誰もが天動説を疑っていなかった時代に、太陽を中心に地球が回っているという地動説を初めて提唱した天文学者・コペルニクス。そんな彼の名前を使って表現された「コペルニクス的転回」という言葉をご存知でしょうか。
本記事では、コペルニクス的転回とはどういう意味なのか、例文とともにわかりやすく解説いたします。さらに、コペルニクスが残した名言も合わせて紹介するので、コペルニクスの考えに触れてみてください。
コペルニクスはどんな人物か
まず、コペルニクスがいったいどんな人物かについて解説していきます。
■天才と言われ続けた天文学者
子どもの頃に英才教育を受けたコペルニクスは、当時から天才として名を知られていました。コペルニクスは天文学者として特に有名ですが、他にも医学、法学、数学、占星学など、さまざまな学問を習得していました。
■世界で初めて「地動説」を提唱
コペルニクスに関して最も有名なのは、地動説を提唱したことです。当時の常識は、地球の周りを天体が回っているという天動説であり、聖書をはじめさまざまな書物で天動説が正しいとされていました。
そんななかコペルニクスは「天動説の考えではあまりにも惑星の動きが不自然である」ということに目を付けました。発想を逆転し、地球が回っているという地動説で考えてみたところ、すべての惑星の動きが自然なものになったのです。
しかし地動説の考えは、当時の常識とあまりにも異なるものだったのですぐに公にはしませんでした。コペルニクスは死の間際に地動説の本を出版し、地動説が世間に知られることになりました。
■「地動説」はガリレオへと引き継がれる
コペルニクスによって提唱された地動説ですが、当時はなかなか受け入れられませんでした。理由は、当時の技術では地動説の証拠を見つけることが難しかったからです。しかし地動説の提唱は、のちの科学界に大きな影響を与えます。
コペルニクスが亡くなった後、望遠鏡が発明されました。その望遠鏡によって、ガリレオ・ガリレイが地動説の証拠をつかみます。こうして地動説の証明はガリレオに引き継がれることになります。
コペルニクス的転回の意味とは
このコペルニクスの名を用い、18世紀ドイツの哲学者・カントが作ったのが「コペルニクス的転回」という表現です。ここからは、コペルニクス的転回という言葉の意味について解説していきます。
意味(1) 常識を覆すような考え方
コペルニクス的転回とは、常識を覆すような考え方のことを指します。コペルニクスはまさに、天動説の時代に地動説を発表したという点で常識を覆し、世界に大きな変化をもたらしました。
意味(2) 認識転回=対象が認識に依存する
コペルニクス的転回には、意味(1)とは別の意味もあります。それは「認識が対象に依存するのではなく、対象が認識に依存する」という意味です。
わかりやすく説明すると、例えば目の前にリンゴがあるとします。私たちはリンゴを見たり、食べたりしてリンゴと認識しています。しかしこの認識は、人間だからできていることです。他の動物の場合、この物体をリンゴとは認識していない可能性があります。
このようなことから、対象のものを認識できるかどうかは、認知能力の範囲内に依存していると言うことができます。つまり、「リンゴが目の前にあるから認識するではなく、「リンゴと判断できる認知能力があるからリンゴと判断できる(認識に対象が従う)」という逆の発想をしているのです。このような対象が認識に従うという逆の発想のことを「コペルニクス的転回」と呼びます。
コペルニクス的転回の例文
上記で説明したコペルニクス的転回の意味(1)は、現代でもよく使われています。ここではコペルニクス的転回という言葉をどういった場面で使えるのか、例文を紹介します。
■コペルニクス的転回の例1
アイスクリームに醤油をかけるという食べ方は、自分の味覚にコペルニクス的転回をもたらした。
■コペルニクス的転回の例2
この数学の問題を解決するには、コペルニクス的転回が必要だ。
■コペルニクス的転回の例3
ほどよく脂がのって清潔な冬のワカサギは絶妙に美味しい。しかし今日、このワカサギについてコペルニクス的転回を遂げた。今日のレストランで食べたワカサギは脂が美味しくなく、まずかった。
このようにコペルニクス的転回は、常識を覆し、発想や考え方が根本的に変わったときに使う言葉です。実際に仕事・ビジネスの場で、考えが凝り固まってしまったときには「コペルニクス的転回」が必要になるかもしれません。何かに行き詰まったら、ぜひコペルニクス的転回という言葉を思い出してみてください。
コペルニクスの名言集
さまざまな学問を習得したコペルニクスは、数多くの名言を残しています。ここでは、深く考えさせられるようなコペルニクスの名言をご紹介します。
■名言1
思弁ばかりが十分で、理性が不十分ではあってはならない
■名言2
万能の神が創った世界は、疑いようもなく、かくも広大なのである
■名言3
自分が何を知っているかを知り、自分が何を知らないかを知っていないということを知ること。それこそが真の真実です
■名言4
哲学者の考えは常人の判断に左右されないことを自覚している。なぜなら、神によって人間の理性に許される範囲で、真実を追い求めることが哲学者の試みだからです
■名言5
私が言っていることは今は意味のわからないことかもしれない。しかし時期が来ればやがて理解されるものになるでしょう
■名言6
真理と正義に反する意見は避けるべきだと信じます
■名言7
数学は数学者のために書かれている
■名言8
太陽は宇宙の中心であって不動であり、太陽の運動と見えるものはすべて実は地球の運動である
■名言9
地球の可動性を禁じるものは、何もない
■名言10
学者の仕事は、神に許される範囲で真理を探究することだ
■名言11
宇宙は最高に秩序のある創造主によって私たちのために作られました
■名言12
私は自分自身の意見にそれほど興味を持たないので、他の人が自分の意見にどう思うかなんて気にしません
現代でもいかせるコペルニクス的転回の考え方
本記事では、コペルニクスが成し遂げたことやコペルニクス的転回という言葉の意味、そして彼が残した名言について紹介しました。
当たり前と信じられてきた事柄を疑い、新しい考えを生み出す姿から、現代の私たちも学べることはたくさんあります。特に「コペルニクス的転回」という概念は、今後の仕事や生活の中で必要になってくるかもしれません。自由な発想で常識をくつがえし、世界を広げていきましょう。