プラトンは西洋哲学の基礎を作ったとして有名な人物です。彼が提唱したイデア論や著書『国家』は、現代哲学にも大きな影響を与えています。しかし、イデア論や『国家』の内容は、非常に専門的な用語や、難解な概念が多く並べられていて、理解することは困難とされています。
本記事ではそんなプラトンの残した奥深い名言を紹介。人物像や思想もわかりやすく、かみ砕いて解説します。プラトンの言葉や考え方には、現代の私たちにも役立つものが多くあるはずですよ。
哲学者プラトンの名言集 - 愛や魂、欲望、人生の格言
プラトン(紀元前427年ごろ~紀元前347年)は古代ギリシャの哲学者であり、事物の本質、模範を表す「イデア論」が有名です。
プラトンはソクラテスの弟子であり、そして後に「万学の祖」と呼ばれるアリストテレスの師となります。
ここでは現代の私たちの生活でも生かせるような、プラトンのさまざまな名言をご紹介します。
名言1
賢者は、話すべきことがあるから口を開く。愚者は、話さずにいられないから口を開く
名言2
自分に打ち勝つことが、もっとも偉大な勝利である
名言3
親切にしなさい。あなたが会う人はみんな、厳しい戦いをしているのだから
名言4
人間の最も基本的な分類として、「知を愛する人」「勝利を愛する人」「利得を愛する人」という3つの種類がある
名言5
愛に触れると、誰でも詩人になる
名言6
嫉妬深い人間は、自らの真実の徳をめざして努力するよりも、人間を中傷するのが相手を凌駕する道だと考える
名言7
あなたの悲哀がいかに大きくても、世間の同情を乞おうとしてはならない。なぜなら、同情の中には軽蔑の念が含まれているからだ
名言8
石工達曰く、小さな石なくして大きな石だけで石垣は建てられない
プラトンとはどんな人?
ここでは、プラトンがどんな人物なのかを解説します。
ソクラテスの弟子であり、アリストテレスの師
プラトンは、古代ギリシャ時代のソクラテスの弟子です。プラトンはソクラテスのもとで長年にわたって哲学を学び、「美」や「善」とは何かについて考え続けました。
またプラトンは、「アカデメイア」と呼ばれる大学を歴史上で初めて設立しました。後に「万学の祖」と呼ばれるアリストテレスも17歳の頃にこのアカデメイアに入学し、プラトンが死去するまでの20年間在籍します。
アカデメイアはその場所で約900年にわたり続きました。
政治と哲学をつなげたプラトン
プラトンは政治と哲学をつなげた人物として有名です。プラトンは政治に興味を持っていたからこそ、哲学の道に進んだと言われています。
政治と哲学について述べた著書『国家』では、「哲学者が国政を担うか、政治家が哲学者になるか、このどちらかで初めて人間は正しいあり方・生き方を実現できる」ということを述べています。プラトンは、哲学こそこの世で最も大切な考え方・学問であるとしていました。
プラトンのイデア論とは何? その思想をわかりやすく解説
イデア論はプラトンが最も重要としていた考え方です。皆さんもイデアという言葉を一度は聞いた経験があるのではないでしょうか? ここでは、現代でも有名なイデア論について、わかりやすく解説していきます。
本来のイデアの意味とは「形のあるもの」
そもそものイデアとは、ギリシャ語で「見る・知る」という意味の「idein」の派生語であり、「見えているもの・姿・形」を意味します。
プラトン哲学における「イデア」とは
ただしプラトン哲学における「イデア」とは「知覚を超越した場所に存在し、直接には知覚できずに想起によってのみ認識し得る、抽象化された純粋な理念のこと。そして、対象を対象たらしめている根拠であり本質、真の存在」という意味合いとなってきます。
理念として個々人が思い描いた、理想的な「それそのもの」という理念・観念・概念をイデアと呼ぶということです。非常に難解な考えなので、もう少しわかりやすくみていきましょう。
例えば、私たちが「完全な円」を描くとします。コンパスなどの道具を用いて実際にはきちんと円を描いたつもりでも、細かく見ていくと線がガタガタになっていたり、少し曲がっていたりするところも必ずあるはずです。
すべての円がそのように完璧ではないとすれば、私たちは「完全な円」を直接的に知覚することはできません。このときの真に「完全な円」こそがイデアと言えます。私たちは、全く知らないはずの「完全な円」というものを思い浮かべながら、それに似せて描くことができるのです。
プラトンが考える「イデア界」とは
プラトンは人間があるものを思い浮かべて描けるという点から「人は完全な事柄を無意識のうちに知っている」と考え、頭の中に浮かぶ「完全なもの」をイデアと呼びました。そしてイデアだけでできた世界「イデア界」が頭の中にあるとしています。
また物だけでなく、正義や美といった概念にもイデアがあるとし、善のイデアこそが最高のイデアだとしています。プラトンは無意識の領域に完全なるイデア界が存在すると結論づけました。
プラトンの著作『国家』とは
プラトンの著書として有名な『国家』は、プラトンの政治の考え方や哲学についての考えが述べられています。今回はその中でも、プラトンの政治や人間への考え方がわかる部分をピックアップして紹介していきます。
『国家』の話の軸は「正義」について
『国家』の副題が「正義について」とされているように、話の軸は「正義」です。「国家・政治における正義とは何か」「人間における正義とは何か」について詳しく述べられています。この本は、プラトンの師匠であるソクラテスがさまざまな人と議論しながら話が進んでいくというスタイルです。
完全な国家には4つの徳が必要
プラトンは『国家』の中で、完全な国家のためには4つの徳が必要であると述べました。4つの徳は以下の通りです。
(1)知恵:国内の問題や他国との関係をどのように対処するかを考慮するための知識
(2)勇気:恐ろしいものが何なのかについて、法律と教育によって形成された考え方の保持
(3)節制:さまざまな快楽や欲望を制御する一定の秩序
(4)正義:(1)の知恵を政治家や支配階級の人々へ、(2)の勇気を武士・戦士階級の人々へ、(3)の節制を一般階級の人々へ割り当てて、国家という枠組みの中で自己本来の仕事を担うこと
プラトンは、知恵・勇気・節制を適切な階級の人たちが持ち、適切に機能することで国家の正義が成立するとしました。当時は階級制度ありきで国家が成り立っていたということがわかります。
魂の三部分説とは
『国家』において、魂の三部分説も重要な要素です。プラトンは国家だけでなく、個人の中でも正義は同様に成立し、個々の人間の魂の中には以下の3つがあるとしています。
・理知的部分(知恵)
・気概的部分(勇気)
・欲望的部分(節制)
人間はさまざまな場面で知恵を働かせて問題解決をしたり、勇気ある行動に出たり、自分の欲求に思い悩んだりします。プラトンはこの3部分の在り方こそが正義であるとしています。
有名な「洞窟の比喩」とは
プラトンの「洞窟の比喩」も非常に有名です。洞窟の比喩の中では、まず人々=囚人は地下の暗い洞窟の中で縛られ、洞窟の壁を向かされています。洞窟の入り口には毎日さまざまなものが通りますが、囚人は洞窟の壁に映る影を通してそれが一体何なのかを想像・認識します。
そんななか、解放者が現れて囚人を束縛から解き、太陽が照らす外の世界へ連れていきます。今まで影でしかものを見てこなかった囚人は、初めは外の世界をうまく認識できません。しかし時間をかけて目を慣らし、徐々に真実の世界を認識できるようになっていきます。
この洞窟の比喩では、太陽が善の象徴とされていて、その善へ導く解放が哲学者による教育とされています。このように哲学者の教育を受けることで、人々は善の世界へ行くことができると結論付けているのです。
永遠的意義を持つプラトンの考えや名言
今回はプラトンの思想・考え方・名言について紹介しました。
哲学の視点から政治・国家を見つめ、人としての生き方を見直したプラトンの考えは、現在の私たちが学べることも多くあります。現代の思想的な課題や悩みに、プラトンの哲学を活用することもできるので、ぜひプラトンの考えを取り入れてみてくださいね。