パナソニック サイクルテックが7月6日より、国内初の"押し歩き"機能を搭載した電動アシスト自転車「ビビ・L・押し歩き」(12万9,000円)を発売。それに先駆けて、新製品発表会が開催されたので紹介します。
電動アシスト自転車は高齢者の需要拡大が見込まれる
年々拡大している電動アシスト自転車市場。同社の推定では、2016年から2020年にかけて9.5%拡大、2020年度に総需要は約82万台にのぼりました。
特に2020年度に関しては、新型コロナウイルスの影響により、生産・営業活動が制限されたにもかかわらず、移動手段としての電動アシスト自転車が注目を集め、同社における販売実績も通勤・通学モデルが前年比の124%、小径・ファッションモデルが同127%増と、過去最高を記録したとのこと。
こうした状況の中でも、今後も特に需要拡大が見込まれているのが高齢者です。総人口に占める60歳以上の高齢者の割合は2020年に28.7%。総務省の推計によると、2040年には35.3%にまで増大すると見られています。
また、高齢者の運転免許自主返納者の数も過去5年間で約2倍にまで増加しているとのこと。同社における、65歳以上の商品購入登録者の数も約2.4倍にまで増えていると言い、運転免許自主返納後の高齢者の移動手段として、電動アシスト自転車が選ばれる傾向にあることが示されています。
一方、電動アシスト自転車は、モーターをアシストする機能によって、走行時にかかる負担を軽減してくれるものですが、その反面で一般自転車に比べると重量が重く、自転車を押し歩きする際には逆に負荷がかかってしまうという問題もあります。
自転車を「押し歩き」時にもアシストする機能
そこでこのほど同社が発表したのは、押し歩きの時にもモーターがアシストする機能を持った電動アシスト自転車。この機能は4つのセンサーによる制御によって実現。前輪の車軸に備える「スピードセンサー」が押し歩く速さを、「モーター内蔵センサー」がモーターの負荷と回転数を検知することで、歩く速度に合わせてモーターを制御してアシストを行います。
また、上り坂や荷物を運ぶ際などにも、モーター内蔵センサーによって負荷を検知してアシスト力を調整する仕組みです。
さらに、ペダルにも負荷を検知する「トルクセンサー」を備え、ペダルに足が乗っている状態では押し歩き機能を停止し、サドル部に備えた「サドル傾斜センサー」は乗車時には押し歩き機能が動作しない仕様に設計されているそうです。
安全性を担保した押し歩き補助機能
操作部として、ハンドル部分には押し歩き機能専用のスイッチも装備しています。両手でハンドルを握った状態でも操作しやすいようにボタンが配置され、ボタンから指が離れると押し歩きアシスト機能が停止する安全仕様も施されています。
これらに加えて、サドル下のレバーを引き上げる動作で傾斜をさせなければ乗車ができない機構を採用するなど、複数の方法によって安全性を担保している点が特徴的です。
これほどまでの安全設計が採用されている理由は、2019年12月1日に施行された「改正道路交通法」で課せられている諸条件によるもの。
実は、同法により、日本国内で押し歩きを補助する自転車が、歩行補助車等として、歩行者としてみなされることになり、条件を満たしていれば発売・走行が可能になりました。 諸条件とは、(1)押し歩き時の駆動速度が6㎞/h以下であること、(2)乗車装置(サドル)が使えず、乗れないこと、(3)自転車から離れると駆動が止まることの3つ。
同社では、これらをクリアーするために、既に欧州で展開している、押し歩きアシスト機能付きの電動自転車の技術や、盗難防止技術など既に保有している技術資産を応用・活用し、ソフト開発や検証などを約6年かけて実施し、製品化に至ったとのことです。
目的やライフスタイルに応じて複数の電動アシスト自転車シリーズを展開している同社ですが、押し歩きアシスト機能をまずはショッピングシリーズの「ビビ」の中でも高齢者の使用率が高い軽量モデル「ビビ・L」に搭載。今後は、他シリーズ、モデルへの展開ももちろん想定していることを明かしています。