「〇〇社がXX台リコール」というニュースを見聞きした経験を持つ人は多いはずです。主に車関連のニュースでよく聞く「リコール」は日本の制度のひとつですが、車だけでなく役職や食品などを対象に使われるケースもあります。
この記事では、リコールの意味や語源、使い方についてまとめました。
リコールとは
はじめに、リコールの基本的な意味や類義語、英語表現を説明します。
リコールの意味
リコールは欠陥品の回収を意味します。市場に出た製品に欠陥が見つかった場合、消費者を守るために市場や消費者のもとに出回った製品をすべて回収する必要があります。回収だけでなく修理することも含めてリコールと呼ばれます。
ニュースで耳にする機会が多いので車のリコールが印象に残りやすいですが、基本的にはどのような製品もリコールの対象です。
リコールには「罷免」「解職請求」の意味も
無機物のみに限らず、人の役職もリコールすることができます。人に対して用いる場合のリコールには「罷免」「解職請求」という意味があり、各自治体によってリコールのルールが定められています。
リコールの類義語
リコールの類義語は「回収」「リカバリー」です。そもそも、リコールそのものに「欠陥品を回収する」という意味があります。一方「リカバリー」は不具合があったときに「回復する」「復旧する」ことを意味するので、「修理」の意味も持つリコールの類語と言えます。
車のリコールの意味
ニュースで耳にすることの多い「車のリコール」にはどのような意味や背景があるのでしょうか。車のリコールについて簡単にまとめました。
国土交通省主導のリコール制度とは
車のリコールは、国土交通省によって定められた「リコール制度」に基づいて行われます。車の設計や製造過程にトラブルがあり、自動車メーカーが回収の必要があると判断したとき、国土交通省に事前に届け出を提出することで、市場に出回った製品を回収・修理できます。
リコール制度の目的
リコール制度は、欠陥があると判断された製品をメーカーが回収することで想定される事故やトラブルを未然に防ぎ、消費者の安全を守るために設けられた制度です。基本的にはリコールはメーカーの判断によって行われますが、消費者からの情報提供によって国土交通省がリコールの必要性を判断し、メーカーに要請するケースもあります。
リコール届け出の流れ
基本的な届け出の流れは、メーカーが不具合情報を入手したら製造過程を見直し、国土交通省に報告します。
調査の結果「道路運送車両の保安基準」に適合していないと判断されると、メーカーはリコールの実施を決めて国土交通省に届け出を提出することになります。届け出が受理されたらリコールを実施し、リコールの回収状況・修理状況を都度国土交通省に報告する必要があります。
リコールしないとどうなる?
リコールについては、道路運送車両法の第63条に定められています。たとえば保安基準に適合していない製品・製造過程が判明したのにもかかわらずリコールを実施しなかった場合は、第63条に従わなかったことになります。
第63条に従わなかったときの罰則については第106条に記載があり、「1年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金」が科せられることとなっています。また、第63条の4において国土交通大臣は対象のメーカーにリコールの調査報告を提出させることができると定められていますが、これに違反した、つまり報告を怠ったりした場合は、第111条に定められている通りに罰則を受けることになります。
車以外の製品のリコール
リコールは、車に限らずすべての製品が対象となります。ここでは、食品や車以外の製品のリコールについてはどのように定められているのかをまとめました。
消費者庁が主導
食品のリコールは、消費者庁が主導となって対応しています。基本的には食品もリコール対象であり、消費者庁ではリコール情報を開示しています。
リコール情報を開示する目的
リコール情報を開示しているのは、製造側のミスにより欠陥があると判断された製品の使用によって、消費者が事故やトラブルに巻き込まれるのを防ぐためです。
消費者庁のアンケート調査によると、約3割の消費者がリコールを知っても事業者に連絡しないという結果になりました。同じく消費者庁によると、平成20年1月から平成30年12月までの10年間で、リコール対象製品が原因で発生した事故が1,593件だったこともわかっています。
消費者庁ではそうした事故を未然に防ぐために、自分の家に眠るリコール対象製品の危険性に気づいてほしいとの想いから、リコール情報を開示しています。
リコール対象製品を調べる方法
多くの人は自分の家にある製品がリコール対象製品であることを知らず、一方で消費者庁のデータベースにもたくさんの製品情報があるので、なかなかすべてを探してみようとは思わないでしょう。
消費者庁の「リコール情報サイト」では、リコール情報を知る手段として「リコール情報メールサービス」への登録を推奨しています。消費者庁で把握しているすべてのリコール対象製品の情報を受け取ることができます。
自分の持っている製品がリコール対象であるか確認したいときや、今後リコールの対象となったときにすぐにわかるように、「所有者登録サービス」への登録も推奨されています。
リコール対象製品が見つかった際の対処法
リコール対象製品が見つかったら、まずは使用を中止して事業者に連絡をします。事業者に連絡がとれなかった場合は消費者生活センターに連絡してみましょう。そして、周りに同じ製品を使っている人がいたら教えてあげることが大切です。
人に対するリコール
製品だけでなく、議員などの人の役職もリコールすることができます。しかし多くのルールやトラブルもあり、社会問題になることもあります。
地方自治法に定められた「解職請求権」
「議員のリコール」とは、地方自治法第81条に定められています。基本的に有権者は、地方公共団体の総数の3分の1以上の連署名によって、該当自治体の長に対し任期満了前に解職請求をすることができます。関連する法律が84条などにも定められています。
解職条件の署名が問題に
解職請求には署名が必要になりますが、この解職条件についてはたびたび問題となっています。人数が少ない自治体については地方自治法第81条に記載がありますが、人数の多い自治体においては3分の1の署名を集めることが難しいのではないか、といった議論が持ち上がっています。
また、解職請求を通そうとして署名を偽るという問題も発生しました。2020年の10月、愛知県知事へのリコール請求のため、署名の約8割が偽造されるという事件が起きています。
国会議員はリコールできない
地方自治体の議員はリコールできますが、国会議員はリコールすることができません。国会議員をリコールできるようになってしまうと、対立する派閥が特定の議員を失職させてしまったり、少数派意見がつぶされてしまったりすることが予想されるからです。
このことは憲法51条において「両議院の議員は、議院で行つた演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない」と定められており、国会議員は基本的に選挙によってのみその地位が保証されます。
その代わり、国民は選挙によって多数決の結果議員を罷免させることができますし、議員が何らかの違反を犯したときには処分として「除名」されることがあります。
リコールの複数の意味を押さえましょう
リコールの意味や由来、使い方についてまとめました。車のリコールは人命にかかわることでもあるので最も緊急性が高く重要視されていますが、リコールは国民に与えられた権利の一つです。自分の身の安全を守るためにも、どのような場合はリコールできるのかをきちんと知っておくといいでしょう。