レイオフという単語を聞いたことがあるでしょうか。レイオフとは、日本語で言うところの一時解雇に該当します。解雇の方法はいろいろとありますが、中でも一時解雇は日本では珍しい方法と言えるでしょう。
本記事ではレイオフの意味やメリット・デメリット、一時帰休との違いなどを説明します。
レイオフの意味とは
レイオフは「再雇用を条件として労働者を一時的に解雇すること」を指します。一時的な整理解雇を意味するレイオフは、米国をはじめとする海外では一般的に行われている制度として知られています。
レイオフの目的
通常の解雇をせずにレイオフをする目的は大きく2つあります。1つずつ詳しくみていきましょう。
人件費の削減
レイオフを実施する目的として、企業のコストである人件費の削減があります。業績が思わしくなく、従業員に給料を払える環境にない場合にレイオフを決断します。その後は限られた従業員だけで業務を続け、業績が上向きになったときにレイオフの対象者を受け入れるという流れです。
人材・技術の流出防止
レイオフは一時的なものであり、状況が好転した時点で再雇用を行うため、優秀な人材が他社へ再就職するのを防ぐことができます。長期間勤務した従業員は業務における知識や経験、文化、理解、スキルを蓄積しているため、つなぎとめることによって会社は数年単位の教育コストを抑えられます。
一方で通常の解雇の場合は生活の保障は誰もしてくれないため、高いスキルを持った優秀な人材は同じ業界の競合他社に流れてしまい、長期的にみても企業にとって大きなダメージとなります。
レイオフの主な目的は従業員を退職させることで、一時的な業績不振や景気の変化に合わせて支出を減らし、状況が回復したときに再雇用して事業を回復させることです。
レイオフの類語
レイオフと同じような似た意味を持つ言葉も少なくありません。一時帰休と整理解雇などがその一例ですが、内容は似ているものの異なる点もあります。違いをしっかりと把握しておきまし
レイオフと一時帰休(一時休業)の違い
まず一時帰休ですが、レイオフと同じく一時的に会社を休むことにはなります。しかし、大きく異なる点として、一時帰休は「休んでいる」状況のため解雇という形にならないことがあげられます。また、一時帰休は休業期間中に本来の給料の6割以上がもらえますが、レイオフは解雇状態のため給料が支払われません。
レイオフと整理解雇(リストラ)の違い
次に整理解雇ですが、これは企業側からの解雇処分であり、主な理由は経営不振や事業転換、経営転換に伴って行われるものです。いわゆる「リストラ」に該当します。整理解雇が理由はあれど一般的な解雇と同一である一方、レイオフは再雇用を条件に解雇処分を行う点で異なります。
レイオフとファーローの違い
ファーローは一時的に無給休職にすること、もしくは一時的な職務停止を意味します。こちらもレイオフ同様、将来業績が回復することを見越して従業員を一時無給休職にすることで、必要な人材を確保します。これにより、業績が回復したと同時にビジネス活動が再開可能です。ファーロー実施期間中、企業は従業員の健康保険を継続して提供する必要があります。
レイオフとの違いは、こちらは退職ではなく休職という点と、レイオフよりも従業員をつなぎとめる力が少々強い点にあります。
解雇の種類
解雇する際の選択肢として複数の方法が挙げられます。ここでは解雇の種類を解説していきます。
普通解雇
企業側から従業員に対して解雇を申し出ることによる、労働契約の終了が通常の解雇です。しかし、企業が一方的に従業員の解雇を決められるわけではありません。労働基準法では、「従業員の解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合」は行うことができないと定められています(労働契約法第16条)。
業務をするうえで労働者が重大な問題を抱えていない限り、簡単には普通解雇を行えない、ということです。
懲戒解雇
懲戒解雇とは社内の規則や秩序を著しく乱した従業員に対して、その罰則として解雇することを指します。例えば犯罪行為や経歴詐称、長期間の無断欠勤、セクハラ、パワハラなどが主な理由として挙げられます。
企業は社内の規則によって懲戒解雇を実施できますが、普通解雇と同様に一方的な判断で解雇することはできないため、客観的な情報と明確な証拠が必要になります。
レイオフのメリット
次に、レイオフのメリットとデメリットに関して解説していきます。まずはメリットを社員と会社、それぞれの視点からみていきましょう。
社員のメリット
レイオフを実施する際、企業側は特別手当や一時金などを支給するため、まとまったお金が手に入るという点では社員側にとってメリットになります。会社によってはレイオフの希望者を募り、早期に応募した人物に対しては何割か一時金を上乗せするケースもあり、その場合はよりメリットが強まると考えてよいでしょう。
会社のメリット
会社側からすると、人員の削減や入れ替えがしやすいというメリットがあります。レイオフを行うことで社内に必要な人間とそうでない人間が明確になり、再雇用するか改めて判断できます。
レイオフのデメリット
続いて、レイオフを実施するデメリットも同様にみていきましょう。
社員のデメリット
シンプルに職を失いますから、新たに就職活動をする必要があります。景気などの外的要因でレイオフされた場合、同じ業界で雇用してくれる企業の競争率は激しいため、以前と同じかそれ以上の給料を望むのは難しいでしょう。
また、レイオフの場合はいずれ元の企業に再雇用される可能性が高いため、短期採用となってしまう点も就職活動に影響してしまいます。
会社のデメリット
日本の場合、労働者保護という観点からレイオフは実施されにくいのが現状です。そのため、実際に有事となったらレイオフではなく一時帰休になる公算が大きいですが、その場合は労働基準法第26条に基づき、労働者の平均賃金の60%以上を支給しなければなりません。労働を伴わない支出のため、企業にとっては決して有益とは言えないでしょう。
国内外のレイオフ事例
ここでは日本と海外におけるレイオフの事例を解説していきます。
日本のレイオフ事情
日本ではレイオフは浸透していません。その理由は日本ではレイオフがしにくい状況にあるからです。日本の企業が解雇を行うには4つの要件を満たす必要があります。
会社の存続のために人員整理が必要なこと
会社側が解雇回避の努力をしていること
解雇の対象者の選択が会社への貢献度が低いなど合理的であること
解雇対象者や労働組合に十分な説明を行って納得してもらえていること
これらは「整理解雇の4要件」と言われ、すべてを満たさなければ解雇は不当となります。また、業績がかなり悪化しない限り整理解雇は実施できないので、日本では事業転換の一環で簡単に解雇はできないのです。
海外のレイオフ事情
レイオフが日本企業で行われるケースは少ないですが、アメリカをはじめとする海外では珍しくありません。海外のレイオフでは従業員のことを配慮せず、シビアに決断を下します。
海外のレイオフと日本の解雇では少し内容が異なります。レイオフの場合、従業員は仕事が無くなった旨を伝えられた後、すぐに私物をまとめて出ていくように通達される形で、非常にドライです。なお、日本のリストラのほとんどは業績悪化に伴い実施されますが、海外のレイオフは事業見直しの一貫として行われるケースもあります。
レイオフの正しい知識を身につけておきましょう
本記事ではレイオフの意味やメリット・デメリットなどを説明しました。レイオフを実行するためには社員と密なコミュニケーションをすることが前提になりますが、不況時の緊急策としては有用です。
レイオフについての正しい知識を身につけておくことは、従業員にとっても管理職にとっても今後重要となっていくでしょう。