テレビ朝日系ドラマ『あのときキスしておけば』に登場する“大人気漫画”『SEIKAの空』がスピンオフ作品として実写化し、TELASAで配信開始された。選ばれし勇者たちが、魔王から平和を取り戻すために立ち上がる――というあらすじは王道少年漫画のようだが、コスプレのような野菜モチーフの衣装に、勇者のちょっぴりブラックな労働環境を描くなど、ヨーロッパ企画・角田貴志脚本の遊び心が光る、スピンオフの域を超えた挑戦的な作品となっている。
本編では『SEIKAの空』作者でヒロインの唯月巴/蟹釜ジョー(麻生久美子)の魂が入ってしまった“オジ巴”という難役に挑んでいる俳優の井浦新が、スピンオフではマッチョなイケオジ勇者・不知火コン乃介を演じる。このたび井浦が、本作への意気込みや、SNSの持つ力について語った。
――『SEIKAの空』が実写化されると聞いたときの感想を教えてください。
無茶するな、ぶっ飛んでるな、と(笑)。でも『あのキス』に登場する『SEIKAの空』の世界観やキャラクターが面白かったので、うれしかったですね。
子どもの頃から憧れていたヒーローアクションものの世界観に染まれることも楽しみでした。ただ『SEIKAの空』は、大人のお芝居が求められてるなぁという物語だったので、驚きましたし、その分演じ甲斐がありました。
――コン乃介に抜擢されたときの心境を教えてください。
今回のコン乃介は、ガタイがデカくて怪力担当の黄色。子どもの頃ヒーローごっこで遊ぶとき、僕は青か黒を選んでたんです。役者としても、今までメガネをかけた繊細な役やクールな役を頂くことが多かったので、コン乃介のような豪快に生きられるキャラクターにキャスティングして頂けるというのは、とても新鮮でうれしかったです。
――衣装合わせをしてみていかがでしたか。
衣装さんやメイクさんは、『あのキス』より求められるレベルが高いところもあって大変だっただろうなと思います。コン乃介の衣装もよく工夫されてるんですよね。着物のように見えるけど、実は着物よりも使い勝手の良い作務衣からアレンジしてくれたもの。鞘も美術の方たちの手作りです。剣もかっこいいですよ。持って帰りたいです(笑)。
――コン乃介はとうもろこしがモチーフになったキャラクターですが、とうもろこしは好きですか。
もちろん大好きですよ! 1回も歯で触らず、全部外して食べるという井浦家に代々伝わる食べ方があるんですけど、すごくキレイに食べられて達成感がすごいんです。豊富な栄養がある胚芽の部分が残るともったいないですから。ただ野菜の中では……34番目くらいですかね(笑)。
――『あのキス』作中には、蟹釜ジョー先生へのSNSのコメントなど「視聴者からの反応」が登場しますが、SNSと付き合ううえで心がけていることはありますか。
自主制作映画に参加したとき、宣伝する力もないままに初日を迎えたことがありました。公開初日に舞台あいさつで登壇すると、お客さんは10人くらい。宣伝なしでもよくこんなに見に来てくださったなぁってうれしかったんですけどね。でも、埋まらなかった映画館を見た監督が悔しがっている姿に、命がけで作った作品のハレの日に、たくさんの人に映画を届けられなかった苦しさを感じました。
そこでSNSを使って映画の上映情報を載せてみたら、少しずつお客さんが増えていったんですよね。俳優たちや映画に関わった人たちで手分けしてやっていったら、最終的に映画館が満席になりました。
自分たちも発信して届けることができるんだ、本当にすごいなって。SNSって何かを変える力を本当に持っていて、人に届けることに向いているんだなと実感しました。
そして届いてしまうからこそ、ネガティブなものは絶対に発信したくないなと。僕はネガティブなことは好きじゃないので。もしかしたら自分の主観が誰かを悲しませてしまうことはあるかもしれないけど、明らかに誰かを攻撃するようなことはしない、したくないなと考えています。
コントロールしてちゃんと使っていれば、楽しさや笑顔を伝えていくことができるし、ニュースよりリアルタイムで世の中と繋がれるというのは、本当にすごい道具の1つだなと思います。だから怖いですね。子どもにいつSNSの世界を見せていこうかなとやっぱり考えてしまいます。
――最後に、視聴者へメッセージをお願いします。
SNSでは共演者たちとのエピソードやスタッフの写真も掲載しているのですが、実はたまに怒られたりもしてて。ネタバレになっちゃうからダメ! とか。命がけでやっています(笑)。
ただ、撮影の裏側を通して『あのキス』も『SEIKAの空』も、「ドラマって皆で作っているんだな」ということが伝わればいいなと思ってアップしています。スタッフ、出演者が一体となって作っている作品です。ぜひご覧ください。