「リードタイム」という言葉は、職種によっては聞き慣れないという人もいることでしょう。リードタイムは「物流業務のスタートからゴールまで」を意味しますが、細かくはスタートとゴールの設定によって、いくつかの種類があります。

本記事ではリードタイムの詳しい意味や使い方と例文、類語を紹介。リードタイムが生産計画に与える影響や在庫との関係、数え方、納期との違いなどもまとめました。

  • 「リードタイム」の基本的な意味

    リードタイムは物流に関連のある言葉です

リードタイムの意味や語源とは

はじめに、リードタイムの基本的な意味や語源について解説します。

リードタイムの意味

そもそもリードタイムは、物流業界におけるスタートからゴールの期間を表す言葉です。一般的には、「発注・受注から納品までの期間」を指します。

リードタイムの定義は「スタートが作業の着手なのか発注なのか」「ゴールが商品の製作完了までなのか、納品までなのか」と状況によって変わってきます。

リードタイムの語源は「lead time」

リードタイムは本来英語にはない表現で、「lead」と「time」を組み合わせた言葉です。かつてトヨタ自動車で作られた和製英語とも言われており、そのため「自動車用語」に分類されていることもあります。

リードタイムの類語・言い換え表現

リードタイムの類義語は「所有期間」「調達期間」があてはまります。

製品が発送されてから届けるまで「所有している」期間や、発注から発送までの「調達する期間」のことも、リードタイムと表現することができます。

ビジネスでのリードタイムの使い方・例文

ここでは、「リードタイム」の使い方を例文でご紹介します。

  • 現状の課題は、納品するまでのリードタイムが長すぎることだ
  • リードタイムを短縮することで、顧客の満足度が高くなり、売り上げもアップした
  • 関東エリアの配送リードタイムは2日です
  • リードタイムの基本的な意味

    リードタイムは「期間」のこと

リードタイムの数え方

期間を表すリードタイムは日数で数えます。特に製造業においては作業の着手日を基準とする「フォワード法」と、作業の完了日を基準とする「バックフォワード法」という2種類の方法によって製造工程をスケジューリングします。

バックフォワード法の場合は、着手日が完了日の何日前になるかを示す期間がリードタイムです。

リードタイムの主な種類

リードタイムはスタートとゴールの設定によって期間の定義が変わりますが、主に4つの種類があります。

開発リードタイム

「開発リードタイム」は、商品の企画から完成までのすべての工程を意味します。中には材料の調達や製造のスケジュールも含まれる場合もあります。

開発リードタイムを短縮することができれば、トレンド商品を世にいち早く送り出すことができ、消費者の熱が冷めないうちにセールスプロモーションをかけることが可能となります。

調達(購買)リードタイム

「調達リードタイム」は、材料の仕入れから納入までの期間のみを指し、全体的な工程から見れば一部の過程にあたります。

調達リードタイムを短縮すれば全体の工程をより短縮することにつながり、一方で調達リードタイムが延びれば全体の工程に遅れが生じる可能性もあります。

生産(製造)リードタイム

材料の調達が完了し、工場での製作がスタートしてから予定数の生産が完了するまでの期間を「生産リードタイム」といいます。

実際には材料の調達を待っている時間も生産リードタイムに含むことがあります。

配送リードタイム

完成した商品の発送から配達完了までを「配達リードタイム」といいます。主にECサイトなどで顧客に知らせる配送期間は、この配達リードタイムであることがほとんどです。

  • リードタイムの4つの種類

    発送から配達完了までが配達リードタイムです

リードタイムが生産計画に与える影響(メリット・デメリット)

多くの企業がいかにリードタイムを短縮できるかにこだわっています。リードタイムを短縮すると、生産計画全体に大きな影響を及ぼすことになるからです。リードタイムの短縮についてまとめました。

リードタイムを短縮する必要性と在庫との関係

リードタイムを短縮することで在庫の増加を防ぎ、収益を増やすことが可能になります。さらにリードタイムの短縮は単純に顧客のもとによりスピーディーに商品を届けられるようになり、サービスの質も向上するので、顧客満足度が向上します。また在庫を抑えることで、在庫にかかる費用軽減にもつながるでしょう。

一回のサービスにかかる時間が短縮されると、より多くの顧客に提供する機会も増えます。機会提供が増えた分だけ、収益向上にもつながることが期待できます。

リードタイムを短縮する弊害

リードタイムを短縮すれば必ず顧客満足度が向上し、収益が向上するわけではありません。そもそも従来必要としている期間をさらに短くしようとすることで、工程のどこかに負荷が生じる可能性もあります。

倉庫管理や配送を効率化しようとよりスピーディーな業者に依頼すると、業務は早くなってもコストがかさむ可能性も考えられます。結果として、「収益を向上させるつもりが結局あまり変わらない」ということにもなりかねません。

リードタイム短縮は各工程で異なる

リードタイムの短縮方法は千差万別で、工程によって異なります。

調達リードタイムも生産リードタイムも、自社のみではなく複数の会社で分業して行ったり、人員を増やしたり機械を導入したりすることで短縮できる可能性があります。

配達リードタイムを短縮するには、倉庫での梱包(こんぽう)・発送作業の効率化や、配送ルートの見直しなどが効果的です。

ただしどれもコストがかかることが大半なので、かけられるだけの予算があることが大前提となります。

  • リードタイムの短縮は生産計画のカギ

    リードタイムの短縮はコストとの戦い

リードタイムと混同しやすい言葉と意味の違い

リードタイムとよく似ていて混同しがちな言葉をまとめました。具体的な意味の違いや使う場面の違いに注意してみましょう。

納期

リードタイムは「期間」を表すのに対し、納期は「完了する期限」を表します。わかりやすくいえば、リードタイムを表すときは「◯日間」、納期を表すときは「◯月◯日」と具体的な日にちを使うのが違いです。

リードタイムのみがわかっている場合、「注文から10日程度でお届け」という表記であれば、例えば注文した日が4月1日だったときは4月10日に届くかもしれませんし、4月9日や11日に届く可能性もあります。納期が4月10日に確定していれば「4月10日にお届け」という表記になり、間違いなく4月10日に届くことになるでしょう。

タクトタイム

タクトタイムとは「一定時間内に必要量の生産を実現するための速度」を意味します。「作業員が一つの物や作業をどれぐらいの速さで作ったり、行ったりすればよいかの標準時間」というふうにも読み取れます。

タクトタイムは、顧客の注文や市場の需要に基づいた必要生産個数を期間内の実働稼働時間で割ることで算出できます。

例えば、1カ月に必要とされる生産量が30万個、当月の操業日数が20日、定時操業時間が8時間である場合、

タクトタイム=3,600秒/時間×8時間/日×20日÷30万個=1.92秒/個

となります。

タクトタイムを知ることで、一つの製品を作るのにどれくらいの時間が必要なのか、1時間でどれくらいの量を生産することができるのかが明確になり、市場に必要個数を提供するための時間がわかります。

サイクルタイム

リードタイムだけでなく、タクトタイムとも混同されやすいのが「サイクルタイム」です。サイクルタイムは一つの製品を作るのに必要な、一作業サイクルあたりの時間のことです。

重要なのは、タクトタイムは顧客や市場のニーズを基準としていることに対し、サイクルタイムは生産を中心に算出されているということです。

サイクルタイムがタクトタイムよりも長いとその製品は欠品を起こしてしまい、逆に短いと過剰在庫が出てしまいます。そのため、一般的にタクトタイムとサイクルタイムは一致していることが理想的とされています。

  • リードタイムとよく似た言葉

    1つの製品にかかる時間

リードタイムとは物流用語で「発注から納品までの期間」を表す

リードタイムの意味や由来、よく似ている言葉との違いについてまとめました。リードタイムは、各工程のスタートからゴールまでを意味する言葉で、特に製造業界ではさまざまな場面で使われています。

リードタイムの短縮はビジネスにおいて業務改善のカギとなるだけでなく、顧客満足度向上や売上利益の向上にも影響します。製造現場に直接関わっていない人でも使う場面や使い方には気をつけてみてくださいね。