「ゼロベース」はカタカナ外来語のひとつで、企画がうまく進まなかったときなどに、ゼロから検討し直すことなどを指して使われる言葉です。
この記事では、「ゼロベース」の意味や使い方を解説します。また、類語や英語表現なども紹介するので、ビジネスシーンで活用できるよう正しく理解しておきましょう。
ゼロベースとは
ゼロベースの意味
「ゼロベース」の意味は「物ごとを最初からやり直すこと」「ゼロの状態から検討し直すこと」などです。
既存のものを利用して検討するのではなく、まったく何もない状態から新たにはじめ直すことを指します。「ゼロベース」はさまざまなシーンで使われますが、ビジネスシーンでは予算の決定や企画などで用いられることが多いです。
派生して「再出発する」意味としても用いられる
「ゼロベース」のもともとの意味は「すべてをゼロに戻して検討し直すこと」です。しかし、現在では「ゼロに戻す」から意味が派生して、「一から再出発すること」という意味で用いられることもあります。
ゼロベースのビジネスでの使い方と例文
「ゼロベース」という言葉が広がったのは、ビジネスシーンで使われるようになったことがきっかけです。「ゼロベース」はくだけた言葉ではないため、目上の人に対しても使える言葉ですが、丁寧語ではありません。
「ゼロベースで考案しました」など、他の敬語と組み合わせて使うことで、丁寧語や敬語表現ができます。
・今回の新サービスは、社会情勢の大幅な変化を考慮してゼロベースで開発しました。
・いい案が出てこない場合は、ゼロベースで考え直すのがいい。
・これまでの支出を大幅に見直す場合には、ゼロベース予算にするのが効果的だ。
・財政状態が悪化しているため、新社屋の建設はゼロベースで見直されるだろう。
・この企画は新しい顧客を増やすために、ゼロベースで立案された。
上記のように、予算や企画などを検討し直す場合に「ゼロベース」が用いられます。
ゼロベースの類語・言い換え表現
「ゼロベース」と同じ意味があり、よく使われる熟語や慣用句を紹介します。
白紙に返す
「白紙に返す」とは、「これまでの経緯をなかったものと考えて、元に戻すこと」です。「白紙に戻す」と言われることもあります。
・ここまでしてきたことを白紙に返して、一から企画をやり直そう。(企画はゼロベースでやり直そう)
・予算は一旦白紙に返します。(予算はゼロベースとします)
「白紙に返す」は「ゼロベース」と同じ状況で使われる慣用句として、覚えておきましょう。
原点回帰
「原点回帰」とは、「基本に立ち返ること」「ことのはじまりに再度忠実になること」などを意味する四字熟語です。「原点に立ち返る」も同じ意味があり、物ごとをやり直す場合に使われます。
・原点回帰して企画立案をやり直す。(ゼロベースで企画立案し直す)
裸一貫
「裸一貫」とは、「自分の体以外に、資本を何も持たないこと」を表す言葉です。
・裸一貫、出直そう。(ゼロベースで出直そう)
・裸一貫から財産を築き上げた。(ゼロベースで財産を築き上げた)
上記の例のように、「ゼロベース」は「ゼロからやり直す」という意味であり、「裸一貫」と似た意味があります。状況によって類語として使えることを、覚えておきましょう。
ゼロベースを使った用語
「ゼロベース」は他の言葉と組み合わせて使われることも多いです。そこで、ビジネスで使われる機会がある「ゼロベース」を用いた用語とその意味を紹介します。
ゼロベース思考
「ゼロベース思考」とは、すでにある枠組みや既存の計画などにとらわれることなく、目的に対してゼロから考えようとする考え方のことです。
既存の枠組みにとらわれていると、これまでの事例や規制などに考え方が制限されてしまい、最適解にたどり着くのが難しくなってしまいます。そのため、問題に対する最適な答えを見つけるためには、「ゼロベース思考」で考える姿勢が重要です。
ゼロベース予算(ZBB)
「ゼロベース予算」とは、現行の事業や新規事業の区別をせずに、すべての予算項目について既得権を認めることなく、ゼロを出発点として査定して予算を編成する方式のことです。「zero-based budgeting」を省略して「ZBB」と言われることもあります。
ゼロベース予算は経費を根本から見直したい場合に、用いると効果的な方法です。
ゼロベースランニング
「ゼロベースランニング」とは、人間本来の走りを身につけるために、著名な鍼灸マッサージ師兼ランニングコーチが提唱しているランニングメソッドです。
怪我を改善してランニング後半のペースダウンを解消したいと考える人のために、効率よく筋肉を使えるようランニングフォームをリセットすることを提唱しています。
ビジネスでよく聞く「ゼロベース思考」のメリット
ここでは、ビジネスでよく聞く「ゼロベース思考」のメリットを解説します。
問題解決の糸口が見つかる
問題解決のための手段や工程を考える際、人はつい今までのやり方や前例をもとに、解決しようとしてしまいます。
そのような当たり前になっていたことを一度リセットにして、ゼロベース思考で取り掛かることで、問題解決に繋がることも多いです。
革新的な商品・サービスを生み出せる
新しい商品やサービスを企画するとき、「競合他社はどのようなサービスを出しているのか」「既存の自社サービスの技術を活用できないか」という視点になるのは一般的。
もちろん、ビジネスにおいてそのような視点は大切ですが、どうしても競合サービスや既存の自社サービスと似たり寄ったりになってしまうことが多いです。
革新的な商品やサービスを生み出したいというときは、ゼロベース思考になって企画を試みることで、新しいアイデアが思い浮かぶかもしれません。
顧客視点になれる
ビジネスで新しいことに取り掛かるときなどは、「予算はいくら使えるか」「自社でできる可能な範囲はどこからどこまでか」「社内リソースをどこまで活用できるか」といった前提条件を考えた上で行うのがほとんどですよね。しかし、その考え方はあくまで「自社視点」です。自社視点での考え方が定着していると、無意識のうちに顧客視点で考えるということを忘れてしまいがちになります。
自社視点で考えることはビジネスにおいて必要不可欠ですが、まずは「顧客がどんなサービスを求めているのか」「顧客が困っていることは何か」という顧客視点になることで、ヒットする商品やサービスを生み出すことができます。
ゼロベース思考を意識することで、考え方を自社視点から顧客視点へとスイッチすることができるのです。
ゼロベースの英語表現
「ゼロベース」は、英語の「zero」と「base」を組み合わせた言葉ですが、実は和製英語です。日本独自の表現ですので、そのまま話すと英語圏の人には通じないこともある点には気をつけましょう。
zero-base
「ゼロベース」を英語に直訳すると、「zero-base」です。和製英語であり、日本で作成される英語の論文などで用いられることがあります。しかし、英語圏の人にはカタカナ語としての「ゼロベース」は通じないため、下記のように他の言い回しを用いましょう。
- from the start(はじめから)
- start from scratch(ゼロからはじめる)
- to start afresh(新しくやり直す)
restartとして使われる場合もある
「ゼロベース」を「再出発」という意味で用いる場合は、「restart」はじめ、下記のような別の英語表現が使われます。
- restart
- make a fresh start
- start again
ゼロベースとは一旦ゼロの状態に戻すこと
「ゼロベース」はビジネスでよく使われるカタカナ外来語のひとつで、英語表記では「zero-base」です。仕事がうまく進まなくなった場合にゼロからやり直す場合や、再出発する場合などに使われます。
「ゼロベース思考」や「ゼロベース予算」など、「ゼロベース」を用いたビジネス用語はいくつかありますので、戸惑わないよう意味を覚えておきましょう。
「ゼロベース」には「白紙に返す」や「原点回帰」など、同じ意味で使える言葉もあります。横文字を避けたいならこれらの言葉で言い替えるのもおすすめです。