シャープが発表した「AQUOS R6」は1インチセンサーのカメラにライカとのコラボということで日本でも大きな話題になっていますが、海外でも注目を集めています。シャープのスマートフォンを取り上げることのなかった海外メディアも、今回のAQUOS R6には大きな期待を寄せているのです。その理由はファーウェイ不在となった「ハイスペックカメラフォン」というカテゴリの継承製品となる可能性があるからでしょう。
AQUOS R6のスマートフォンとしてのスペックは十分高く、大手メーカーのハイエンドモデルと比べても互角に戦える性能を有しています。カメラはシングルながら、ソニーの「ZV-1」など高性能カメラと同じ1インチのセンサーを搭載。この大型センサーを搭載するスマートフォンは、2014年にパナソニックが発売した「DMC-CM1」以来です。大きなセンサーを搭載するということはそれだけ取り込める情報が多く、写真のディテールやボケ味などに影響を及ぼします。AQUOS R6はグローバル市場で見てもエポックメーキングなスマートフォンなのです。
さらにこのカメラはライカと提携。ライカと言えばファーウェイのカメラが有名ですが、ファーウェイはアメリカ政府による制裁を受けたことからスマートフォン製品の展開が停滞してしまっています。Googleサービス(GMS)を搭載したハイエンドモデルは2019年4月、今から2年前の「P30」シリーズが最後で、結果、今でもP30シリーズを愛用しているユーザーは多いといいます。
ライカカメラを搭載したモデルは、その後同年秋に「Mate 30」シリーズ、2020年4月に「P40」シリーズ、2020年10月に「Mate 40」シリーズが出てきました。しかしこれらのモデルはGSM非搭載のため中国以外での販売は不調に終わっています。さらに2021年4月に登場するとみられた最新モデル「P50」シリーズは未だに発表されていません。
スマートフォンのカメラ性能の指標であるDXOMARKでファーウェイのスマートフォンは常にトップクラスの性能を誇っていました。しかしそのファーウェイのスマートフォンでGMS対応モデルが出てこなくなったことから、高性能なカメラを搭載したカメラを求めるユーザーたちの「難民化」が進んでいます。
もちろんほかのメーカーはこの機会に乗じて「ポスト・カメラフォン」の座を奪おうと様々な動きに出ています。ソニーに続きVivoはカールツアイスと提携、またOnePlusはハッセルブラッドのカメラを搭載しました。とはいえこれらのメーカーの製品ユーザーは少なく、カメラ性能も未知数です。海外ではファーウェイの代わりにXperiaを買う、とはなかなか考えにくいかもしれません。
シャープのスマートフォンも販売国は限られており、台湾ではかなり知られているものの、他のアジアの国やヨーロッパではまだまだマイナーな存在です。もちろんシャープの名前は大手家電メーカーとしてヨーロッパでも広く知られていますが、AQUOSというブランドは全く認知されていません。しかし「ライカのカメラを搭載したスマートフォン」となれば、ファーウェイのような高性能なカメラスマートフォンであるという期待が高まります。しかもセンサーサイズが1インチと聞けば、カメラ性能に疑問を持つ人はいないでしょう。
ファーウェイが2016年4月に「P9」シリーズを発表したときも、ライカのカメラを装備したことで世界中から大きな注目を集めました。それまでファーウェイを「ただの中国の1メーカー」としか考えていなかったヨーロッパの消費者が、色眼鏡を抜きに評価しはじめたのです。そしてこのP9以降、ファーウェイは半年おきにライカカメラ搭載のハイエンドスマートフォンを発表し、スマートフォン出荷量で一気に世界シェア2位にまで上り詰めました。
AQOUS R6はそのファーウェイのスマートフォンが不在の今、グローバル市場に出せばすぐに認知され、さらにディスプレイ性能などシャープの技術を強力にアピールすることもできるでしょう。新製品発表会は日本で行われましたが、グローバル向けの発表会も行ってほしいと思うほどです。
日系メーカーのスマートフォンとしてはソニーもカメラやAV機能を高めて頑張っています。しかし製品の知名度が低いことから海外の消費者にその技術力をアピール出来ていません。それに対してAQUOS R6はファーウェイが切り開いてきた「ライカカメラ搭載スマートフォン」の新しい継承モデルであることから、このまま海外市場で発売すればいきなり人気製品となる可能性もあります。
日系メーカーは「まずは国内市場」という製品展開を行っていますが、AQUOS R6はそんな「小さな」市場にとらわれることなく、グローバルに堂々と進出し競争できるだけの製品と感じられました。世界中の消費者の関心をひく製品などなかなか開発することはできません。現時点での予定は無いようですが、社運をかけてでもぜひ海外展開してほしいものです。