アップルが、コミカルな内容のテレビCMを公開して話題になっています。「iPhoneのプライバシー|追跡」と名付けられたこのCM、iOS 14.5で新たに搭載された「App Tracking Transparency」(ATT、アプリのトラッキングの透明性)と呼ばれる機能の効果を擬人的に表現したもの。「アプリにアクティビティの追跡を許可しないようにすれば、あなたのプライバシーは守られます」という内容を、iPhoneユーザーに分かりやすくアピールしています。アップルのプライバシーについての取り組みや、ATTの設定方法について、改めておさらいしたいと思います。

  • iOS 14.5で新たに搭載したプライバシー保護機能「App Tracking Transparency」(ATT)の重要性をコミカルに伝えるCMが登場した

    iOS 14.5で新たに搭載されたプライバシー保護機能「App Tracking Transparency」(ATT)の重要性をコミカルに伝える新しいCMが登場した

アップルが公開した新しいテレビCM「iPhoneのプライバシー|追跡」。アプリのトラッキングによる影響を、何気ない日常を過ごしているだけで自身を監視している人がどんどん増える様子に例えている

「個人情報の“ダダ漏れ”は許さない」「ユーザーの個人情報でお金儲けをするのは許されない」と、プライバシー重視の取り組みを続けていることで知られるアップル。この姿勢は、ここ数年で特に顕著になった印象がありますが、実はスティーブ・ジョブズ氏の時代からアップル製品のユーザーのプライバシーを守ることに注力していました。ジョブズ氏が「アップルは『もうやめてくれ』と言われるまで、その個人データを何に利用しようとしているのか、しつこく尋ねます」と語った2010年のD8カンファレンスの講演は有名です。

直近では、アプリがどのような個人情報を取得するか、どのような目的で情報を利用するかといったプライバシーの方針を記載した「プライバシーラベル」を2020年末にApp Store内に追加しています。

この春にリリースしたiOS 14.5で追加されたATTは、ユーザーのプライバシーを保護する機能の1つ。さまざまなWebサイトを表示していると、別のアプリやWebサイトでも先に見ていた内容に関連するWeb広告が表示されて驚いた経験があると思います。そのようなアクティビティデータの追跡がコントロールされず常に有効になっていると、個人情報でビジネスをしている会社にデータがどんどん渡ってしまい、プライバシーが守られなくなってしまいます。

それを防ぐべく、さまざまなアプリに対してアクティビティデータの追跡を許可するかどうか設定できるようにするのがATTです。近ごろ、Facebookなど特定のアプリを起動した際に「iOS 14.5を使用しています」という表示に続き、「他社のAppやWebサイトを横断してあなたのアクティビティを追跡することを許可しますか?」と許可を求めるダイアログが登場することがあります。これがATTです。許可するか、それとも許可しないかは、ATTの画面に表示される利用目的などの情報をもとに、iPhoneを利用しているユーザーが自由に設定できます。あくまでユーザー自身の判断に任せ、一方的に不許可にしていないところに、アップルがWeb広告そのものを否定しているわけではない姿勢がうかがえます。

  • アクティビティデータのトラッキングを利用しているアプリの起動時に現れるATTの設定画面。トラッキングを許可するかどうかは、ユーザーが自由に判断できる

  • テレビCMでは、ATTをアプリごとにどう設定するかが大事なことをアピールしている

「無料サービスを継続するにはユーザーに最適な広告を配信することが必要です」など、アクティビティデータの利用目的を明確に記載しているアプリもあり、その目的に納得できるならば追跡を許可しても問題ありません。

もちろん、利用目的の記載があやふやで納得できない場合は、追跡を不許可にしておくのも手です。さもないと、冒頭で紹介したテレビCMのように、いつでもどこでもあなたの行動を監視されるに等しい状況になりかねませんから…。