「ゼロサムゲーム」とは、主に経済学で用いられ、社会人であればぜひ覚えておきたい言葉のひとつです。
この記事では、「ゼロサムゲーム」の意味や具体例、勝つためのポイントなどを紹介します。また、対義語や関連する言葉についてもまとめました。
ゼロサムゲームとは
「ゼロサムゲーム」とはゲーム理論のひとつで、参加者全員の合計得点が常にゼロとなる得点方式のゲームやその状況のことです。ゼロサムゲームでは一方が得点すると他方が失点することで、全体の持ち点の和は必ずゼロになります。
同義語には「ゼロ和ゲーム」「零和ゲーム」があり、意味は「ゼロサムゲーム」とまったく同じです。
英語では「zero sum game」
「ゼロサムゲーム」を英語で書くと「zero sum game」または「zero-sum game」です。「zero」は「0」「ゼロ」、「sum」は「合計」「総数」、「game」は「ゲーム」「競技」「遊び」などを表します。
つまり、「zero sum game」は「合計がゼロのゲーム」を表しており、日本語の「ゼロサムゲーム」と同じ意味です。
「ゼロサムゲーム」は経済学でよく用いられる
商品を購入する際、購入した人の持っているお金は減りますが、売った人のお金は同じだけ増えます。お金のやり取りの合計はプラスマイナスゼロになることから、商品を売り買いする際のお金の動きはゼロサムゲームのひとつといえるでしょう。このため、「ゼロサムゲーム」は経済学でよく用いられます。
ゼロサムゲームの具体例
商品購入時のお金のやり取り以外にも、ゼロサムゲームは身近にありますのでみていきましょう。ゼロサムゲームの代表例を紹介します。
外国為替取引
「外国為替取引」とは、アメリカドルと日本円など2国間の異なる2つの通貨を交換する取引のことです。通貨交換比率は「為替レート」と呼ばれ、両国の政治・経済の情勢などさまざまな要因によって変動します。
外国為替取引では、将来日本円の価値が上がると思えば日本円が買われて、逆に日本円の価値が下がると判断する投資家が多ければ日本円が売られる仕組みです。
為替変動を短期間でみると一方が上がるともう一方は下がることから、外国為替取引はゼロサムゲームのひとつといえます。
競馬
「競馬」や「競艇」などでは、負けた人の掛け金は主催者の取り分を除いて、買った人にお金が分配されます。勝ち負けの金額と主催者の取り分を合わせるとプラスマイナスゼロになることから、競馬などはゼロサムゲームのひとつです。
将棋
将棋は2人で指すゲームですので、一方が勝ってもう一方が負けるか、引き分けとなることから、ゼロサムゲームのひとつといえます。
また、将棋のゲームでは駒を指して、相手の駒を取って打つこともあります。自分の持ち駒が増えたら相手の持ち駒が減り、両者の持ち駒増減の合計がゼロになる点からも、将棋はゼロサムゲームのひとつです。
ゼロサムゲームで勝つには?
ゼロサムゲームの結果は全員が引き分けになるか、勝敗がつくかのいずれかです。勝者になるにはゲームに勝たなければなりませんが、勝てる確率はそう高くありません。
そこで、ゼロサムゲームに勝つためのポイントを紹介します。
引き際を見極める
ゼロサムゲームで勝っている状況では、もっと勝てるのではないかという気持ちになりやすく、どんどんお金をつぎ込んでしまうことがあります。そのため気がついたら大きく負けていた、ということにもなりやすいため、勝っている状態でやめておくことが勝つためのポイントです。
ゼロサムゲームで勝ちたいなら、欲張りすぎず引き際を見極めて負けないように気を付けましょう。
負の感情に引きずられない
ギャンブルなどで少し損をしただけで気持ちが落ち込んでしまうと、負の感情にずるずると引きずられてしまうことがあります。
気持ちが落ち込んでいると悪い判断を重ねてしまいやすくなりますので、ゼロサムゲームに負けても、できるだけ早く気持ちをリセットして、気にしすぎないようにしましょう。
ゼロサムゲームの対義語
「ゼロサムゲーム」とは対照的な意味を持つ対義語を紹介します。
非ゼロサムゲーム
非ゼロサムゲームとは、ゲーム理論で用いられる言葉で、参加者の得点と失点の総和がゼロにならない状態です。
金融市場では株式投資が非ゼロサムゲームにあたります。例えば1株100円で購入した株式でも、株価が200円に上昇すると投資した2倍の価値に変化しますが、株価が50円になると価値は半分に変化。
投資したお金と手にした価値の総和がゼロにならないことから、非ゼロサムゲームと言えます。
プラスサムゲーム
「プラスサムゲーム」も非ゼロサムゲームのひとつで、ゲームでプレイヤーの得点合計がプラスになるゲームのことです。相手と協調することで互いの利益が増加し、一方の利益が他のプレイヤーの損失になりません。
両者が協調して、いわゆる「Win-Winの関係」を築くことにより、プラスサムゲームは実現可能です。
マイナスサムゲーム
非ゼロサムゲームには「マイナスサムゲーム」もあり、プレイヤーの利害が衝突した結果、利益合計がマイナスになるゲームのことです。
マイナスサムゲームの代表例としては賃上げ交渉を行う「労使交渉」があります。時間が長引けば長引くほど双方のマイナス負担が大きくなってしまい、いい影響を与えないことから、ビジネスではできる限り回避されます。
ゼロサムゲームと関連が深い用語
「ゼロサムゲーム」と同じ「ゼロサム」という言葉を使った経済用語「ゼロサム交渉」の意味を紹介します。
ゼロサム交渉
「ゼロサム交渉」とは、双方に利益のあることについて、どちらが取得するのかを交渉することで、両者のいずれかが支配的な結果となります。どちらかのアイデアや方針を実現させようとすることで、もう一方は妥協するか消滅するしかありません。
実行策は強制になる場合が多く、ゼロサム認識に基づく交渉は、両者の奪い合いが前提となります。しかしどちらかが損をする交渉になるため、合意に至らないこともあります。
ゼロサム交渉は交渉の最終的な手段ですので、双方が利益を得られる交渉「プラスサム交渉」が選ばれることが多いです。
ゼロサムゲームは経済に関連が深いビジネス用語
「ゼロサムゲーム」とは、もともとはゲーム理論のひとつで、誰かが勝てば誰かが負ける方式を指す言葉でした。そこから意味が広がって経済学の用語としても使われるようになり、具体例としては外国為替取引などがあります。
ゼロサムゲームでは必ず勝者と敗者に分かれるので、勝つためには引き際を見極めることなどが大切です。
経済活動のすべてがゼロサムゲームになるわけではなく、両者の利得の合計がプラスになる「プラスサムゲーム」や、マイナスになる「マイナスサムゲーム」などもあります。
社会人なら「ゼロサムゲーム」の意味を正確に理解して、使いこなしていきましょう。