「人事を尽くして天命を待つ」は、アニメなどにも登場する有名なことわざですが、その意味をご存じでしょうか?
本記事では「人事を尽くして天命を待つ」のことわざの意味や由来、省略した形の四字熟語や漢文バージョンまでくわしく紹介します。また、正しい使い方や類語などについても解説。言葉の意味を由来からしっかりおさえて正しく使いましょう。
「人事を尽くして天命を待つ」の意味とは?
「人事を尽くして天命を待つ」とは「自分で全力の力を尽くしたら、後は天の意思に任せる」という意味です。人ができることには限界があるのだから、どんな結果になっても後悔はな いという心境のときに使うことができます。
「人事を尽くして天命を待つ」は、座右の銘やアニメにも登場することわざですが、意味や由来まで知っている方は少ないのではないでしょうか。ぜひこの機会に覚えてみてください。
由来は中国の「読史管見」
「人事を尽くして天命を待つ」ということわざは、南宋初期に中国の儒学者「胡寅(こいん)」の「読史管見(とくしかんけん)」に登場する「人事を尽くして天命に聴(まか)す」という文が由来です。
「聴(まか)す」は「任せる」という意味もあり、そこから「待つ」に繋がったと言われています。
「人事を尽くして天命を待つ」の読み方
「人事を尽くして天命を待つ」は「じんじをつくしててんめいをまつ」という読み方になります。難しい読み方ではないので、一度見聞きすれば覚えられるのではないでしょうか。読み方を覚えるのとあわせて、漢字も書けるようにしておくといいかもしれません。
「人事を尽くして天命を待つ」の漢文・四字熟語
ことわざとして使われている「人事を尽くして天命を待つ」は、漢文や四字熟語としても表すことができます。
ことわざの原文は「盡人事而待天命」
「人事を尽くして天命を待つ」の漢文表現は「盡人事而待天命」や「盡人事待天命」です。漢文の「盡人事待天命」には一、二点や返り点を付けることができます。
「盡」の後ろに二点が付き、「人事」の後ろに一点をつけ、「待」の後ろにも二点がつき、「天命」の後ろに一点がつけるのが正しい表し方です。
四字熟語に略すと「人事天命」
「人事を尽くして天命を待つ」を四字熟語として表すと「人事天命」になります。「人事」は人が起こす物事、「天命」は天が人間与える運命という意味です。
「人事を尽くして天命を待つ」の使い方と例文
「人事を尽くして天命を待つ」とはことわざのため、会話の中や座右の銘としても使用できます。ここでは「人事を尽くして天命を待つ」の使い方を、例文を交えながら紹介していきます。
正しい使い方
「人事を尽くして天命を待つ」を使うタイミングは、「自分が最大限の力を発揮してあとは天の意思に任せるしかない」という状況になったときです。例えば、ビジネスにおいては事前に考えて用意したベストなプレゼンが取引先などに採用されるかは神の意志に任せるしかないといった状況で使えます。
「人事を尽くして天命を待つ」は人間が持てる力をすべて出し切った場合に使う言葉なので、自分の怠慢で納得できる力を発揮できなかった場合に使用することはありません。また、全力で最善を尽くしたからこそ当てはまることわざですが、自分のベストを尽くしてダメだったときは天の意思だから仕方ないとあきらめる理由にも使うことができます。
例文
「人事を尽くして天命を待つ」を使った例文を紹介します。
- 試験ではベストを尽くしたので後は人事を尽くして天命を待つしかない。
- 人事を尽くして天命を待つ思いでプレゼン資料を作成した。
- 明日の試合に向けて毎日練習してきたが、勝てるかは人事を尽くして天命を待つしかない。
「人事を尽くして天命を待つ」のことわざは、頑張って用意してきた学校の試験やビジネスでの交渉・プレゼン、スポーツの試合などのシーンでよく耳にします。
これは自分がベストを尽くす用意をしてきても、結果がどう転ぶかわからない場面でよく使われ、もしも結果がうまくいかなくても、ベストな用意をして全力を出すことに意味があるというニュアンスが含まれています。
つまり「人事を尽くして天命を待つ」とは結果がどうであれ、自分を高め合ってきた晴れ晴れとした気持ちが表れている潔い意味のことわざと言えるでしょう。
「人事を尽くして天命を待つ」の類語
「人事を尽くして天命を待つ」には同じような意味合いを持つ別のことわざがいくつかあるので紹介します。
天は自ら助くる者を助く
「天は自ら助くる者を助く」
意味:人に頼らず自分自身で努力する人は天が助け幸福をもたらす。
結果を天の意思にゆだねるのが「人事を尽くして天命を待つ」ですが、「天は自ら助くる者を助く」は自分で努力すると報われいい結果をもたらしてくれる、という意味のことわざになります。
人に頼ってばかりではなく自分の力を信じてやってみるというところも「人事を尽くして天命を待つ」とは少し違う点です。
運を天に任せる
「運を天に任せる」
意味:うまくいくかどうかを天の意思に任せる。成り行きに任せる。
「人事を尽くして天命を待つ」や「天は自ら助くる者を助く」などは自分の頑張りがあってこそのことわざでしたが、「運を天に任せる」は自分がどんな状況でも結果はすべて天の意思に任せるといった意味になります。さまざまな場面で使える便利なことわざです。
我が事終わる
「我が事終わる」
意味:自分にかかわることがすべて終わって、なすべきことがない。
「人事を尽くして天命を待つ」の「人事を尽くす」の部分に似ている言葉が「我が事終わる」です。自分でできることは終わった状況を指し、何もすべきことがない場合に使えます。
果報は寝て待て
「果報は寝て待て」
意味:運は人の力でどうにかなるものではないので、寝ながら待つくらいの悠長な気持ちでいること。
「果報は寝て待て」の「果報」とは、仏語で前世のいい行いの結果として現世で受けるいい報いのことを指し、運に恵まれること表しています。
「寝て待て」とは比喩的な表現で、実際に寝るわけではありませんが、慌てず焦らず気長に待つということを意味しています。
「人事を尽くして天命を待つ」の英語表現
「人事を尽くして天命を待つ」の英語表現にはどのようなものがあるのでしょうか。似たニュアンスの文をピックアップしたので、英語で伝える際は下記の文を参考にしてみましょう。
- God helps those who help themselves.(神は自分自身を助ける人を助ける。)
- Man proposes, God disposes.(人が提案して、神が処理をする。)
- Do your best and let the heavens do the rest.(ベストを尽くし残りは天にさせなさい。)
- Do your best and leave the rest to Providence.(ベストを尽くし残りは神に任せなさい。)
人事を尽くして天命を待つを正しく使おう
中国の書物が由来になった「人事を尽くして天命を待つ」ということわざですが、実は原文は「人事を尽くして天命に聴(まか)す」といった形です。「聴(まか)す」は「任せる」などの意味もあり、そこから待つという言葉になったといわれています。
由来から覚えるとよりことわざが身近に感じられるかもしれません。正しい意味を理解して活用できるようになりましょう。