Amazonでは、ユーザーに自社の商品を買わせるため、販売業者がさまざまなテクニックを用いています。いわゆる“サクラレビュー”のように評価をお金で買うような手法のほか、Amazonのシステムを利用して商品の評価が高いように見せるTipsまで、その内容はさまざまです。

こうしたテクニックは文字通りのいたちごっこで、知れ渡るとすぐに別のテクニックが生み出される…というループを繰り返して現在に至っています。どれだけ“情強”を名乗っていても、新しく登場したテクニックについては、その存在を知らなければ手の打ちようがありません。

今回は、販売業者が現在進行形で用いているテクニックのうち、関係者の間ではすでに常識ではあるものの、ユーザーにはあまりその存在が知られていないであろう、3つの最新のテクニックを紹介します。商品購入の判断を誤らないためにも、ぜひこれらのテクニックの存在を知っておいてください。

  • デキのよくない商品を素晴らしい商品だと偽って買わせるなど、Amazonの販売業者による“だまし”のテクニックは日々進化しています。“情強”を自認する人も、思わず引っかかってしまうかもしれません

“情強”ほど騙される? 通常価格を誤認させる「クーポン技」

Amazonで価格の推移を見るには、「Keepa」という無料ツールを使えばよいことはよく知られています。価格の変動がグラフで見られるので、例えばもともと1,000円の商品をセール直前に2,000円に値上げし、「通常価格の50%オフの1,000円で販売!」などとユーザーを騙そうにも、Keepaのグラフを見ればセール前は1,000円で売っていたことがすぐに見破られてしまうわけです(Keepaの詳細は「Amazonの価格推移をグラフ化、買い時が分かる「Keepa」が超便利!」を参照)。

  • 「Keepa」を使えば、その商品が過去にいくらで販売されていたか、グラフから履歴を見ることができます

ユーザーにとって便利な、しかし販売業者にとっては都合の悪いKeepaが有名になりすぎたことで、販売業者がユーザーを騙すテクニックもさらに磨きがかかってきました。そのひとつに、クーポンを使って通常価格をユーザーに誤認させるテクニックがあります。

例えば、前述の例であれば、通常時の価格は2,000円とし、そこに1,000円引きのクーポンを添付し、実質1,000円で販売しておきます。そして、セール時にはこのクーポンを外したうえでセール価格を1,000円に設定すれば、売価はどちらも同じ1,000円ながら、セール時はあたかも通常時の半額に値引かれているように見えるというわけです。

  • 最近やたらと見かけるようになった「クーポン」。セールでもないのにやたらと高額なクーポンが添付されているのはちょっとアヤシイ?

この方法の(販売業者側にとっての)メリットは、前述のKeepaではクーポンによる割引は反映されないため、グラフ上はあくまで通常時は2,000円だったかのように履歴が残ることです。実際には、通常時かセール時かを問わず、2,000円で売られていたことは一度たりともないのですが、Keepaのグラフ上ではそうは見えず、ユーザーは「セールで半額になっている!」と錯覚してしまうというわけです。

Keepaを利用している自称“情強”のユーザーほど騙されやすいこのテクニック、すでに販売業者の側では定番となりつつあり、最近クーポンを添付する商品がやたらと目立つのは、それも一因と見てよさそうです。Keepa側では対策は取られていないため、現時点でこれに対抗するには、お目当ての商品はふだんから目視でチェックしておくという、アナログな方法しかありません。

販売数が少ないカテゴリーに商品を登録して「ベストセラー1位」をゲットする技

次に紹介するのは、販売数が軒並み少ないカテゴリーに商品を登録することで「ベストセラー1位」のアイコンをゲットするテクニックです。

Amazonでは、そのカテゴリーの中でもっとも売れている商品に「ベストセラー1位」というアイコンが表示されます。このロゴがあると、あたかも大人気商品のように思ってしまいます。実際、これらはAmazon内の販売数量に基づいて表示されていることから、外部から作為的にコントロールすることは困難と考えられます。

  • 「ベストセラー1位」アイコン。しかし、隣に表示されているカテゴリには違和感を感じることも?

ところがよく見ると、このベストセラー1位というアイコンの横に表示されている商品のカテゴリーが、その商品の特性からして、あまりふさわしくないと感じることがよくあります。これはつまり、ある程度の数を売れば容易にベストセラー1位が取れそうなカテゴリーを狙って商品を登録することで「ベストセラー1位」のアイコンをゲットしているわけです。

Amazonでは、ひとつの商品を複数のカテゴリーに登録できるため、余剰枠を活用することで、こうしたテクニックがまかり通ってしまいます。もっとも、例えばデジタル機器を化粧品と偽って登録するなど、あからさまにカテゴリーが異なっていると言い訳できないため、その商品の特性に多少なりとも関連のあるカテゴリーを選ぶというテクニックが横行しています。

例えば、あるメーカーが販売している、スマートスピーカーと連携してカーテンを開閉するデバイスは、カーテンの留め具である「タッセル・房掛け」のカテゴリに商品を登録し、その中でベストセラー1位を標榜しています。

これだけではまだグレーゾーンという見方もできなくはありませんが、同じメーカーの商品を見ると、スマホから操作できるスイッチを「電設用スイッチ」、スマートリモコンを「家庭用温湿度計」としてベストセラー1位を名乗っていたりと、作為的に登録していることがよく分かります(ちなみに、当該のスマートリモコンには、温湿度を測る機能はありません)。

  • あるメーカーの、スマートスピーカーと連携してカーテンを開閉するデバイスは「ベストセラー1位」が表示されていますが、よく見ると「タッセル・房掛け」というカテゴリーでの1位であることが小さく書かれています

  • 実際に、そのカテゴリーのランキングを見てみると、その商品だけが完全に浮いていることが分かります。販売数量が少ないカテゴリーを狙って登録しているのでは?という疑惑が残ります

こうした事例は、本来あるべきカテゴリーに強力なライバル商品があり、自力でベストセラー1位を取るのが難しい場合によく見られます。ベストセラー1位と表示されているからといって、売れ筋なのだと早合点するのではなく、本当にその商品が属しているべきカテゴリーで1位なのかをチェックする癖をつけたほうがよさそうです。

暗躍する「コメントなしで星5つ」のサクラレビュー

最後に紹介するのは、サクラレビューで、コメントなしで星5つだけをつける手法です。

SNSでは、サクラレビューの仲介業者が、商品の代金をPayPalなどで返金するという条件で、高評価と感想コメントを募集していることがよくあります。先日海外で、こうしたサクラレビューの業者とユーザーのやりとりが収められたデータベースが漏洩して話題になりましたが(9TO5Macの関連記事)、こうした募集はいまもSNS上で堂々と行われています。

もっとも、こうした依頼に基づいて書かれたサクラレビューは、どれも文字数がほとんど同じだったり、またそのユーザーがほかに投稿しているレビューを見ると似たような商品ばかりだったりと、「サクラチェッカー」などのツールをわざわざ使わなくとも、目視レベルで容易に見破ることが可能でした。

こうしたことから最近増えているのが、コメントなしで星5つだけを付ける、という依頼です。これなら誰が投稿しているか分からず、また文字数などで見破られることもなく、評価だけが伸びるというわけです。

  • SNS上で行われているサクラレビューの募集。「文字不要」「星のみ」という条件は最近増えつつあります

以前であれば、コメントがなく評価だけが増え続けるのは、それだけで怪しいと見なされたものですが、現在は少々事情が異なります。というのも、Amazonは昨年から、海外のAmazonに投稿されたレビューコメントを「他の国からのトップレビュー」として商品ページに掲載する試みを行っており、そのせいで本文のない評価が相対的に目立たなくなっているからです。

以前までは「これだけ評価がたくさんついているのにコメントがまったくない、これは怪しい」となっていたのが、そうはならなくなっているわけです。もともと海外のレビューを日本語の商品ページに統合するのは、日本語でまともなレビューコメントが少ないことから生み出された苦肉の策だったと考えられますが、結果的にそのことが、評価なしでの投稿を目立たなくしているのはなんとも皮肉といえます。

  • 「他の国からのトップレビュー」。サクラレビューが少ない海外のユーザーが寄せたコメントのほうが相対的に信頼できるというのも、日本のAmazonのレビューのひどさを物語っているといえます

ユーザーとしては、星5つの評価が多い割に日本語のコメントが極端に少ない商品は、こうしたサクラレビューの可能性があると考えて対処していくしかありません。もっとも、この方法ではやらせでない評価もまとめて排除してしまう可能性もあり、必ずしも万能ではありません。星だけの投稿を禁止するなどの抜本的な対策が待たれるところです。