税制改正により、2021年6月納付分の住民税から、税額を計算する際の控除額が変更になります。所得が高い人ほど控除額が下がり、結果として住民税が高くなる可能性があるのです。

今回は2021年度からの住民税が増税となる人、変わらない人、逆に減額となる人についてまとめます。会社から6月の給与明細を受け取ったら、住民税の欄をチェックしてみてください。

  • ※画像はイメージ

個人住民税の控除額が変更される背景

住民税や所得税の計算をする際に、所得から差し引かれるのが「控除」です。「基礎控除」などの言葉を聞いたことのある人もいるのではないでしょうか。

所得から控除が差し引かれる分、計算される住民税や所得税が安くなる仕組みです。よって控除には生活保障的な意味合いもあるのですが、裏を返せば所得が高いほど税負担の軽減額も大きくなり、恩恵を受けることになります。

行政側としては、生活に十分余裕のあると思われる高所得者の恩恵を大きくする必要はないという考えがあることから、今回の控除の変更につながったのではないかと考えられます。

控除のなかで現役世代と特に関係が深いのが、一律で適用される基礎控除、給与所得から差し引かれる給与所得控除であり、いずれも内容が変更となります。

またひとり親に関して新設される控除もありますので、あわせて見ていきましょう。

給与所得控除額の見直し

給与所得控除については、下記の3点がポイントです。

・一律で10万円の引き下げとなる
・控除の上限額は220万円から195万円に引き下げとなる
・上限額適用となる給与収入額は、1000万円から850万円へ引き下げられる

2021年度より、給与所得の控除額が一律で10万円引き下げられます。また控除額の上限が適用される給与等の収入額は1,000万円から850万円に、控除の上限額は220万円から195万円に引き下げとなります。

全体的に給与所得控除が縮小される背景として、勤務関連経費や諸外国の水準と比較すると過大であるとの指摘がなされてきたことがあるそうです。

基礎控除額の見直し

基礎控除は職業に関係なく、すべての納税者に適用される控除です。住民税の基礎控除はこれまで一律33万円でしたが、43万円に引き上げとなります。ただし所得が2,400万円を超える場合の控除額は、下記のとおり段階的に減額されます。

・2,400万円超~2,450万円以下:33万円→29万円に減額
・2,450万円超~2,500万円以下:33万円→15万円に減額
・2,500万円超:33万円→0円

2,500万円を超えると基礎控除額は0円となり、適用されなくなります。

未婚のひとり親に関する税制上の措置および寡婦(寡夫)控除の見直し

ひとり親に関しては、以下3点が変更となります。

・前年の合計所得金額が135万円以下のひとり親は個人住民税が非課税
・生計が同一の子どもがいる所得金額500万円以下のひとり親について、「ひとり親控除(30万円」を適用
・生計が同一の子どもがいない寡婦については控除額26万円を引き続き適用

これまで、婚姻歴のないひとり親は税制上、控除がないことになっていましたが(みなし適用をしていた一部市区町村はあり)、今回の見直しで、所得が500万円以下の場合は、婚姻歴の有無にかかわらず控除が適用されることになりました。

住民税増税となるケース

先述の変更内容から、給与所得控除が一律引き下げとなり、上限額も引き下げられます。基礎控除は10万円引き上げになるのですが、850万円以上の場合は給与所得控除の引き下げ幅が大きいため、結果として住民税が増税となります。

ただし、所得金額調整控除の条件に当てはまる場合は負担が軽減されます。具体的には給与所得850万円を超え、かつ以下のいずれかに該当する世帯です。

・22歳以下の扶養親族がいる
・同一生計の配偶者が特別障害者である
・扶養親族が特別障害者である
・本人が特別障害者である

22歳以下の子どもがいる子育て世代などが対象となります。具体的な所得金額調整控除額は、(給与等の収入金額-850万円)×10%であり、限度額は15万円です。

よって給与所得控除の減少分を、所得金額調整控除額で全額カバーできる場合は、増税になりません。

また、寡婦(夫)控除の見直しにより、これまで控除が適用されていたひとり親の女性で、所得500万円以上の人は増税となります。

税額が変わらないケース

給与所得が850万円以下の場合、給与所得控除が一律10万円引き下げとなる一方、基礎控除が10万円引き上げられます。よって控除の変動額はプラスマイナスゼロとなり、住民税は増税になりません。

ただし850万円以下でも、2020年の給与所得が2019年と比べて大幅に上がった場合は、給与所得自体が増えますので、住民税も昨年に比べて上がることになります。

また、ひとり親の女性は所得が500万円以下の場合、税額は変わりません。

減税となるケース

自営業者も会社員同様、基礎控除額の引き上げの恩恵を受けますが、給与所得控除引き下げの影響は受けません。なぜなら自営業者の所得は原則として事業所得であるためです(給与所得として受け取るケースもあり)。

さらに電子申告をすることにより、これまでと同様65万円の青色申告特別控除を受けられるので、結果として減税となります。

未婚のひとり親については、先述のひとり親控除の制度が始まるため、所得が500万円以下のシングルファーザー、これまで寡婦控除が受けられなかったシングルマザー(所得500万円以下)は減税となります。