古来より日本で知られている「福」に関する7つの神様である七福神。今回は七福神のうち、「布袋尊」という神様について詳しく解説します。
布袋尊がどんな神様なのか、信仰の歴史やご利益、モデルとなった実在の人物に、自宅での祀り方までわかりやすく解説します。お参りできるおすすめスポットもまとめました。
布袋尊とはどんな神様?
早速、布袋尊とはどんな神様なのか、詳しく見ていきましょう。
布袋尊の読み方は「ほていそん」
布袋尊は「ほていそん」と読みます。後ほど詳しく触れるように、食べ物や日用品、もらいものなどを入れた大きな「布袋」を持っていたことが名前の由来のようです。
「布袋様」ともいわれます。
財運や夫婦円満、子宝など多くのご利益があるとされる
布袋尊のご利益には、財運や夫婦円満、子宝、無病息災、商売繁盛、開運、良縁など、さまざまなものがあるといわれています。
実在していた僧であるとも、弥勒菩薩の化身ともいわれる
布袋尊は、800年代ごろ、中国に実際にいた人がモデルとされる珍しい神様です。その人は禅僧で、名前は契此(かいし・けいし)といいました。
この僧侶は普段から大きな袋を持ち歩いており、その袋に施しを受けていたことから、布袋尊の見た目と語源につながったといわれています。
亡くなってからも多く目撃されたり、僧侶がいた場所だけ雪が積もらなかったりと、さまざまな逸話を残していることを受けて、崇拝されるようになったそうです。
また契此、そして布袋尊は、弥勒菩薩の生まれ変わりともいわれています。弥勒菩薩とは、未来に下界に降りてきて仏となり、生ある全ての者を救うとされる存在のことです。
中国における信仰とは
前述のように中国にいた僧侶がモデルとされる布袋尊ですが、中世以降は弥勒菩薩の姿として描かれるようになりました。弥勒菩薩の姿で描かれた布袋尊を、寺院の主要な場所に安置するのが一般的なしきたりとなり、あらゆる場所で安置されるようになったといわれています。この像は「マイトレーヤ」と呼ばれ、多くの人から崇拝されてきたのです。
日本における信仰とは
日本では鎌倉時代に布袋尊が伝わったとされ、禅画の題材として描かれていました。庶民からは福の神としてあがめられていたようで、持っている大きな袋は「堪忍袋」とみなされるようになりました。
布袋尊は、始めは中国の信仰にならって弥勒菩薩の姿で描かれていましたが、次第に人間味を感じる姿で描かれるようになります。また、日本では七福神の一人として知られていき、縁起物として扱う一面もあるようです。
布袋尊の見た目の特徴は、大きなおなかと笑顔、そして手に持った袋
布袋尊の見た目は、まんまると膨らんだおなかと、ニコニコと笑顔を浮かべていること、そして持ち物の大きな袋が特徴です。
度量の広さや心の大きさを表しているのが手に持っている袋だと考えられており、心や度量が広い神様として知られています。
別の説によると、この袋は堪忍袋だといわれており、「堪忍袋の緒が切れる」という表現の元になったそうです。これほどまでに大きな袋がはちきれるくらいよっぽどのことが起こったという状態を表現しています。
動物や植物の名前にもなった?
布袋尊の見た目に似ているとして「ホテイ」というワードが、動物や植物の名前にも使われています。丸くてぼってりとした見た目が特徴的な「ホテイ魚」は、布袋尊の見た目をもじってつけられた名前です。
縁起が良いともされており、水族館などで特別展示を行われることもあります。このホテイ魚は深海性の高い生き物で、冷たい海に生息していますが、食用で食べている地域もあるそうです。
植物では「ホテイアオイ」という水草が例として挙げられるでしょう。葉が浮輪のような形になり、ぷっくり膨れてくる様子を、布袋尊のおなかに例えたことでこの名前になったといわれています。
七福神巡りについて
七福神への信仰が始まったのは鎌倉時代からだと考えられており、室町時代になって7人の神様がそろったとされています。七福神巡りをすると、生命財産を守りそれぞれの神が与える7つの幸福を手に入れられると言われています。
浅草では七福神めぐりができる巡拝路があり、毎年多くの人が訪れ、ご利益や幸福を願っているのです。布袋尊もこの七福神の中の一人だと考えられており、縁起の良い神様として人気があります。
大黒天、毘沙門天、福禄寿など、他の七福神について
七福神は布袋尊の他にも、 恵比寿天、 大黒天、 毘沙門天、 弁財天、 福禄寿、 寿老人 が存在します。
七福神を信仰すれば、七福神の七つの幸福を授けられ、七つの厄災が取り除かれると言い伝えられています。それぞれ異なった特徴を持っているので他記事も参考にしてみてください。
布袋尊はどこに行けば会える?
ここからは、布袋尊を拝むことができる場所について紹介していきます。
浄智寺「布袋尊」(鎌倉江の島七福神)
浄智寺(じょうちじ)は鎌倉五山の寺で、1281年に創建された歴史のあるお寺です。この浄智寺の裏山のやぐらの中に布袋尊が置かれており、鎌倉江の島七福神の一つとして多くの人が訪れています。おなかをなでると元気をもらうことができ、この布袋尊が指している方角に福があるといわれています。
深川稲荷神社「布袋尊」(深川七福神)
1630年に作られた深川稲荷神社は、無住社であり町会によって管理されています。この周辺を徒歩2時間かけてめぐる深川七福神の中に、布袋尊が祀られており、清澄白河駅周辺に位置しています。1月1日~7日の間は、順路に旗が立てられているようで、初めて七福神巡りをする方でもスムーズにお参りできるでしょう。
不動院「布袋尊」(浅草名所七福神)
不動院は760年に作られ、布袋尊像は江戸時代後期のものであるといわれています。中国の信仰の影響を大きく受けている像ですが、現在の布袋尊の特徴を押さえているため、見分けがつかないかもしれません。「浅草名所七福神詣で」が開催されており、バスでまわるツアーなどもあるので、老若男女問わず楽しめるでしょう。
大福寺「布袋尊」(京都七福神)
大福寺は京都七福神の布袋尊を祀っており、推古天皇の時代に作られましたが江戸時代の「天明の大火」によって本堂以外の部分を失ってしまいました。しかし、古くから信仰されてきたこともあり、現在でも縁起の良いお寺として多くの人が訪れています。
江戸時代からお正月に大福寺の宝印をもらう習わしがあり、「大福帳」と呼ばれる由来となっているそうです。
財運効果には、家に布袋尊の像や置物を置くのがおすすめ
布袋尊は家に置く風水グッズとしても人気です。布袋尊を祀っている神社やお寺にお参りに行くのもいいですが、中国では財運を高めるために自宅に設置するそうです。常にご利益を感じたいという方は、布袋尊を自宅に招いてみてはいかがでしょうか。
布袋尊の祀り方
布袋尊を自宅に祀る場合には、家の顔となる玄関か、家の中心部分である床の間やリビングに置くのが一般的です。
玄関に置くと、災いが入ってくるのを防いでくれるという効果もあります。金運や財運をより強く招きたい方は、金庫やなどお金にまつわる場所に置くのがいいでしょう。
また、金色でできている布袋尊を祀るときには西の方位に置くとより効果的だといわれています。上記の場所で西の方角を向くように置いてあげると、よりご利益を得ることができるそうです。
布袋尊を祀るときの注意
布袋尊を祀るときには、先述した祀り方を守るだけでなく、他にも注意すべき点があります。
布袋尊を置くのは高い場所にし、清潔を保ちましょう。ほこりがたまっていたり、汚れがあったりする場所では、ご利益を感じることができないかもしれません。定期的な掃除を心掛けて、常にきれいな状態を保つようにしてください。
また、布袋尊を置いたらそのままにせず、常に感謝を忘れないようにしましょう。玄関に置いてあるのであれば、出入りする時に感謝を伝えたり、挨拶をしたりするなどそのまま放置…といったことないように気を付けてください。
ご利益の多い布袋尊について知ろう
金運を引き寄せてくれるだけでなく、夫婦円満や災いを防いでくれるご利益があるとされる布袋尊は、見た目のかわいらしさからも人気のある神様です。七福神の一人として知られており、お正月には七福神巡りでお参りをする方も多いことでしょう。
幸運を呼び込みたいのであれば、風水的にも効果があるとされている布袋尊の置物を自宅に置いてみてはいかがでしょうか。