次期Windows 10が「Windows 11」となるのか、「Windows Sun Valley」と呼ばれる消費者専用OSに分離するのか気になるところだが、2021年6月25日の発表を待つことにして、今回は別の話題に注目したい。Microsoftは米国時間2021年6月7日、Microsoft AzureのVDI(仮想デスクトップ基盤)である「Windows Virtual Desktop」を「Azure Virtual Desktop」に改称することを発表した。

  • 本稿執筆時点のMicrosoft Azure。まだ、以前のWindows Virtual Desktopを使用していた

上記「Azure Virtual Desktop: The flexible cloud VDI platform for the hybrid workplace」でMicrosoftは、コロナ禍におけるリモートワークの需要増や重要性に触れつつ、「今後、企業は進化するリモートワークや、(出社と自宅勤務を指す)ハイブリッドワークのシナリオをサポートする必要がある。顧客やパートナーが新しいハイブリッドワークの需要を満たすため、Microsoftはほぼすべてのユースケースに対応し、事実上どこからでもアクセスできる柔軟なクラウドVDIプラットフォームを目指している」と、現状分析と方向性を示した。その上で「幅広い展望と顧客需要の変化に対応するため、Windows Virtual Desktopサービスの名称をAzure Virtual Desktopに変更する」と説明している。

AAD(Azure Active Directory)サポートの強化など新機能については上記のリンク先をご覧いただくとして、Microsoftのリブランディングに目線を向けてみよう。以前は「Windows Azure」と称していたパブリッククラウドは、2014年3月にMicrosoft Azureに改称。各サービスの提供を目的としていた「Windows Live ID」も、Windows 8が登場した2012年8月のタイミングで現在のMicrosoftアカウントに改称した。最近では「Office 365」→「Microsoft 365」、「Bing」→「Microsoft Bing」の改称が記憶に新しい。

Microsoft AzureとMicrosoftアカウントについては、名称を変更するときに「Windows」という単語を外している。Microsoftのビジネスモデルがクラウド時代に合わせて変化すると同時に、Windowsが希薄化しているのだ。もちろんWindows 10の開発は継続するだろうが、Linux用GUIアプリをWSL 2上で実行可能にする「WSLg」が安定動作するようになれば、長年の資産であるWindowsソフトウェアに固執する理由が1つなくなる。

Web版Officeである「Microsoft 365 for the web」の開発注力度も年々高まり、以前は最初にデスクトップアプリ版に実装していた新機能も、Web版が優先される場面を目にしている。これは微妙な変化だが、Microsoft 365 for the webのOutlookも以前はメールや予定表といったアイコンのみ並んでいたものが、最近はWordやExcelなどのアイコンが加わるようになった。まるで「もうWeb版で十分」と、Microsoft開発陣の声が聞こえてくるようだ。

  • Microsoft 365 for the webのOutlook。画面左下にMicrosoft 365 Appsのアイコンが並んでいる

確かに我々消費者も、デスクトップアプリの代わりにSaaS(Software as a Service)で多くの作業をこなすようになった。PCゲームもXbox Game Pass Ultimateメンバーであれば、クラウドゲーミング体験を享受できる(日本は2021年後半にサービス開始予定)。筆者はクラウドシフトを否定するつもりもなく、オンプレミスパッケージが終わることを期待する一人である。だが、慣れ親しんだWindowsやOfficeの存在感が少しずつ消えていくことに一抹の寂しさを覚えるのだ。そろそろこの連載も「Microsoft Weekly Report」にタイトル変更すべきだろうか。