「片づける」という意味をもつ「かたす」と「なおす」にはどのような違いがあるのでしょうか。この記事では「かたす」と「なおす」について、どの地域で使われているのか、どのような語源をもつのか紹介します。
「かたす」とはどういう意味?
「かたす」という言葉を使うことはありますか? 「かたす」という表現は、「片付ける」という意味ですが、実は関東地方で主に使われている言葉です。
「かたす」という表現が、どんなきっかけやルーツで使われるようになったのか紹介していきます。
かたすは主に関東で使われている言葉
もともと「かたす」は、関東地方で広く使用されてきた方言です。しかし、1980年代にはほとんど使われなくなっていました。
その後、90年代ごろから、千葉県や埼玉県などで再び普及し始め、東京でもよく使われるようになります。
首都圏以外から新しく移り住んだ人が使っていたことから、今まで使っていなかった人も積極的に使い始めたことが一因のようです。
「かたす」を使った例文
「かたす」を標準語にすると「片付ける」「整とん」「整理」に置き換えられます。
そのため、基本的には「もともとあった場所に戻す」場合や、「散らかったものをどうにかして綺麗にする」といった意味として使われることが多いです。
■「かたす」を使った例文
・「会議が終わったので資料をかたしてきてもらえますか?」
・「部屋が散らかっているからかたしてよ!」
・「おもちゃで遊びたいけど、かたすの面倒だから悩むな」
・A「漫画読みたいんだけど、今どこにある?」B「あの漫画なら、クローゼットにまとめてかたしてあるよ」
・「今日はお客さんが家にくるから、洗濯物をかたしておいてね」
片付けるよりも、短くいうことができ、音の響きも少し柔らかく感じます。子どもに伝える時に使いやすい言葉といえるのではないでしょうか。
「なおす」とはどういう意味?
「なおす」も「かたす」と同様に、「片付ける」「収納する」といった意味があります。しかし、関東で「なおす」というと「修理する」という意味として捉えられてしまうため、使う時には意味の認識が同じでないと、食い違いがでてしまうかもしれません。
なおすは主に関西で使われている言葉
「なおす」を「片付ける」という意味で使っているのは主に関西地方です。関東や東北、九州、北海道では、「なおす」というと「修理する」という意味で捉える人が多くなっています。
「なおす」と言われたときにイメージする言葉で出身地がわかるかもしれませんね。
「なおす」を使った例文
片付ける意味をもつ「なおす」ですが、実際にどのように使えるのか、例文にして確認してみましょう。
■「なおす」を使った例文
・「会議が終わったから資料をなおしてきてもらえますか?」
・「部屋が散らかっているからなおしてよ!」
・A「漫画読みたいんだけど、今どこにある?」 B「あの漫画なら、クローゼットにまとめてなおしてあるよ」
・「今日はお客さんが家にくるから、洗濯物なおしておいてね」
「片付ける」を意味する方言を紹介
片付けるという意味の「かたす」「なおす」でしたが、他の地方ではどのように使用しているのでしょうか。
『最新ひと目でわかる全国方言一覧辞典(江端義夫/加藤正信/本堂寛編)』(学習研究社)を参考に紹介していきます。
片付ける
「片付ける」は一般的な標準語として定着しています。 上述の辞典によると宮城や福島、千葉、神奈川、新潟、長野、京都、岡山、愛媛、宮崎など広範囲にわたって普段使いで使用されているとのことです。
しまう
「しまう」という表現は比較的に「かたす」に近いようなイメージをもつ方が多いのではないでしょうか。こちらは群馬や石川、岐阜、愛知、三重と、広く分布しています。
とろける
北海道や青森などでは「とろける」と表現することもあります。また、鳥取では「とろく」、岩手では「とのげる」という表現もあるそうですが、急に言われたらびっくりしてしまいそうですよね。
その他めずらしい表現
上記以外の「片付ける」という意味で使われている、めずらしい表現を紹介します。
- 山形「すまう」
- 福井「しまつしる」
- 広島「とらげる」
- 山口「のける」
- 高知「くるめる」
- 沖縄「すみじーん」、「かたじきーん」
さまざまな「片づける」を知っておこう
今回は、「片付ける」という意味をもつ「かたす」「なおす」について紹介しました。 「かたす」は主に関東で使われており、「なおす」は主に関西で使われていますが、ほかの地域では「しまう」や「とろける」などの方言もあります。
めずらしい表現もたくさんありますが、少しでも知っているとコミュニケーションが円滑になる場合もあるので、ぜひ覚えてみてください。