ビジネスシーンで多く使われている言葉のひとつ「ご容赦」。よくメールなどで見かける表現ですが、利用シーンによって複数の意味あいがあるため、使い方には注意が必要です。
本記事では、「ご容赦」「ご容赦ください」の読み方と基本的な意味・使い方、間違った使い方について解説します。ビジネスシーンでよく見かける「ご容赦」を断りの意味で使うケースについても触れるとともに、シーン別の例文や、類語表現についてもまとめました。
「ご容赦」とは
「ご容赦」とは、相手に許しを請うことで、「ごようしゃ」と読みます。「容赦」で「許す」という意味になり、「ご」がつくことで尊敬語となり、相手の許しを請う、という意味になります。
「容赦」とする場合は「あなたの行為を私は容赦しない」のように、自分にも相手にも使える言葉です。しかし「ご容赦」になると、自分には使えない点に注意してください。
■ご容赦の基本的な使い方
ご容赦は、基本的に「ご容赦ください」や「ご容赦願います」などのフレーズで使われます。いずれもビジネスメールではよく見かける表現で、相手に許しを請う意味として用いられます。
■「予防線」の意味にもなる
ビジネスメールでは、将来的に発生する可能性のある過失に対して、事前にお断りしておく、という「予防線」としての使い方も見られます。
例えば、相手に料金の支払いがない相手に、再び請求メールを送る場合などに、文末によく使われるのが、「行き違いですでに対応いただいている場合はご容赦ください」という表現です。相手が対応済みなのに入れ違いで依頼メールを出している可能性を考慮し、非礼があった場合のために事前に許しを請う場合につかいます。
こんな場面ではNG! 間違った「ご容赦」の使い方
「ご容赦」は、相手側に許しを請う表現ですが、あきらかにこちら側に不手際があった場合は、謝罪の表現にしなければ失礼に当たります。
例えば「弊社の事情により、別商品を配送しました。何卒ご容赦くださいませ」と連絡が来たらどうでしょうか。多くの人は、相手側の事情なのになぜこちら側が一方的に譲歩する必要があるのか、と怒り出すのではないでしょうか。このような場合は、「大変申し訳ございません」などの謝罪の言葉とともに、今後の対応について伝えておく必要があります。
こちら側の事情で間違い・ミスなどを発生させてしまった場合は、「ご容赦」という表現を使わず、丁寧に謝罪しましょう。
ビジネスメールでの使い方
「ご容赦」は相手に許しを請う言葉です。ただ、ビジネスメールでは、相手に対して断りの意味で用いるケースが一般的です。依頼をお断りすることで相手の気分を害することに対する謝罪や、行き違いに対する事前の断りの例を紹介します。
■相手の気分を害することに対する謝罪の意
相手の要求や依頼事項を断らなければならない場合は「ご容赦」という表現で相手の許しを請う形式を取りつつ、暗にお断りの意思を伝えます。
・ご要望にお応えしかねます。何卒ご容赦のほどお願い申し上げます
・ご期待にそえず、申し訳ございません。何卒ご容赦くださいますようお願いいたします
■行き違いに対する事前の断り
何かの催促のメールを出す際、相手と行き違いになる可能性を考慮し、前もって許しを請う、という意味で「ご容赦」という表現を使います。
行き違いで返送いただいておりましたらご容赦ください
ビジネスシーン別例文集
ここからは、具体的なビジネスシーン別に、「ご容赦」の例文を、ビジネスメール形式で紹介します。
■取引先からの誘いにお断りの連絡をするケース
件名:Re:弊社忘年会のお誘い
◯◯株式会社 村田部長
いつも大変お世話になっております。
株式会社△△ 経営企画部の冨岡です。
御社の忘年会にお誘いいただき誠にありがとうございました。 ぜひ参加したかったのですが、あいにくご指定の日を含む10日間は海外出張の予定があるため欠席いたします。
せっかくお声がけいただいたのに申し訳ありませんが、何卒ご容赦くださいませ。
■催促メールのクッション言葉として使うケース
件名:【対応確認】Re:【5/2218:00まで】月例進捗会議資料の提出
IoT事業部 流通第1G 後藤課長
お疲れ様です。
経営企画部の冨岡です。
本メールと行き違いで、すでにご対応をいただいておりましたらご容赦いただきたいのですが、5/24現在、月例進捗会議資料がまだ当方に届いておりません。
お忙しい中申し訳ありませんが、会議は明日5/25に迫っておりますので至急ご対応いただきたく、本日中の送付をお願いいたします。
何か事情がおありでしたら、折り返しご連絡いただけますと幸いです。
■事前に予測できる過失に対する事前の断りを入れるケース
件名:【6/10期限】入金のお願い
墨染 様
いつも大変お世話になっております。
株式会社△△の藤森と申します。
いつも弊社の食器をお買い上げいただき誠にありがとうございます。
先日配送いたしました以下商品の代金について、5/22現在まだ入金が確認できておりません。
・八寸皿 8,000円
・変わり丼鉢 5,000円
お手数ではございますが、6/10までにご入金いただけますでしょうか。
行き違いですでにお支払いいただいているようでしたら、何卒ご容赦ください。
■顧客へ対応できないことを伝えるケース
件名:デビットカード対応お問い合わせの件
木村 様
いつも大変お世話になっております。
株式会社△△の沢辺と申します。
先日は、お問い合わせをいただき誠にありがとうございます。
「支払方法にデビットカードを追加してほしい」というご要望ですが、現在のところ弊社では対応の予定がございません。 すぐにお客様のご要望にお応えできず申し訳ありません。何卒ご容赦いただけますと幸いです。
「ご容赦」の類語と例文
「ご容赦」にはいくつかの類語や言い換え表現や、類似表現があります。さまざまな表現を知り、表現の幅を広げましょう。
■謝罪の意を強く表現したい場合
「ご容赦ください」では謝罪の意が少し弱いと感じる場合は、以下のように言葉を補い謝罪の意を強調しましょう。
・平にご容赦ください
・あしからずご容赦くださいますようお願い申し上げます
・ご容赦くださいますよう、伏してお願い申し上げます
■「できません」の意味での類語
「ご容赦」は、依頼や要望を断る際に使えます。この場合の類似表現としては、「いたしかねます」や「難しいかと存じます」などがあるため状況に応じて使い分けましょう。
・開封した商品の返品はお受けいたしかねますので、何卒ご了承くださいませ
・申し訳ございませんが、ご要望通りの対応は難しいかと存じます
■言い換え表現「お許しください」
「ご容赦ください」をわかりやすく表現したのが「お許しください」になります。
連絡が行き違いになりすでに対応いただいている場合は、失礼をお許しください
■言い換え表現「ご了承ください」
「了承」は、事情をくんで納得するという意味の言葉で、「ご了承ください」になると、相手に納得してくださいと依頼する表現となります。
・申し訳ございませんが、ご要望通りの対応はできかねますことをご了承くださいませ
・予約可能時間は午前10時からとなりますので、あしからずご了承ください
■言い換え表現「ご理解ください」
相手に理解を求める敬語表現で、「ご容赦ください」と同じような場面で利用できます。
東京都からの要請により、営業時間を下記のとおり変更いたします。ご理解くださいますようお願いいたします
「ご容赦」の英語表現
「ご容赦」は英語で以下のように表現できます。日本語の「ご容赦ください」が許しを請う意味に対し、英語では「相手の許しに感謝する」という表現になります。
・I appreciate your understanding
(あなたの理解に感謝します=ご容赦ください)
・Thank you for your patience and understanding
(ご辛抱とご理解に感謝します=ご辛抱とご理解くださいますよう、ご容赦ください)
・Please accept my humble apologies
(私のお詫びを受け入れてください=どうかご容赦ください)
「ご容赦」を使いこなしてスムーズなコミュニケーションを
「ご容赦」の基本的な意味は「許しを請うこと」です。ビジネスシーンでは、基本的な意味よりも、何かを断る場合や、事前に予測される不備に対する謝罪の意を表現するケースが多い言葉です。
前後の文脈によって意味が違ってくる言葉なので、相手がどういう意図で表現しているかを正確に把握するよう意識してください。また、自分が使うときは、失礼な言い方にならないよう注意しましょう。