帝国データバンクは、このたび、2021年5月における負債1,000万円以上の法的整理について集計を行い、発表した。負債総額は1,664億4,700万円で、大型倒産の発生が押し上げる結果となった。
全業種における倒産件数の傾向
2021年5月の倒産件数は461件(前年同月比60.1%増)で、件数自体は低水準なものの、前年同月比は反動が増している。4月の倒産件数は489件(前年同月比35.5%減)で、4月としては過去最小だった。6月の倒産件数は537件(前年同月比33.4%減)で、昨年6月が反動増だったこともあり2カ月ぶりに前年同月比は減少。6月としては件数で過去最少、3割超の減少率も初めてとなった。
2021年5月の負債総額については1,664億4,700万円で、大型倒産が発生したために、前年同月比134.0%の増加となった。4月の負債総額は799億9000万円で、昨年度負債総額最大だった前年同月からの反動もあって前年同月比50.5%の減少に。6月の負債総額は725億8300万円(前年同月比42.6%増)だった。
業種別の倒産件数の傾向
業種別にみると、5月は全業種で前年同月を上回り、2019年9月以来20カ月ぶりの全業種増加となった。建設業(84件、前年同月比133.3%増)は9カ月ぶりに増加。小売業(100件、同51.5%増)では飲食店(49件)が6カ月ぶりに増加で、小売の中では最大の増加幅に。サービス業(110件、同64.2%増)では、ソフトウェア開発など広告・情報サービス業(34件)などで増加している。
4月は7業種中6業種で2ケタ減と大幅に前年同月を下回り、卸売業(58件、前年同月比41.4%減)は10カ月連続で減少し、2000年以降2番目の低水準だった。不動産業(29件)では不動産仲介業(14件)などを中心に5カ月連続の増加となった。4月の不動産業(18件、前年同月比12.5%増)は全業種中で唯一増加した。
6月は7業種中6業種で、前年同月から減少率2ケタ以上と大幅に下回り、中でも不動産業(20件、前年同月比42.9%減)は、不動産代理・仲介業(3件、同72.7%減)が前年同月から7割超の減少となった。特に建設業、製造業、卸売業の3業種は、6月としてはいずれも件数で過去最少だった。唯一増加したのは運輸・通信業(29件、前年同月比31.8%増)だった。
倒産の主因
主因別にみると、5月の「不況型倒産」の合計は347件(前年同月比52.9%増)で、10カ月ぶりに前年同月を上回り、構成比は75.3%(同3.5ポイント減)を占めた。4月の「不況型倒産」の合計は377件(前年同月比38.6%減)、構成比は77.1%(同3.9ポイント減)で、6月は396件(前年同月比39.5%減)で、構成比は73.7%(同7.6ポイント減)と12カ月連続で80%を下回った。これは2008年8月以降では最長。
資金規模別の倒産割合
負債規模別にみると、5月は負債5,000万円未満の倒産は281件(前年同月比88.6%増)、構成比は61.0%を占めている。内訳は、サービス業(80件)が構成比28.5%(同3.0ポイント増)を占め前年から倍増し、小売業(64件)が同22.8%(同4.0ポイント減)で続いた。
4月は297件(前年同月比32.7%減)で、構成比は60.7%。内訳は、小売業(85件)が構成比28.6%(同1.8ポイント減)を占め最多で、サービス業(80件)が同26.9%(同0.8ポイント増)で続いた。
6月は309件(前年同月比38.1%減)で、構成比は57.5%を占めた。60%を下回ったのは2020年5月以来1年1カ月ぶり。内訳は小売業(84件)が構成比27.2%(同0.9ポイント減)を占め最多となった。
資本金規模別では、5月の資本金1,000万円未満(個人事業主含む)の倒産が316件(前年同月比69.0%増)、構成比は68.5%を占めた。4月は329件(前年同月比34.2%減)、構成比は67.3%を占めた。6月は倒産が351件(前年同月比36.9%減)、構成比は65.4%を占めた。
地域ごとの倒産件数
地域別では、5月は9地域中6地域で前年同月を上回った。関東(176件、前年同月比95.6%増)は、1都5県で増加。特にサービス業(57件)や建設業(29件)では前年同月から倍増している。近畿(111件、同113.5%増)も、建設業(21件)を筆頭に、小売業(22件)やサービス業(26件)が大幅増加で前年同月から倍増した。一方で、東北(12件、前年同月比14.3%減)、四国(6件、同45.5%減)、九州(36件、同5.3%減)の3地域は、前月に引き続き減少となった。
4月は全地域で前年同月比2ケタ減となった。関東(185件、前年同月比21.3%減)は、9カ月連続の減少。群馬、埼玉、神奈川など5都県で減少し、なかでも東京都は9カ月連続の減少に。近畿(126件、同35.1%減)は、全府県で2ケタ減。特に卸売業・小売業の2業種は8カ月連続で減少が続くなど、減少傾向が続く。九州(34件、同40.4%減)は2020年7月以降10カ月連続で減少しており、過去最長の連続減少期間が続いた。
6月も全9地域で前年同月を下回った。最も減少率が大きいのは北海道(11件、前年同月比57.7%減)で前年から半減した。中部(67件、同40.2%減)、近畿(134件、同47.2%減)はともに4割超の減少で、東北(25件、同37.5%減)、中国(22件、同31.3%減)、九州(40件、同37.5%減)はともに3割超の減少となり、関東(200件、同12.7%減)は、1都5県で減少した。一方で、群馬県(13件、同62.5%増)が2021年中で最多となった。
態様別の倒産件数
態様別に見ると、5月の破産は421件(構成比91.3%)、特別清算は28件(同6.1%)、民事再生法は12件で、うち7件を個人事業主が占めた。4月の破産は450件(構成比92.0%)、特別清算は22件(同4.5%)、民事再生法は17件で、うち10件が個人事業主。6月の破産は493件(構成比91.8%)、特別清算は29件(同5.4%)、個人事業主が中心の民事再生法(15件)は前年同月から半減している。
特殊要因倒産
5月の人手不足倒産は5件(前年同月比150.0%増)発生しており、9カ月ぶりの前年同月比増加となった。後継者難倒産は38件(前年同月比100.0%増)発生しており、2カ月ぶりの前年同月比増加に。返済猶予後倒産は32件(前年同月比23.1%増)発生し、2カ月ぶりの前年同月比増加となった。
4月の人手不足倒産は8件(前年同月比46.7%減)発生しており、8カ月連続の前年同月比減少となった。後継者難倒産は36件(前年同月比33.3%減)発生で、2カ月ぶりに前年同月比減少に。返済猶予後倒産は33件(前年同月比40.0%減)発生で、3カ月ぶりの前年同月比減少となった。
まとめ
2021年5月の倒産件数は、10カ月ぶりに前年同月を上回ったが、新型コロナ対策の緊急事態宣言下で全国的に法的整理手続きが滞留し、過去最少を記録した2020年5月(288件)の反動から、過去最大の増加幅となった。また、官民による中小企業支援策の効果は持続しており、5月の倒産件数としては過去2番目の低水準で推移している。
5月の負債総額は、2カ月ぶりに前年同月から増加となった。原因は、元ホテル・レジャー施設運営の株式会社東京商事が令和最大の負債で全体を押し上げていること。
新型コロナ感染拡大の影響は、感染防止措置が大都市圏などで延長され、飲食店など対面型業態を中心に厳しい経営状況が続くとみられる。企業の資金繰りを支えた実質無利子・無担保の特別融資について、融資ピークの昨年6月に返済猶予期間1年で導入した借入金の返済がスタートし、企業の業績回復状況や取引金融機関の対応が注目される。各種支援策で対応しきれない新型コロナ関連倒産は、2020年2月に確認されて以降、今年5月には累計で1500件を超えている。