「木で水滴を掘りました」――普段見慣れたような写真と何気ないツイート内容ですが、思わず二度見、三度見したくなる、福田 亨さん(@TF_crafts)の彫刻作品が話題になっています。
木で水滴を彫りました
#木彫 #木彫り(@TF_craftsより引用)
この写真、うっかり木の上に水をこぼしてしまったように見えますが、投稿内容は「木で水滴を彫った」とのこと。え、どういうことですか……?
一瞬理解が追い付かないこの投稿内容、文字通り「木の板」に「水滴」を「彫っている」作品だそう。筆者と同様に、「木で水滴を彫りました……木で水滴を彫りました……???」「えーと、何言ってんだかさっぱりわからないwww」と、理解が追い付かないユーザーが多数。
写真を拡大してみると、本物の板に水滴が付いた際の反射とは少し異なる様子です。ツヤと立体感がリアルすぎるこの作品、「みんな技術に目を奪われがちだが、ちょっと待ってほしい、そもそも『木彫りで水滴を掘ろう』という発想がすでに異次元」「技術も凄いがこれをやってみようという発想がすごい」と、その着想に驚いたというコメントも寄せられています。
作家・福田亨さん聞いてみた
その発想と技術、どちらも凄いこの作品、投稿者であり作者の福田亨さんにお話を伺いました。
――本物かと見紛うばかりのリアルさですが、その後に投稿された写真を見て「本当に木を彫って作ったものだ」とやっと理解できました。その投稿が、こちらです。
雑な作業場でお恥ずかしいですが、
周りの板を全体的に1.5mm程掘り下げて、水の部分を浮き彫りにしています。平面作りに一生懸命になりすぎて加工中の様子がないのですが、大工鑿と彫刻刀でおおよその平面を作っています。(@TF_craftsより引用)
――この時点ではまだツヤツヤとした様子はありませんが、この後どのような工程を行って、水滴のような表現をされたのでしょうか?
木工の伝統工芸の技法で昔から行われていた"蝋引き仕上げ"という方法でツヤを出しています。布を蝋にこすりつけた後、その布で磨いていくのを何度も繰り返す技法です。
――伝統工芸の技法なのですね。福田さんは、天然の木材を用いて絵や図柄を表現する「木象嵌」という工芸技法を立体彫刻に応用した「立体木象嵌」を考案されているとのことですが、どのような技法なのでしょうか。
「立体木象嵌」は、私が勝手に呼んでいる俗称なのですが、本来、平面の技法である木象嵌を、厚みのある板で三次元的に行い、彫刻作品に応用したものです。装飾だった本来の技法を彫刻の分野に応用することで、木目や色味を活かした彫刻作品になっています。
――「立体木象嵌」の魅力はどういったところにあるのでしょうか。木で作ったとは思えないほど、繊細でカラフルな作品ばかりです。
実は、着色は一切しておりません。そのため見る角度や距離で表情が変わるところが魅力です。木は繊維質なので、着彩では出せない奥行きのある色彩を放ちます。
その発想や技術だけではなく、自然の木材がこんなに鮮やかな色をしているのか、という驚きもある「立体木象嵌」。お話を伺ったところ、Twitterに投稿された水滴の作品はまだ未完成で、このあと蝶々が水滴から水を吸っている作品になるそう。
伝統工芸をベースに、新たな表現を模索する福田さんの「立体木象嵌」。今回の作品の完成はもちろんのこと、今後どのような作品を手掛けられるのか、気になる方はチェックしてみてはいかがでしょうか。
木で水滴を彫りました#木彫 #木彫り pic.twitter.com/jxxV2gGRtW
— FUKUDA Toru 福田 亨 (@TF_crafts) May 26, 2021
雑な作業場でお恥ずかしいですが、
— FUKUDA Toru 福田 亨 (@TF_crafts) May 26, 2021
周りの板を全体的に1.5mm程掘り下げて、水の部分を浮き彫りにしています。
平面作りに一生懸命になりすぎて加工中の様子がないのですが、大工鑿と彫刻刀でおおよその平面を作っています。 pic.twitter.com/Vv1YeByMy8
木象嵌という伝統工芸技法を用いた彫刻作品を作っています。
— FUKUDA Toru 福田 亨 (@TF_crafts) April 3, 2018
着色は一切せずに、天然木の色や木目で表現します。
蝶をメインに、生き物の生態を切り取ります。
#4月なのでフォロワーさんに自己紹介しようぜ#立体木象嵌 pic.twitter.com/r4XrzxFGBa