政府が言う「いろいろな働き方」は、契約社員や派遣社員などの不安定な雇用形態を拡大してきました。コロナ禍で、そうした不安定な立場で働く人たちに大きな影響が及んでいます。しかし一方、コロナ禍で改めて本当の意味での「いろいろな働き方」に思いをはせた方も多いのではないかと思います。

働き方に思いをはせ、自分自身を見つめ、具体的に生活をイメージしていく過程で、収入はどのくらい? 経費はどんなものがかかる? 手取りはどのくらい?……といろいろ把握しなければならないこともでてきます。ここではフリーランスになった場合、会社員とどう違うかを考えてみましょう。

会社員とフリーランスで違う所得と各種控除とは

収入からさまざまな控除を差し引いた課税所得に対して、所得税・住民税が課税されます。控除額は会社員とフリーランスでは異なります。下記の表は違いの概算で、所属の健康保険組合や自治体で異なりますので、あくまで目安です。「サラリーマンの重税」と言われてきましたが、比較してみると控除額は会社員の方が多いのが分かります。それが所得税、住民税の違いとなって表れています。では、なぜ会社員が重税と言われているのでしょうか。

  • 30歳会社員と自営(フリーランス)の収入比較(概算)

フリーランスの収入は、経費を差し引いた後の金額になります。この経費に大きな裁量の余地があると同時に、次の項目で示される青色申告で認められている経費が大きく影響します。会社員の給与所得控除がフリーランスの経費にあたるのですが、フリーランスの500万円の収入は経費が大きく削減され、実質それ以上の金額であるケースも考えられます。

ここでもう一つ注目しなければならないのが年金保険料です。フリーランスは義務化されている国民年金のみの加入であれば、表のように年間約20万円の支出ですが、その年金額は本年度の水準で年間80万円足らずで、厚生年金も受給する人に比べて1/3程度かもしれません。別途年金を補完するものに加入しなければ、年金だけで生活できる水準にはなりません。また万一の場合の補償もありませんので、その分の資金も準備する必要があります。新型コロナの中、フリーランスの方は一気に収入が無くなったケースも多いでしょう。

フリーランスは確定申告が必要、青色申告と白色申告の違いは?

フリーランスの人は、毎年確定申告が必要です。サラリーマンでも住宅ローン控除を初めて申請する時や医療費が多かったりするときは、確定申告すれば所得税を軽減できます。フリーランスは「青色申告承認申請書」を納税先の税務署に提出すれば、青色申告者として各種の特典を得られます。青色申告の申請をしないと白色申告者となります。この青色申告に会社員にないメリットがあるのです。

青色申告のメリット

  • 最大65万円の特別控除が受けられる

最大で65万円(e-Taxによる申告または電子帳簿保存を行わない場合は、最大55万円)を所得から差し引くことができます。

  • 赤字を3年間繰り越しできる

青色申告では赤字の繰り越しが可能です。前年の赤字額を当年の黒字額から差し引いて申告することができます。

  • 30万円未満の固定資産が全額経費になる

仕事で使うパソコンや車などの固定資産で30万円未満のものであれば一括で全額経費にすることができます。白色申告の場合は10万円以上の物は、使用できる期間に応じた減価償却を行わなければなりません。

  • 家賃や電気代なども経費になる

自宅が事務所兼用という場合、必要となる家賃や管理費、電気代、インターネット料金などを経費として計上することができます。ただし、全額ではなく、事業に使用している割合分を経費にすることができます。白色申告の場合は、50%以上を事業に使用していなければ経費として認められません。

  • 家族への給料を経費にできる

自宅で仕事をすれば、家族も電話応対や接客、事務処理などを手伝うケースが多いと思います。しかるべき手続きを踏めば、生計をともにする家族への給与を経費とすることができます。白色申告の場合は、「専従者控除」として一定額(配偶者で86万円、その他の親族は50万円)の控除を受けられるだけとなります。なお、事業専従者控除をした場合には、控除対象配偶者や扶養親族にはなれません。白色申告の場合は有利な方を選択します。

青色申告のデメリット

  • 事前の申請が必要

「青色申告承認申請書」を納税先の税務署に提出しなければならず、忘れると青色申告ができません。「青色事業専従者給与」も事前に税務署に届出を行う必要があります。

  • 複式簿記で管理が必要

青色申告は、特別控除などを受けられる半面、帳簿は、「複式簿記」という所定の方式で行わなければならず、家計簿レベルとは大きく異なります。税務署に提出する書式だけでも、確定申告書の他に青色申告決算書、貸借対照表があり、日々の伝票管理や仕訳日記帳、残高試算表の他に、決算時の総勘定元帳など、作成書式も多くあります。ただし専用のソフトもありますので、事業が大きくならない限り、税理士に依頼せずとも自分で作成することも可能です。白色申告は帳簿も売上と経費だけの簡単な帳簿で済みます。