Acerは5月27日、クリエイター向けPCに今後の搭載を予定しているという、SpatialLabsが開発した裸眼立体視技術を発表した。
SpatialLabsの裸眼立体視技術は、ディスプレイ上部に搭載されるアイトラッキングカメラ(左右で計2個)と、4K液晶パネルの表面に貼り付けられた液晶レンチキュラーレンズを組み合わせることで実現。この仕組みは従来の裸眼立体視ディスプレイと同じだが、SpatialLabsの裸眼立体視技術は従来の欠点を解消している点が大きな特徴となる。
従来のシステムでは、特定の場所でしか正常に裸眼立体視ができないという問題があった。しかしSpatialLabsの技術では、ディスプレイ上部に搭載した2つのアイトラッキングカメラによって画面を見ている人の目や頭の位置を検出し、表示映像をリアルタイムに調整。視点が移動しても常に安定した立体視を実現する。
また、従来のシステムはディスプレイ表面にレンチキュラーレンズが貼り付けられていることで、2D表示で使うときに表示がにじむなどの問題があった。対してSpatialLabsの技術は、レンズの効果をオン・オフ制御できる液晶レンチキュラーレンズを採用。2D表示と3D表示の切り替えをサポートし、2D表示モードでも一般的なディスプレイと同様の視認性を確保できるようになっている。
合わせて、様々な立体視体験を提供する専用ソフトウェアも用意。
「SpatialLabs Model Viewer」では、主要な3Dアプリで製作した3Dモデルデータを読み込むだけで、そのデータを立体視で確認できる。
「PiStage for Maya」は、3D CGソフト「Maya」向けのプラグイン。Mayaで制作中の3Dモデルをリアルタイムで立体視する。修正をリアルタイムで反映しながら立体視が可能なため、2Dで制作する場合より3Dモデルの形状をリアルに確認でき、生産性が高められるとしている。
そのほか、3D CGソフト「Blender」で制作した3Dモデルのデータを読み込んで立体視する「SpatialLabs Go」や、既存の立体視動画を再生する「SpatialLabs Player」などのソフトを用意する。
思わずのけぞるリアリティ
今回、SpatialLabs技術を搭載するプロトタイプのノートPCでその効果を体験したが、確かにこれまでにあった裸眼立体視ディスプレイの問題点がほぼ解消されており、かなり快適な裸眼立体視だった。視点が移動しても常に自然な立体視が可能な点や、2D表示になっても小さな文字などがにじまずしっかり視認できる点は大きな魅力。なにより、いちいちHMD(ヘッドマウントディスプレイ)などを装着せず手軽に立体視が行える部分は、これまでの裸眼立体視に対する印象を大きく変えるものと感じた。
以下に掲載している動画は、立体視を行っている場面のディスプレイを撮影したものだ。さすがにこの映像では表示している3Dモデルが飛び出しているようには見えないが、実際には表示している3Dモデルがキーボードの真上あたりに存在するイメージだ。拡大縮小したりぐるぐる回転させたりすることで、3Dモデルの形状を立体的に確認できる。
思わず手を伸ばして触れようとしてしまう現実感。野球のキャッチャー視点の映像を立体視で見ると、ピッチャーが投げたボールが自分に向かってきて本当にのけぞってしまう。
また、Unreal Engineベースの開発環境では、以下の動画のように、見ている人が視点を動かすと、その動きに合わせて表示が変化する表示も可能。視点を移動させるだけで物体をまわり込んで見る、といったことができるわけだ。こうしたリアルな立体視は、クリエイターにとってかなり魅力的ではないだろうか。
このSpatialLabsの裸眼立体視技術は、今のところは一般ユーザー向けではなく、3D映像クリエイターなどの開発者をターゲットとしている。実際の製品としては、Acerのクリエイター向けノートPC「Concept D」シリーズに搭載される予定だ。
今回は技術発表となっており、具体的な搭載製品は発表されなかった。搭載PCのスペックとしては、CPUがCore i7 Hプロセッサ以上、ディスクリートCPUはGeForce RTX 30シリーズが必要になるという。
なお、3カ月間無償でSpatialLabsプロトタイプPCを利用して、様々な製作が行えるディベロッパープログラムが実施される。2021年6月30日までの期間でクリエイターを募集し、選考を経て選ばれたクリエイターに対し、SpatialLabsプロトタイプPCや、Unreal Engineベースの開発環境などを提供する。募集地域に制限はなく、日本からの応募も可能だ。