永瀬王座の研究通りの進行か!? ノータイム指しで見慣れない形に誘導

将棋の第6期叡王戦(主催:株式会社不二家)本戦トーナメント2回戦、▲永瀬拓矢王座-△藤井聡太二冠戦が5月31日に東京都「シャトーアメーバ」で行われています。勝者はベスト4に進出し、来期の本戦シード権を獲得します。


第6期叡王戦本戦トーナメント表

タイトルホルダー同士の藤井二冠と永瀬王座は研究パートナーとして知られている間柄。共に相手の手の内を知っている実力者が準々決勝で激突しました。

本局は振り駒で永瀬王座が先手番になりました。角換わり模様の進行から、永瀬王座が角道を止めます。角交換を拒否した場合は、雁木に組むのが一般的ですが、本譜永瀬王座は右銀をどんどん繰り出して、攻めの形を作るのを優先しました。

藤井二冠は腰掛け銀に構え、△6五歩と突いていきます。先手が雁木に組む前の機敏な仕掛けです。

ここで時間を使って対応を考えるのかと思われましたが、なんと永瀬王座はほぼノータイムで▲6八飛と飛車を回って受けました。この手は準備していなければすぐには指せない手です。▲6八飛までの消費時間がわずか1分というところからも、永瀬王座の深い研究がうかがえます。

対する藤井二冠は、いつも通り一手一手小刻みに持ち時間を使っています。▲6八飛に対して△4四歩と突いた時点で消費時間は54分。持ち時間が3時間の対局にしては、両者の消費時間に大きな差がつきました。

永瀬王座は25手目にようやく16分のまとまった持ち時間を投入。ここからはじっくりとした進行になるのでしょうか。

局面としては藤井二冠が雁木を構築したのに対し、永瀬陣は中途半端な構えに見えます。飛車先の歩は2五にまで伸びているのに、飛車は四間飛車。飛車をこのまま四間飛車で戦うのか、再び2筋に転回するのか。全く分かりません。

永瀬王座は29手目に玉を6九に移動させました。6筋で歩がぶつかっているものの、局面はひとまず落ち着いています。ここからどちらが戦いの火ぶたを切って落とすのか。現将棋界4強同士の対決は、中盤から目の離せない展開になっています。

この対局は本日の夕方の終局見込みです。勝者は準決勝で丸山忠久九段と対戦します。反対の山では佐々木大地五段がすでにベスト4に進出しており、先日まで名人戦で戦っていた渡辺明名人と斎藤慎太郎八段が6月1日にベスト4をかけて対局します。

対局開始前の藤井二冠(左)と永瀬王座(提供:日本将棋連盟)
対局開始前の藤井二冠(左)と永瀬王座(提供:日本将棋連盟)