久保九段の四間飛車に対し、機敏な端攻めでリードを奪って快勝

第34期竜王戦ランキング戦1組(主催:読売新聞社)の決勝、▲久保利明九段-△永瀬拓矢王座戦が5月27日に東京・将棋会館で行われました。結果は110手で永瀬王座が勝利を収めました。


第34期竜王戦ランキング戦1組トーナメント表

すでに決勝トーナメント進出は決めている両者ではありますが、勝つと負けるとでは大きな違いがあります。賞金額が違うのもさることながら、決勝トーナメントに出場する際のポジションが変わってくるのです。1組優勝者は1勝すれば挑決三番勝負に進出できるのに対し、準優勝では2勝が必要になります。

今期、永瀬王座は澤田真吾七段、羽生善治九段、稲葉陽八段を破って決勝に進出しました。一方の久保九段は三浦弘行九段、木村一基九段、山崎隆之八段を破っています。

振り駒で先手番になった久保九段は四間飛車を採用。▲7五歩、▲6五歩と相次いで位を取る「立石流」という作戦に構えます。立石流とはアマチュアの立石勝己さんが考案した作戦で、過去に升田幸三賞特別賞も受賞しています。

対する永瀬王座は飛車先の歩交換から浮き飛車に構え、自玉の囲いもそこそこに、△7四歩と突っかけていきました。先手の2つの位が安定してしまうと、身動きがとりにくくなるということでしょう。7五歩を排除したことにより、後手は右桂を活用することができました。

38手目、永瀬王座は美濃囲いの弱点である、端攻めを敢行しました。この端攻めが機敏で、永瀬王座がリードを奪ったようです。

懸命に防戦する久保九段に対し、永瀬王座は守りの銀も繰り出して攻めの手をゆるめません。桂・香が厳しく久保陣に突き刺さっていき、さらに優位を拡大していきました。

久保九段も一瞬のスキを突いて反撃しますが、永瀬王座の落ち着いた応対により、矛先が永瀬玉に届くことはありませんでした。最後は永瀬王座が久保玉を受けなしに追い込んで、勝利を収めました。

この勝利で永瀬王座は1組初優勝。決勝トーナメントにもスーパーシードで臨むことになります。

1組初優勝を達成した永瀬王座(写真は王将戦七番勝負第4局のもの)
1組初優勝を達成した永瀬王座(写真は王将戦七番勝負第4局のもの)