iDeCo(イデコ)やつみたてNISA、純金積立などの、積立投資と言われるものは「ドル・コスト平均法」と言われる方法で投資を行っています。このドル・コスト平均法とは、いったいどのような手法なのかを見ていきましょう。
ドル・コスト平均法とは
ドル・コスト平均法は、株式や投資信託のように、価格が変動する商品について、一度にまとめて購入するのではなく、例えば毎月1万円ずつといった、一定額に分けて定期的に買う方法のことをいいます。
例えば、投資信託を毎月一定額で購入する場合、商品の価格(基準価額)が高い時には口数は少なく、価格が安い時には多くの口数を買うことになります。これにより、買い付けの単価を平準化することができます。
ドル・コスト平均法と一括投資との比較
ドル・コスト平均法(定額購入方法)を、一括投資と比較して具体例で見てみましょう。
【前提条件】
・毎月2万円で6ヵ月間、積立投資を行う(ドル・コスト平均法活用)・・・①
・初月にまとめて12万円で一括投資を行う・・・②
・価格は、5月1,000円、6月900円、7月800円、8月700円、9月800円、10月900円とする。
・投資金額は、積立投資も一括投資もいずれも合計12万円
5月から8月まで価格が継続して下がり、その後9月、10月で上昇した場合の両者の比較ですが、10月時点の評価額は以下の通りとなります。
・積立投資:12万8,714円(143口×900円)、平均購入単価:約839円
・一括投資:10万8,000円(120口×900円)、平均購入単価:約1,000円
積立投資のほうが、一括投資より評価額が高く、積立投資では8,714円の含み益です。一方、一括投資では1万2,000円の含み損です。
ドル・コスト平均法は、購入タイミングを分散し、購入単価を平準化するところに最大の特徴がありますが、この例で利益が得られたのは、平均購入単価が低く抑えられたためです。
ドル・コスト平均法のメリット
ドル・コスト平均法を用いることで、どんなメリットが得られるでしょうか。具体的に見ていきましょう。
まとまったお金がなくても少額から始められる
ネット系の金融機関などでは、積立投資は100円など少額からでも始められるところがあります。
時間分散により、リスクを軽減することができる
月に1回などの間隔で定期的に投資していくので、投資のタイミングが分散でき、時間分散になります。時間分散ができると、高い時に買ってしまったとしても、また別のタイミングでは安く買うこともできて、長い目でみれば購入価格を平準化することが期待できます。
投資を始めるタイミングに悩まなくていい
投資するのにいつがいいタイミングなのかと、投資を始めるタイミングを狙う必要がありません。また、機械的に投資が続けられます。
ドル・コスト平均法のデメリット
一方で、ドルコスト平均法は万能な投資手法ではありません。もちろん、デメリットもあります。
長期投資をする時間がない人には向かない
ドル・コスト平均法は、一定額を定期的に購入して購入価格を平準化する方法なので、長期分散投資のメリットの裏返しとも言えますが、そもそも定期的な収入が継続的になかったり、目標の金額を積み立てていくまでに時間がなかったりする人には向きません。
売却時に価格が上昇していなければ、元本割れのリスクがある
先ほどの例のような、価格が一旦下落しても元に戻る、もしくは上昇するような相場ではドル・コスト平均法の方が良いという結果になりましたが、相場が下落し続けるなどの場合には元本割れをしてしまうリスクもあります。
ドル・コスト平均法で注意したいポイント
ドル・コスト平均法が苦手とするケースも確認しておきましょう。
【前提条件】
・毎月2万円で6ヵ月間、積立投資を行う(ドル・コスト平均法活用)・・・③
・初月にまとめて12万円で一括投資を行う・・・④
・価格は、5月700円、6月800円、7月900円、8月1,000円、9月900円、10月800円とする。
・投資金額は積立投資も一括投資もいずれも合計12万円
5月から8月まで継続的に価格が上がり、その後9月、10月で下落した場合の両者の比較です。10月時点の評価額は以下の通りとなります。
・積立投資:11万4,413円(143口×800円)、平均購入単価:約839円
・一括投資:13万7,143円(171.4口×800円)、平均購入単価:約700円
このように、価格が一旦上がっても、後ろのほうで下がるようなケースでは、一括投資のほうが、ドル・コスト平均法より有利な場合があります。
投資を開始した時点よりも価格が高くなったとしても、それ以上に平均購入単価が高くなると、元本割れを起こすことになります。
ドル・コスト平均法が万能でないことは、将来資産を売却するタイミングなどを検討する際にとても重要なことなので知っておくとよいでしょう。
ドル・コスト平均法は長期に投資ができる人向け
投資タイミングに悩む必要のないドル・コスト平均法による積立投資は、まとまったお金がなくても、無理なく少額から気軽に始められる資産形成のための有効な手法です。
そのため、特に若いうちからの老後資金準備のような、長期資産形成には向いている投資法と言えるでしょう。