「足」と「脚」はどちらも「あし」という読み方を持つ漢字です。人間の下肢や動物のあしを指す言葉であることは何となくわかっていても、どう使い分けるのかはっきりとは知らない人も多いでしょう。
そこで本記事では「足」と「脚」の違いや使い分け方、それぞれの意味を紹介します。例文や類語、英語表現もまとめました。
「足」と「脚」の違いとは
「あし」の漢字表現には「足」と「脚」がありますが、違いは何なのでしょうか。
まず「足」の主な意味は、胴体から離れた、人や動物の体を支えたり歩行に使ったりする部分、つまり下肢全体です。
また「足」には、「くるぶしから先の部分」という意味もあります。
一方で「脚」は、膝から下の足を指す場合に用いることが多いです。
「足」と「脚」のそれぞれの意味と読み方
「足」と「脚」についての大まかな違いがわかったところで、それぞれの意味を詳しく見ていきましょう。
「足」の意味はいくつかある
「足」にはたくさんの使い方があり、下記のような意味として使われます。
・胴体から分かれた、体を支えて歩行に使う部分
・くるぶしまたはももから下のあし
・足で進むこと
・人材
・十分にあること
・不足を補うために加えること
・損失
・餅などの粘り
・行くことや来ること
・交通手段
など
また、「足」には下記のような読み方があります。
・あし
・ソク
・たりる
・たす
・たる
「足」は意味、読み方ともに種類が多く、幅広く使われる漢字です。
「脚」は膝から下の足
「脚」には下記のような意味があります。
・膝から下の足
・上記が転じて足全体
・特定の範囲の下側
・根拠となるもの
・芝居の下書き
・椅子や机などのあしがある道具を数える場合の助数詞
また、「脚」の読み方は下記の通りです。
・あし
・キャク
・キャ
「脚」には「足」とは異なる意味がありますので、違いを覚えておきましょう。
「足」と「脚」の使い分け
「足」と「脚」の意味は少し異なりますので、何を指すのかによって使い分けましょう。「足」と「脚」をどう使い分ければいいのかについて、詳しく紹介します。
下肢全体を指すなら「足」
「足」の主な意味は、胴体から離れた、人や動物の体を支えたり歩行に使ったりする部分です。
「脚」にも本来の意味から広がって人の股下全体を指す時にも使われます。しかし漢字が持つ本来の意味において、下肢全体を指す場合には「足」がよく使われるという点を覚えておきましょう。
膝下を指すなら「脚」
膝から下の足を指す場合には、「脚」という漢字を用いることが一般的です。意味が派生して、「脚注」など、ある範囲の下側を指す場合にも「脚」が用いられます。
また、「脚」は人だけでなく物に対して使われることもよくあり、「脚立」など物を支える部分に対して使われます。
足首から先は「足」
「足」という漢字には、「くるぶしから先の部分」という意味もあります。「くるぶし」とは、「足首の関節両側にある突起した骨」のことです。「足が大きいため靴のサイズがなくて苦労する」などと足首より先を指したい場合に使われます。
虫には「足」と「脚」のどっちを使う?
虫に関しては、「足」ではなく「脚」という漢字を使うことが多いです。
なお昆虫には3対の脚がありますが、頭に近い方から前脚(まえあし・ぜんきゃく)、中脚(なかあし・ちゅうきゃく)、後脚(うしろあし・こうきゃく)と呼びます。
「足」と「脚」の例文
「足」と「脚」はそれぞれ漢字の意味が少しずつ異なることから、使い方も異なります。「足」と「脚」の具体的な使用例を紹介します。
「足」を使った例文
「足」という漢字は「足」単独で使われることもあれば、「素足」や「足音」など他の漢字と組み合わせて使われることも多いです。幅広い使い方がありますので、下記の例文を参考に活用してください。
・彼女は足が長くスタイル抜群だ。
・足にぴったり合うサイズの靴は履き心地がいい。
・誰かが階段を上ってくる足音が聞こえる。
・浴衣の着付けが終わったから素足に下駄を履いて出掛けよう。
・雨上がりの校庭には子どもの足跡がたくさん付いていた。
「脚」を使った例文
「脚」という漢字の元々の意味は膝から下の脚のことですが、意味が転じて足全体を指すこともあります。「脚」は物の支えとなる部分を指すことも多い点を意識しながら、「足」と「脚」とを使い分けましょう。
・机の脚は長さのバランスが崩れると机ががた付く。
・この橋は立派な橋脚で支えられている。
・挨拶回りのために得意先を行脚(あんぎゃ)する毎日だ。
・台風が近づいているせいか、雨脚(あまあし)がどんどん強くなってくる。
・彼は日頃からトレーニングを欠かさないおかげか、脚力が強くジャンプ力抜群だ。
「足」と「脚」の類語
「足」と「脚」には似た意味を持つ漢字や熟語がいくつかあります。しかし、何を指すのかによって、類語となる言葉が異なる点には注意しましょう。「足」と「脚」との意味ごとの類語を紹介します。
似た意味を持つ漢字には「肢」がある
「肢」という漢字の読み方は「シ」「てあし」で、意味は下記の通りです。
<意味>
・てあし
・体や物の本体から分かれた部分
「肢」には「足」「脚」と同じように「あし」と、さらには「手」も意味に含まれており、「足」や「脚」より広い範囲を指す点が大きな違いです。
・人間は四肢でバランスをとって歩く。
・人は下肢を使って歩く。
足は「交通手段」に言い換えられる場合もある
「足」には、「移動手段としての交通機関」「乗りもの」などの意味があります。
・今日は家族が車を使っていて足がない。
・台風で公共交通機関が運休になってしまい、足がなくなってしまった。
上記の使用例のように、「足」には「交通手段」と言い換えられる使い方もあります。
足は「赤字」「金銭」などに言い換えられる場合もある
「足」には、「損失」「欠損」「借金」「金銭」などの意味もあります。
・予定より出費がかさんでしまい、今月も足が出てしまった。
・商売がうまくいかず足だらけで、倒産してしまいそうだ。
赤字になることを意味する「足が出る」という慣用句に代表されるように、「足」は「借金」「金銭」などの意味としても使われます。
「足」と「脚」の英語表現
「足」と「脚」は意味する部分によって英語表現が異なります。それぞれの英語表現を見ていきましょう。
足を英語であらわすと「leg」や「foot」
「足」があしの付け根から下全体を表す場合の英語表現は「leg」です。また、くるぶしから下を指す場合の英語表現は「foot」を使います。指すパーツによって英単語を使い分けてください。
・He stood on one leg.(彼は片足で立った)
・foot light(足元灯、フットライト)
脚を英語であらわすと「crus」や「lower leg」
「脚」を「膝から下」ととらえる場合、英語表現は「crus」や「lower leg」を使います。「足」と異なる英単語を使う点に注意して使い分けましょう。
・the lower joint of the leg(脚の関節)
・She kicked his crus.(彼女は彼の脚を蹴った)
「足」と「脚」を正しく使い分けましょう
「足」と「脚」はどちらも「あし」と読む漢字ですが、使い方が少しずつ異なります。「足」はあしの付け根から下の部分を指す場合とくるぶしから先を指す場合とがあり、英語で表現すると「foot」や「leg」です。一方、「脚」は膝から下を指しますので、英語表現は「lower leg」などとなります。
「足」を使った言葉には「足音」や「素足」など、「脚」を使った言葉には「脚立」や「机の脚」などがあり、意味がそれぞれ異なります。この記事で紹介した「足」と「脚」の違いを理解して、それぞれ適切なシーンで使い分けていきましょう。