Summit E13 Flip Evoは、MSIが初めて2-in-1を採用したビジネス向けノートPCのハイエンドモデル。製品名に"Summit(頂上)"と入っていることからも本気のほどが伺えます。この“ビジネス向けのハイエンドモデル”というセグメントでは、各社威信をかけた全力の製品展開が行われており、一例としてDell「XPS」やHP「Spectre / ELITE」、ASUS「ZenBook」、Lenovo「ThinkPad」などプレミアムなモデルが覇を競っています。MSIが送り出す「Summit E13 Flip Evo」は、それらの強者に比肩しうるでしょうか。チェックしていきましょう。
高級感あふれるプレミアムなボディ
製品には2種類のカラーバリエーションがありますが、今回はクリエイターユーザー向けにクリーンで透明感のあるデザインを採用したという「ピュアホワイト」を試用しました。ビジネスユーザー向けにはインクブラックを基調にゴールドをあしらった「インクブラック」をラインナップしており、いずれもアルミ素材をCNC切削したボディで極めて高い質感を実現しています。金属素材を採用する上でやや仕方ないところですが、コンパクトな13型モデルとしては1.35kgとやや重め。同じく金属素材で13型のDell「XPS 13」よりも重量があります。
“黄金比”アスペクト比採用の16:10ディスプレイ
ディスプレイのサイズは13.4型で、解像度はWUXGA(1,920×1,200ドット)。アスペクト比は昨今採用例が増えてきた16:10で、MSIはこれを“黄金比”としてアピールしています。同社初となる2-in-1仕様というのもポイントで、ディスプレイは360度の開閉に対応。タッチ操作をサポートする他、付属のアクティブスタイラスで4,096段階の筆圧検知を利用できます。
2-in-1仕様の採用自体はハイエンドモデルとして素晴らしいことですが、ヒンジがやや柔らかい点が気になりました。机に置くだけでグラグラ揺れるとまではいかないものの、膝において使おうとすると垂れ下がってしまうことも。ボディはしっかりした堅牢性を備えているので、ここはヒンジもそれに見合うものに改良するべきなのではと感じました。
ビジネス向けを訴求する充実のインタフェース
インタフェースにはThunderbolt 4を搭載し、映像出力・USB PD・高速なデータ転送をすべてサポートしています。この他USB 3.2 Gen1 Type-A、USB 3.2 Gen2 Type-C、ヘッドホンマイクコンボジャックを備え、周辺機器との接続性をしっかり確保。ただ、HDMI端子はなくてよかったのかな? という気もします。Type-C→Type-Aのハブはもうだいたい持っているという人も多そうなので、ビジネス用途としてはHDMI端子を優先してほしかった…というユーザーもいるかもしれません。
側面にはインタフェースの他、実用的なギミックが充実しています。左側面にはマグネットが仕込まれていてスタイラスをくっつけておくことができる他、右側面にはWebカメラのオンオフを切り替えるスイッチを搭載。ひと目見てカメラがオフになっていることを確認できます。
キーボードは十字キー以外グッド
使用感の要となるキーボードもチェック。試用機は英字キーボードということもあり、変に詰まっているキーや奇妙な配置もありません。おそらくパンタグラフ式で、ぱたぱたと快適にタイピングを行えます。白いバックライトを備え、暗いところでも快適に使えそう。タッチパッドは広々としており、レスポンスも上々です。タッチパッドの右の方にはWindows Helloに対応する指紋認証センサーを搭載し、快適にサインインを行えます。
いくつか問題点を挙げるとすれば、電源ボタンがBackspaceキーのすぐ上にあるところでしょうか。硬くもないので、設定次第では押し間違えると一発で電源が切れてしまいます。あと、十字キーの配列も微妙。「↑」キーの両側はぜひ空けておいてほしいなと思います。
ユーティリティ「MSI Center」には強力なリカバリー機能を搭載
プリインストールアプリには、さまざまな機能を備える独自ユーティリティ「MSI Center」が入っていました。これがかなり多機能で、しかも優れたUIで使いやすいです。パフォーマンスプランの選択やディスプレイの輝度調整を行える他、個人的に大注目なのがリカバリー機能。USBメモリで回復ドライブを作成できる上、さらに回復イメージ(ISOファイル)を自製できるという万能さ。最近は独自のリカバリーメディア作成機能を搭載しないPCメーカーばかりでしたが、なんとMSIがこれを復活させてくれるとは…と感動しました。
Windows 7~初期Windows 10あたりのメーカー製PCにはリカバリー機能を備える製品も数多くありましたが、Windows 10がリカバリーメディア作成機能を搭載したことで徐々に減っていった印象があります。メーカー製の独自ユーティリティでリカバリーディスクを作れるとなると、個人的には安心感に大きなアドパンテージがあるなと思いました。
メモリがしっかり16GB載ってIntel Evo Platform準拠
このあたりでスペックについてもおさらいしておきましょう。今回借用した試用機ではIntel Core i7-1185G7、LPDDR4x 16GBメモリ、M.2 NVMe 512GB SSDを搭載しています。第11世代Intel Coreプロセッサの搭載や高速なスリープ復帰、十分なバッテリーライフなどの基準をクリアし、快適なPC使用体験を保証するIntel Evo Platformに準拠しています。最大動作周波数の高いCPUや高速なメモリ採用がポイント。
特にいいなと感じたのは、この試用機の性能で下位モデルであるという点です。上位モデルでは32GBメモリや1TB SSDの搭載、Windows 10 Proのインストールなど若干の機能強化が図られていますが、処理性能に関しては似たようなもの。Summit E13 flip Evoならどれを買っても間違いないと勧められるのは、製品のバリエーション展開としてとても素晴らしいことだと思います。
というわけで、各種ベンチマークテストの結果を以下に列挙します。上述したユーティリティ「MSI Center」ではパフォーマンスプランを選択できるので、今回は「High Performance」と「Balance」で計測しました。「High Performance」を選択すると明らかにファンの最大速度が上がってうるさくなるので、そのあたりも処理性能・冷却性能に影響していると言えそうです。
いずれも順当に高い水準で、ビジネスシーンで困ることはまずないでしょう。しかしクリエイター向けとしては若干グラフィックス性能が心もとないこともあり、巨大なプロジェクトファイルを用いて制作を行うというような用途には向かないかもしれません。
パフォーマンスプランを各種ベンチマークテストでみた印象では、グラフィックス性能にはあまり影響がない一方で、CPU性能にはやや大きな差があるように思えます。CINEBENCHやSpeedometerでは顕著で、2割を超える大きな性能差がありました。
ファン音に関して言及すると、「Balance」ではベンチマーク中でも至って静か。やや甲高めの音ですが、不快なものではありません。一方で最大性能を引き出す「High Performance」では明らかにファン速度が高まり、なにか重い動作をしているんだなということがわかるレベルになります。
MSIの快作ビジネス向けフラッグシップノートPC
“Summit(頂上、頂点)”と銘打ってMSIが投入したビジネス/クリエイター向けノートPC「Summit E13 flip Evo」。各社ハイエンドモデルがひしめく市場に真っ向から挑戦し、優れた高級感としっかりした性能で見事比肩しうる製品になっていると感じます。
さらに、実はPCショップアークでBTOも行える点がポイント。OSをWindows 10 Home / Proから選択でき、SSDは512GB~2TBまでSamsungやWD、Crucialなど各種ブランドから選べます。これで実売169,800円からとなれば、かなりコストパフォーマンスに優れた製品に仕上がってると言えるのではないでしょうか。