米Mozillaは、6月1日(現地時間)にFirefoxの新バージョンとなるWebブラウザ「Firefox 89」をリリースした。今回は、6週間を経たアップデートとなり、いつもの4週間よりも2週間長くなった。この間に、5月5日にマイナーバージョンアップの88.0.1がリリースされている。88.0.1では、以下の修正が行われた。

  • 最近のWidevineプラグインのアップデートが原因で、一部の購入したビデオコンテンツの一部が正しく再生されない問題の解決
  • 一部の第6世代IntelグラフィックチップセットでTwitterまたはWebRTC コールで再生されるビデオが破損する問題の解決
  • ハイコントラストモードが有効になっているユーザーがプリファレンスのメニューリストが読めない問題を修正

また、セキュリティアップデートは、以下の2件が行われた。

  • ユニバーサルクロスサイトスクリプティングの脆弱性(Androidのみ)
  • Webレンダリングコンポーネントの競合状態(結果、未定義の動作は発生)

セキュリティレベルは、前者はcritical、後者はhighである。今回は、88.0.1からのアップデートとなる。

Firefox 89のインストール

すでに自動アップデートが可能な状況になっているが、ここでは手動でアップデートする方法を説明したい。Firefoxメニューの[ヘルプ]→[Firefoxについて]を開くと更新が自動的に開始される。[再起動してFirefoxを更新]をクリックする(図1)。

  • 「Firefox 89」を試す - 新デザイン「Proton」へ刷新、シンプルな使いやすさ

    図1 Firefox 89へのアップデート

アップデート後のFirefox 89は、図2のようになる。

  • 図2 バージョン89にアップデート直後のFirefox

新規に、Firefox 89をインストールする場合、FirefoxのWebページからインストーラをダウンロードする(図3)。

  • 図3 Firefoxのダウンロードページ

[今すぐダウンロード]をクリックし、保存したファイルをダブルクリックして、インストールを開始する(図4)。

  • 図4 Firefox 89のインストール

画面の指示に従い、インストールを進めてほしい。以下では、新機能や変更点のいくつかを具体的に見ていこう。

Firefox 89の新機能

続いて、新機能であるが、今回のリリースでは、新デザインの「Proton」が採用された。図2にもあるように、新しくなったことが強調されている。順に紹介していこう。 まずは、ツールバーなどの簡素化である。重要なナビゲーション項目に焦点を当てるために、使用頻度の低い項目が削除された。

  • 図5 シンプルなデザインに

タブデザインも変更となった。アクティブなタブの丸みを帯びたデザインとなった。これにより、カレントタブがよりわかりやすくなった。また、タブにオーディオインジケータが表示されるようになり、再生中のタブがわかりやすくなった。

  • 図6 タブに「PLAYING」が表示

使用状況に応じてメニュー内容を再編成し、メニューが合理化された。図7は、Firefox 88のメニューである。

  • 図7 Firefox 88のバーガーメニュー

Firefox 89では、図8のようになった。

  • 図8 Firefox 89のバーガーメニュー

いくつかの項目が削除され、アイコンなどもなくなり、よりシンプルになった。プロンプトも更新された。たとえば、Web会議などで、カメラやマイクの接続を行う際に、個別に許可を求めるプロンプトが表示されていた。しかし、Firefox 89では、1つのプロンプトで確認が求められるようになった。

  • 図9 新しいプロンプト

これら以外にも、中断の減少の実現、アラートとメッセージが減少し、他のことに意識をとられることなくブラウジングできる。図10は、複数のタブを同時に閉じるときのプロンプトである。

  • 図10 複数のタブを同時に閉じる

また、ダウンロードなどでは、ナビゲーションバーで円グラフで、進行状態が表示される(図11)。

  • 図11 ダウンロードの進捗を表示(右上の青の部分)

このようにちょっとしたことが、変更になっている。Firefox 89では、デザインが統一され、より軽いアイコン、洗練されたカラーパレットなどにより、新たなブラウザ感は大きい。

機能面では、Total Cookie Protectionが、プライベートモードへも対応した(従来は、強化型トラッキング防止(ETP)の厳格モードでのみ有効)。これにより、Cookieが作成されたサイトにのみに制限され、Cookieを利用してサイトをまたいだ閲覧の追跡ができなくなる。

macOSユーザー向けにもいくつかの変更が行われた。一般的なアプリケーションで用いられているエラスティックオーバースクロールが実装された。ページの最後に到達すると、バウンドするアニメーションが表示される。ほかにも、スマートズームのサポート、macOSのコンテキストメニューがネイティブになり、ダークモードがサポートされた。

セキュリティアップデート

同時に行われたセキュリティアップデートであるが、修正された脆弱性はCVE番号ベース で9件である。深刻度の内訳は、4段階で上から2番目の「High」が2件、上から3番目の「Moderate」が5件、もっとも低い「Low」が2件となっている。 「High」では、

  • Android版Firefoxのパスワードマネージャで、ドメインスプーフィングの影響を受けやすい問題の修正
  • Firefox 89で修正されたメモリ安全性の問題

となっている。最高レベルの「Critical」はないが、早めのアップデートをすべきであろう。