォンの火付け役となりました。iPhone以前は二つ折りの携帯電話が主流でしたが、初めてタッチパネルを導入し指だけでの複雑な操作を可能にしました。情報社会の今では、iPhoneはなくてはならない存在となっています。
ポケモン GO
ポケモン GOはスマートフォンの位置情報を利用することで、キャラクターの収集や対戦という従来のゲーム要素に加え、「ポケモンを捕まえるために現実世界で毎日歩く」という健康につながる要素も組み込まれたゲームです。
「ゲームはその場から動かずにするもの」という概念を覆し、街中を歩くこと自体がゲームになったことで、それまでは難しいと考えられていた「ゲームをしながら健康維持」を可能にしました。
失敗事例
次にプロダクトアウトの失敗事例を紹介します。
3Dテレビ
以前はさまざまな家電メーカーから3D対応のテレビが販売されていましたが、2017年ごろから3D対応テレビは姿を消し始めました。メーカーの技術力を活かして開発された3D対応テレビでしたが、専用メガネが必要だったり、酔いやすかったりといった問題点があり、メーカー側が期待したほどの売り上げにはつながりませんでした。
Apple Newton
Apple Newtonとは、Apple社が1993年から1998年まで販売していた世界初の個人用携帯情報端末です。iPhoneやiPadの先駆けとなった商品で、手書き入力ができる液晶などを搭載しており、その当時ではまったく新しい機能を持った商品でした。
しかし、標準的な衣類のポケットに収まりきらないサイズや高価な価格などがネックとなり、売れ行きはあまりよくありませんでした。成功事例で紹介したiPhoneで大成功を収めているApple社ですが、同じプロダクトアウトの製品でも成功と失敗を経験しています。
プロダクトアウトの意味を正しく理解しましょう
本記事では、マーケティング用語のプロダクトアウトについて解説しました。対義語のマーケットインについてもあわせて理解することで、より理解を深めることができます。プロダクトアウトは企業視点、マーケットインは顧客視点、と覚えておくといいかもしれません。
企業の過去事例も参考にしながら、実際のマーケティングに活かしてみてくださいね。