近年、ビジネスの世界でディープラーニングへの注目度が高まっています。本記事ではディープラーニングの意味や基本的な仕組み、メリット・デメリットなどについてご紹介します。
ディープラーニングとは何か
ディープラーニングは近年、さまざまな分野で活用されるようになっています。
これまで「思考」や「学習」は人間が行うものとして考えられてきました。しかし、人工知能の研究・開発が急速に進んだことによって、状況は一変しました。すでに人工知能はさまざまなシーンで当たり前に使用されています。
ディープラーニングとはそんな人工知能の教育手法のひとつです。それではくわしく掘り下げていきましょう。
ディープラーニングとは機械学習の一部
ディープラーニング(Deep Learning)を日本語に直訳すると「深層学習」となります。この場合の深層とは人間などの脳神経回路をモデルとして、アルゴリズムを多層化したDNN(ディープニュートラルネットワーク)を用いたコンピュータへの学習の手法です。
少し専門用語が多いのでわかりにくいかもしれませんが、これまでコンピュータへの機械学習は人間がデータをすべて入力し、指示を出す必要がありました。それに対して、ディープラーニングでは大量のデータを取り込むことによって何層もの処理を行い、コンピュータ自体が課題を解決に導くのです。
ディープラーニングの基本的な仕組み
ディープラーニングの処理フェーズは、学習処理と推論処理に分けられます。学習処理は大量のデータを取り込んで学習を行うというフェーズです。推論処理では学習モデルを使用して推論を行います。
企業などであらかじめ学習処理が完了したものを導入するケースもあります。学習処理には大量のデータと、これらを処理するための高いコンピュータリソースが求められます。そのため、導入時には自社で学習処理フェーズを行うのかをまず検討する必要があります。
ディープラーニングと人工知能・機械学習の違い
ディープラーニングと混同されてしまいがちな用語として人工知能や機械学習が挙げられます。これらの用語はまったく別のものを指すというわけではなく、関連しています。
ディープラーニングとは機械学習の技術のひとつです。そして機械学習は人工知能の要素技術のひとつにあたります。わかりやすく言えば、機械学習もディープラーニングも人工知能に使用される技術なのです。
ディープラーニングならではの特徴
ディープラーニングならではの特徴として、より複雑な処理を人工知能に行わせることができます。2016年にはディープラーニングを使用した人工知能である「AlphaGo」という囲碁プログラムが、世界トップレベルのプロ棋士に勝利しています。
囲碁には非常に複雑な思考が必要となることから、従来の人工知能ではプロ棋士に勝利するのは困難だと考えられていました。しかし、ディープラーニングという技術によって、複雑な思考においても人間を上回る人工知能が生み出せるようになったと言えます。
ディープラーニングのメリット・デメリット
ディープラーニングによって人工知能の可能性は大きく広がりました。一見するとメリットばかりのように思えるかもしれませんが、デメリットも同時に存在します。続いてはディープラーニングのメリットとデメリットについてご紹介します。
■ディープラーニングのメリット
ディープラーニングの最大のメリットは高度で柔軟な処理を行うことができるという点です。従来の機械学習においては、人間がデータにモデルを当てはめるという形で処理を行ってきました。そのため、特定の処理においては高い性能を発揮しますが、柔軟性は高いとは言えません。
しかし、ディープラーニングでは継続的改善が可能なので、最初から複雑な処理が可能なのみでなく情報のパターンの変化にも対応可能です。つまり、データを取り込むことによって単に情報量が増えるのみでなく、処理能力も成長していくのです。
認識精度の高さもディープラーニングのメリットです。画像や映像などの認識においては人間の認識精度を超えるケースもあるほどです。
■ディープラーニングのデメリット
ディープラーニングのデメリットは、教育のために非常に多くのデータとコンピュータリソース、そして時間がかかるという点です。
より複雑で高度な処理を行わせるためには、良質で大量のデータが必要となります。そして、データの量が多ければそれだけ求められるコンピュータリソースも高くなり、時間も必要となるのです。
学習方向性のコントロールが難しいという点もディープラーニングのデメリットであり、大きな課題でもあります。従来の機械学習であればすべて人間側でコントロールできます。しかし、ディープラーニングでは学習方向性がまったく予想外の方向へと進んでいく可能性があります。
そのコントロールは読み込ませるデータの種類によって行うことになりますが、大量のデータを慎重に選択するという作業が発生してしまいます。
また、ディープラーニングでは人工知能が生み出したルールにもとづいて結果を導き出します。その結果のみが必要なのであれば問題はありませんが、その課程を人間側が理解するのは困難です。処理の内容がブラックボックス化してしまうため、正しく機能していることの証明も難しくなります。
ディープラーニングの活用方法
ディープラーニングはすでにさまざまなシーンで活用されるようになっています。最後に、具体的なディープラーニングの活用方法をいくつかピックアップしてご紹介します。
■画像や音声認識
先ほどもご紹介していますが、画像や映像、音声などの認識精度の高さはディープラーニングによるモデルの特徴です。文字や人の顔といった特徴などを認識して検出することも可能です。この認識精度は、顔認証や自動運転、音声入力などに活用されています。
■言語的処理
複雑な自然言語処理は従来の機械学習の苦手な分野のひとつでした。しかし、ディープラーニングのモデルであれば人間が日常的に使用する書き言葉や話し言葉などの認識や処理も可能です。こちらはコールセンターなどの自動問い合わせ対応や、文書の要約、機械翻訳などに使用されています。
■異常の検知
前述のとおり、ディープラーニングのモデルは高い認識精度を誇ります。そのため、異常の検知にも活用されています。また、各種機器などに取り付けられたセンサーより集められたデータから、異常が発生する前にその兆候などを早い段階で発見可能です。
■データの整理・分析
従来の人工知能も得意としていた分野ですが、ディープラーニングも当然データの整理や分析などを高い精度で行うことができます。より柔軟な処理が可能となったことによって、より多くの種類のデータの整理や、より高度な分析も行えます。
ディープラーニングでビジネスを新たなステージへ
人工知能はさまざまな分野で使用されるようになっています。大規模なシステムのみでなく、個人が使用するスマートフォンやPCといった端末などにも人工知能が導入されており、身近な存在となりました。
元から有能であった人工知能にディープラーニングを用いることによって、さらに可能性が広がりました。まだまだ課題も少なくありません。しかしディープラーニングは、ビジネスを新たなステージへと導く発展性に満ちた技術と言えるでしょう。