初期のMicrosoftは「一家に一台のPC」を目指していた。そのPC所有スタイルも、現在は「一人一台」を飛び越えて「一人複数台のデバイス」になっている。ビジネス現場であれば、PCを軸にスマホやタブレットを併用することも珍しくない。PCは机上や膝の上で使うものであり、昇降スタンディングデスクという例外もあるが、支えのない状態で立って使う場面は多くないだろう。
そこで困るのが、お手洗いや休憩でPCから離れるとき、愛煙家であれば喫煙スペースだ。移動先でもPCで閲覧していたWebサイトを継続して見たり、作業を続けたりしたくても、PCからスマホへの作業の引き継ぎはシームレスとはいいがたい。
上図のように、スマホからPCへと作業を継続する方法は用意されている。筆者も深く使い込んではいないのだが、Android版Microsoft Edgeは正しく動作、iOS版Microsoft Edgeはリンク送信に失敗した。
逆にPCからスマホへの継続方法を追いかけると、iOS版・Android版のMicrosoft EdgeはPC側の履歴情報を参照してWeb閲覧を継続する方法もある。ただし履歴情報のダウンロードを待つ必要があり、場合によっては移動先で「同期中……」のメッセージを目にすることも。
Microsoft Edgeは現在、デバイスに制限されないWebの閲覧体験を実現する機能開発に取り組んでいる。下図に示したのはCanaryチャネルのMicrosoft Edge(バージョン92)だが、コンテキストメニューに「ページをデバイスに送信」という項目を追加した。サブメニューには検出した他のPCが並び、どれかを選ぶと相手先PCでトースト通知を介してWebページの閲覧を継続できる。
Canary版Microsoft Edgeの「ページをデバイスに送信」は以前から機能検証を続けているが、Microsoftは新たな試みもスタート。それが「Desktop Sharing Hub」(デスクトップ共有ハブ)だ。
この機能はCanary版Microsoft Edge バージョン92.0.900.0以降で使用でき、開いているWebページを他のデバイスに送信するだけでなく、二次元コードの作成やメディアデバイスへのキャストといった共有に関する機能を取りまとめる存在だ。なお、Microsoft Edgeのアドレスバーに加わるDesktop Sharing Hubのボタンは常に呼び出せるが、他のデバイスに送信する「ページをデバイスに送信」は、任意のWebサイトを開いた状態でないと動作しない。
Microsoftとしては機能拡張というより、少々煩雑となるコンテキストメニューの操作をシンプル化し、閲覧体験の向上を目的にDesktop Sharing Hubを用意したのだろう。ただ筆者のメインスマホはiPhoneであり、各図で示したように閲覧継続先のデバイスとして列挙されることはない。これは「スマホ同期」で既定デバイスの変更やBluetooth接続の確認をしても同じだ。本来の目的である「離席時も閲覧体験を継続したい」は、サブスマホのAndroidでは実現したが、メインスマホのiPhoneや主に使用するiPad miniでは使えない状態が続いている。
とはいえ、PCとスマホの連携具合がわずかでも向上したのは確かだ。Desktop Sharing Hubに関心があれば、CanaryチャネルやDevチャネルのMicrosoft Edgeを試してみて、今後の更新を待つことをおすすめしたい。