戦型は角換わり腰掛け銀の最新形

第80期順位戦B級1組(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)の2回戦、▲稲葉陽八段(0勝1敗)-△藤井聡太二冠(1勝0敗)戦が6月3日に関西将棋会館で行われています。1回戦では三浦弘行九段を破って白星発進を決めた藤井二冠。三浦九段と同じく前A級棋士の稲葉八段相手に、どのような戦いを見せてくれるのでしょうか。


第80期順位戦B級1組リーグ表

前局は横歩取りの将棋で苦境に陥るも、終盤の鮮やかな切り返しで逆転勝利を収めた藤井二冠。順位戦の連勝を22に伸ばし、通算成績を40勝1敗としています。

稲葉八段は1回戦で横山泰明七段に敗れました。横山七段も藤井二冠と同じく今期がB級1組に初参加。さらに3回戦の相手は佐々木勇気七段で、初参加3人との3連戦となります。A級に即復帰するためにも、なんとしてでも連敗は避けたいところです。

藤井二冠と稲葉八段の過去の対戦成績は、藤井二冠の3勝1敗です。初対戦は2017年のNHK杯で、この時は稲葉八段が勝利を収めましたが、その後は藤井二冠が3連勝中。昨年7月の前回対局から約1年と、少し日が空いての対戦となる本局は、どのような結果になるでしょうか。

本局はリーグ戦のため、先後があらかじめ決まっています。先手の稲葉八段は角換わりを採用し、両者腰掛け銀に構えました。

玉を左右に動かして手待ちをする藤井二冠に対し、稲葉八段は▲4五桂と跳ねて仕掛けていきました。藤井二冠は△2二銀とかわします。

本局、稲葉八段の玉は7九にいますが、玉だけを8八に移動させた局面で▲4五桂と跳ねる将棋が、過去のこのカードで2局ありました。先手だけ1手多く指している局面があるなんておかしいと思われる方もいるかもしれませんが、後手の手待ち手順の違いによって出現するのです。

その将棋では両者後手を1局ずつ持っていました。そして、どちらも▲4五桂には本譜の△2二銀ではなく、△4四銀と対応しています。先手の攻撃陣形が違えば後手の応手が変わるのは自然ですが、攻めとは関係ない先手の玉の位置1つの違いでも対応が変わるのが将棋の面白いところです。

本譜、藤井玉は5三に移動させられ、金銀はバラバラな印象を受けますが、これが定跡。先手の攻めを玉の力で受けようという作戦です。先手としては歩切れのため、うまく攻めを続けられるかどうかが焦点となります。

ところがこの形、過去の実戦例は9局ありますが、先手が8勝、後手が1勝と大きく差が開いています。実は藤井二冠も先手を持って勝った棋士の一人です。あえてこの分の悪い形を選んだ藤井二冠の研究手が、いつ披露されるかに注目です。

持ち時間が6時間の本局の終局は本日深夜となる見込みです。

対局直前、盤上に鋭い視線を向ける藤井二冠(提供:日本将棋連盟)
対局直前、盤上に鋭い視線を向ける藤井二冠(提供:日本将棋連盟)