ゾーニングは、さまざまな分野で使われる言葉ですが、それぞれニュアンスが異なります。最近はコロナ禍でも注目されていますが、ビジネスでもマーケティングやIT分野で出てくる単語です。
本記事では、ゾーニングの基本的な意味について整理した後、医療・建築・ビジネスなどの分野により、具体的にどういう意味になるのかまとめました。ビジネスシーンにおいてゾーニングが出てきた場合に正しく解釈できるよう、意味の違いを確認しながらお読みください。
ゾーニングとは
ゾーニングとは、「区分、区画すること」あるいは「物品やサービスなどの購入・利用を年齢などによって制限すること」という意味をもつ単語です。どちらも「分ける」という意味を含みます。「何を」分けるのかについては、前後の文脈を確認して読み取る必要があります。
ゾーニングがよく使われる分野としては医療・建築・ビジネス(マーケティング・IT)・ネット用語などが挙げられます。以降では、各分野ではどのような意味でゾーニングを使っているのかを確認しましょう。
医療(コロナ)関係におけるゾーニングの意味
病院のゾーニングとは、主に病院内の空間を、病原体に汚染されている区域(汚染区域)と汚染されていない区域(清潔区域)を明確に分けることです。
新型コロナウイルス感染症の患者を受け入れている病院は、感染の危険性が常に付きまとうため、ゾーニングが欠かせません。
感染症対策のゾーニング
感染症対策として行うゾーニングの考え方は下記の通りです。
- 汚染区域(レッドゾーン)と清潔区域(グリーンゾーン)を明確に区別
- 汚染区域は可能な範囲で狭く設定
(広く設定するとその空間が広く汚染され清掃消毒の負担も大きい) - ナースステーションは原則として清潔区域
- 医療従事者は汚染区域に入る際に必要な個人防護具を着用
- 個人防護具の着用と脱衣は別の場所で
- 清潔区域では、汚染されやすい部位を中心として頻繁に清掃消毒を行う
いずれも感染拡大を予防しながら安全に医療を進めるために参考となります。
汚染区域(レッドゾーン)と清潔区域(グリーンゾーン)
汚染区域と清潔区域の区分けは、細かいルールが定められています。中でも主だったルールは以下の通りです。
- 汚染区域は患者のいる病室と感染症廃棄物を運ぶ動線
- 清潔区域は病室外(廊下など)
- 個人防護具の「着用場所」を『清潔区域』内の入口付近に設置
- 個人防護具の「脱衣場所」を『汚染区域』内の出口付近に設置
- 清潔区域・汚染区域間の移動は、一方向になるように出入口を設ける
コロナ禍のニュースなどで「ゾーニング」という言葉が出てきた場合は、病原体の汚染区域と清潔区域に分けることだと解釈しましょう。
建築業界におけるゾーニングの意味
ゾーニングは、建築業界でよく使われる言葉で基本的な意味は「空間をテーマや使いみちに分けて配置などを考えること」です。
空間デザインの基本的な考え方
空間デザインを考える上で、ゾーニングは基本の考え方となります。地域の場合なら都市計画、建築物なら建築設計など空間の規模は違いますが、相互の関係を考慮して位置関係を決めます。
都市計画法で定められた市街化区域では、住居系・商業系・工業系の用途地域に区分けされていますが、これも空間デザインにおけるゾーニングの例です。
建築物の場合も、例えば病院の診療棟と入院病棟との区分けや、マンション内でコミュニティ施設と居住部分を分けて設計するのもゾーニングに基づいた空間デザインの一例となります。
3種類のゾーニング
空間のゾーニングでよく知られる区分は以下の3種類です。
- パブリックゾーン:多くの人とともに過ごす空間
- プライベートゾーン:プライベートな空間
- サービスゾーン:生活に必要な空間
一戸建て住宅の場合、リビングダイニングはパブリックゾーン、寝室や書斎はプライベートゾーン、キッチンやトイレ、バスルームはサービスゾーンとなります。
ゾーニング図
ゾーニング図は、空間に目的別のゾーンをどう配置するかを記載した図です。その空間で過ごしやすいように、空間内の動線や使いやすさを考えてゾーニングを行うことで、空間をどのように使うかが把握しやすくなります。
ビジネス(マーケティングなど)におけるゾーニングの意味
ビジネスシーンでも、マーケティングやIT分野にてゾーニングという言葉は使われています。また、ネット用語では、「制限」の意味でゾーニングを使います。それぞれの具体的な意味と使い方について見ていきましょう。
マーケティングでは売り場の区画分け
マーケティング分野では、スーパーマーケットやコンビニなどにおける売り場の区画分けのことをゾーニングと呼びます。ゾーニングに関する主な用語は以下の通りです。
- ゴールデンゾーン:顧客の目に留まりやすく手で触れやすいゾーン
- バーチカル(垂直)陳列:商品を縦方向に並べる陳列方法
- ホリゾンタル(水平)陳列:商品を横方向に並べる陳列方法
ゴールデンゾーンには、新商品や売れ筋商品を陳列します。大人のゴールデンゾーンに比べて、子どものゴールデンゾーンは低い位置になります。
バーチカル陳列は、ゴールデンゾーンに陳列される商品の種類が多く、顧客との接触機会が多いという特徴のある陳列方法です。ホリゾンタル陳列は、ゴールデンゾーンに陳列される商品が特定されるため、売り場を印象付けやすいという特徴があります。
オフィスでは用途に合わせた間取り決めのこと
オフィスの区分けのことも「ゾーニング」と呼びます。近年では、セキュリティを意識したゾーニングが多く見られます。例えば、業務で一部機密情報を扱う場合は、エントランスゾーン、来客者対応ゾーン、業務ゾーン、機密情報ゾーンと区分けして運用することで、高いセキュリティ効果を得ることが可能です。
業務ゾーンには入館証などの認証機能を用いることで、セキュリティを高められます。機密情報ゾーンは業務ゾーン内に設置し、生体認証などにより許可された社員のみ入室できるようにすることで、最高レベルのセキュリティを確保できます。
ネット用語では閲覧サービスの区分・制限
ネット用語として「ゾーニング」が使われる場合は、青少年保護の観点から閲覧・利用できるサービスを区分し年齢制限するという意味になります。
ゾーニングの英語表現
ゾーニングを英語で表現すると、そのまま「zoning」となります。zoningを使った英語の例文は以下の通りです。
The zoning of the hospital was implemented to counter the new coronavirus infection.
(新型コロナウイルス感染症の対策で、病院のゾーニングを実施した。)Before thinking about the floor plan of my home, I considered zoning such as public and private zones.
(マイホームの間取りを考える前に、パブリックゾーンとプライベートゾーンなどのゾーニングを検討した。)
ゾーニングの正しい意味は文脈から汲み取ろう
ゾーニングは、基本的な意味である「区分する」「制限する」の2通りを覚えておけば、文脈に従い「何を」区分・制限するのか理解しやすくなります。
例えば建設関係では、空間の区画分けを意味すると覚えておけば大丈夫です。医療関係では感染症対策のための区画分け、マーケティングになると、売り場の区画分けとなります。