• home 5Gサービス専用の5Gルータ「home 5G HR01」。高さは30cm弱ほどでしょうか、据え置き機らしい存在感です

NTTドコモが発表した「home 5G」は、月額4,950円(税込、ルータ本体代別)という料金で、5G/4G LTE通信が使い放題になるサービス。専用5Gルータ「home 5G HR01」と組み合わせて使うもので、原則としてデータ容量の制限はありません。

NTTドコモの2021年夏モデル製品発表会にて、専用5Gルータの実機をチェックしつつ、home 5Gを提供する狙いを聞きました。

電源を入れるだけ、光回線より手軽に設置

home 5G HR01は、固定回線の代わりに5G/4G LTEをに使うための家庭用ルータです。ルータ本体の購入&新規加入を条件に、スマホ向けの5Gプランより割安な使い放題の月額料金(home 5G)が用意されています。

home 5G HR01の良いところは、サービスを契約すれば、後は電源を挿すだけで使える手軽さにあります。光回線のように回線工事の手配は必要ありません。特に一人暮らしの学生や、引っ越しが多い人には適しています。

ただし、利用できるのは自宅など、最初に登録した住所付近のみ。モバイル通信回線ではありますが、本来の意味での“モバイル(移動すること)”はできません。ルータ本体の電源は専用ACアダプターで、バッテリーは搭載していません。あくまで据え置き用の設定です。

  • ドコモ2021年夏モデルとして発表されたhome 5G HR01。電源を挿すだけでインターネットが使えるようになります

home 5Gサービスはhome 5G HR01の発売にあわせ、8月下旬頃から提供開始される予定です。home 5G HR01の本体価格は、5月の発表時点では「未定」となっています。

home 5Gには、固定回線「ドコモ光」と同じ条件のセット割引「home 5G セット割」が用意されています。ドコモの現行プラン「ギガホ」「ギガライト」とセットで契約すると、1回線あたり最大1,100円が割り引きされます。オンライン専用プラン「ahamo」は割引対象外ですが、割引額が決まる条件の「ファミリー割引の回線数」にはカウントされます。

  • セット割を含めた、home 5Gの月額料金一覧。ギガホ契約なら必ず1,100円引き、ギガライトはスマホ側のデータ使用量に応じて割引額が変動します

なお、home 5G HR01のケータイ補償サービスは月額550円(初回31日間無料)で提供される予定。ケータイ補償に加え、パソコン3台までセキュリティソフトが使える「ネットワークセキュリティ」をセットにしたオプションサービスも月額770円で提供されます。

4G LTEも高速に使える5Gルータ

5Gルータ「home 5G HR01」は、シャープが製造を担当。Wi-Fi 6で最大64台までの機器がつなげられるほか、1000BASE-T対応の有線LANポートを1基搭載します。

スマートホームでWi-Fiに接続するタイプの機器が増えていますが、home 5G HR01なら一般的な家庭であれば充分賄える程度の接続台数は確保されています。

  • ルータは角がカーブになった四角柱のような形。前面に接続状況を示すランプが付いています

5G通信では下り最大4.2Gbps、上り最大218Mbpsの通信をサポート。いわゆるサブ6周波数帯の対応で、ミリ波帯は非対応です。また、4G LTEでは下り最大1.7Gbps、上り最大131.3Mbpsの通信に対応します。

ここでの注目ポイントは最大4.2Gbpsというモバイル通信、すなわちWAN側の最高速度がLAN側の最高速度よりも上回っていること。Wi-Fi 6、すなわちIEEE802.11ax接続時の最大速度は約1.2Gbpsで、有線LANポートは1Gbps対応です。

  • home 5G HR01の通信スペック。WAN側となる5G/4G LTEの最大通信速度が、LAN側となる無線LAN/有線LANの最大通信速度を上回っています(いずれも製品における規格値)

ただし、いずれの通信速度も規格上の最大速度であり、現実にこのスピードで常時通信できるわけではありません。特に5G/4G LTEは電波の展開状況や入り具合、基地局の利用状況に左右されます。5G圏内で見通しが良い屋外でも、実測値で1Gbpsの通信ができるケースは多くはありません。とはいえ、将来的な5G普及を見据えるのであれば、WAN側の最高速度がLAN側を上回るこの仕様は適切な選択といえます。

  • 背面にLANポートとWPSボタン、再起動ボタンを搭載

ルータには、Wi-Fiに手軽に接続する設定として、標準規格の「WPS」に対応。基本的にはボタンを押すだけで接続できます。加えて、本体の底にQRコードが表示され、スマホでそのコードを読み取るだけでつなげる機能も用意されます。なお、QRコード接続の具体的な方法については、現時点では検討中とされています。

  • 底部にSIMスロット。製品版には接続用のQRコードが用意される予定です

「もっと手軽に固定回線を使いたい」の声

home 5Gのような、モバイル回線を固定回線代わりに使うサービス/製品は、競合他社では数年前から展開されています。

auは傘下のUQコミュニケーションズがモバイルブロードバンド通信のWiMAX2を運営しており、そのラインナップの中で据え置き型のルータを展開。また、ソフトバンクの「SoftBank Air」も同様のコンセプトの製品です。

  • home 5Gのコンセプト

一方、ドコモはこれまで4G LTE通信を自宅回線として使うための専用機器はラインナップしておらず、自宅のWi-Fiを整備したいというユーザーには、固定回線の「ドコモ光」を提供していました。光回線は安定した通信品質が期待できる一方で、工事に手間がかかるほか、引っ越しの手続きが面倒という不便さもあります。これがドコモにとっては機会損失になっていたようです。

NTTドコモの担当者は「これまでドコモ回線のお客様の中で、固定回線は手続きが面倒という声が多かった。中には、スマホはドコモで、家の回線は手軽さからSoftBank Airというお客様もいる状況だった。5Gのエリア展開がこれから本格化する中で、これまで対応出来ていなかったご要望に応えるため、home 5Gを用意した」と説明しました。

契約期間、違約金なし。5Gエリアの拡充待ち

ドコモの5G網は2021年度3月までに2万基地局の展開を予定しており、全国の主要都市からじわじわとつながるエリアが広がっていきます。ただし、5G通信の高速通信は建物の壁などの干渉物に弱いため、家庭で利用できる通信速度は実質的には4G LTEと大きく変わらないでしょう。

  • 5Gエリアは徐々に拡大中。2024年末に人口カバー率80%というエリア展開が予定されています

それでも、ドコモの4G LTE網は、都心部なら実測1Gbpsを超える速度を記録することもままあるなど、現状では5Gよりも安定した通信品質が期待できます。動画再生やビデオ会議など、多くの用途では十分な通信速度を得ることができるでしょう。5Gにつながらない場所でも、4G LTEにもつながるhome 5Gを選ぶ価値はあるといえます。

home 5Gが他社と異なる点として、契約期間の制限がなく、いつでも違約金なしで解約できることが挙げられます(本体代を月額支払いしている場合は残額の支払いが必要)。

また、スマホと同等の通信品質で、データ容量の上限設定がない“使い放題”な点も特徴です。ただし、多くの固定回線と同様に、「当日を含む直近3日間のデータ利用量が特に多いお客さまは、それ以外のお客さまと比べて通信が遅くなることがあります」という制約は設けられています。

ドコモによると、この通信速度制限は大容量ユーザーでも必ず実施されるわけではなく、同じ基地局を利用している人の速度が遅くならないように“きめ細やかな調整”をかける形で実施するとしています。

home 5Gのお得感は、実質的には月額料金に含まれてしまう5Gルータの機器代金次第で代わってきそうですが、月額4,950円で5G/4G LTEともに使い放題のhome 5Gは、固定回線代わりとしてテレワークに、オンライン学習に、テレビでの動画視聴にと、存分に活躍するポテンシャルを秘めています。