世界的にも男女格差の是正が遅れているといわれる日本。さまざまなメディアでジェンダー問題が取り上げられる機会は増えたものの、社会が求める「男らしさ」「女らしさ」の呪縛は根深いものがあります。

  • バービーが若者にガチンコアドバイス/ 「結婚したら、男性の体調管理は女性の責任! ?」

    写真提供/ バービー

そこで、エッセイやラジオ、YouTubeなどで、フラットな視点からジェンダー問題について発信しているお笑い芸人・バービーさんに、Z世代が感じている「生きづらさ」についてご相談。男も女も生きやすい関係について、一緒に考えてもらいました。

■悩み1 : 令和になっても家事、育児は女性の負担が大きそうで、結婚なんて面倒くさいとしか思えません。バービーさんはどうして結婚を決めたのですか?

妻が旦那さんの身支度を整えて、旦那さんの食事を作って、子どもを育て、親の介護もして…と、私の結婚のイメージもそんな感じで、自分自身がするのは難しいなと思っていました。

実際、結婚している女友達と食事に行くと、「旦那さんのご飯を作ってから来た」とか、「旦那が帰ってこいと言っているから帰る」とか言われたりして、「え? お互い大人なのに?」と疑問に思ったりしていました。

そういうクラシカルな結婚観とは違う夫婦のスタイルを私が選択すればいい話なんですが、私が選んだところで、第三者や社会は「妻の役割を果たせよ、当たり前だろ」と言ってくるのではないかなという懸念がありました。

現在のパートナーとは過去2年ほど事実婚状態で、お互いに自立した理想的な関係です。結婚してもしなくても変わらずにいられる相手だと思いつつ「社会が何か言ってくるでしょ」と思っていたので、結婚を決め切れない部分がありました。

でも、オリンピック・パラリンピック組織委員会でジェンダー問題が噴出してから、世の中がすごい変わり始めて、男性も問題への感度が上がって。今後は、女性に対する社会からの役割の押し付けがなくなっていくんじゃないかなと期待しています。 以前なら、既婚女性が「やだよ。勝手に飲みに行かせてよ。旦那は旦那でやっててよ」なんて言ったらバッシングされたかもしれないけど、今は「私は私なんです」と言っても許される時代なのかな、と。

それで、結婚を決めました。あとは子供の認知や相続とか純粋に実利的なメリットから。もともと結婚に対しての「あこがれ」がないので。えっ? これ爆弾発言? (笑)

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■悩み2 : バービーさんは女性としてどんな生きづらさを感じてきましたか? それって解消されましたか?

私が芸人であることは置いておいて、人は見かけで行動に制限がかかるなというのは、昔から感じていました。男性よりも女性、特に若い女性というのは、性の対象として勝手に土俵に乗せられ、勝手に優劣をつけられる中で生きづらさを感じることがあると思います。

私も、今でこそ容姿について言われることはありませんが、以前は普通に「ブスは黙ってろ」とか「ブスがしゃしゃり出てくるな」とか言われましたからね。「ブス、人権ねぇよ」って思っていました(笑)。

かといって、美人は美人で、めちゃめちゃ苦労していると思うんですよ。セクハラされたり、勝手に「魔性の女」扱いされたり。「人」ではなく「女」として見られ、ジャッジされる。女性として、そういう生きづらさは感じてきたと思います。

ただ、男性も変わってきてはいると思います。芸人友達と飲む時は、たいてい女性は私1人なんですけど、20代の頃からずっと「なぜ、結婚したら女性が男性のマネジメントをしなきゃいけないの? 」とかバーッと言っていました。

昔だったら男性たちは「こいつ、何言ってんだ」という感じでしたが、今はそういう対応をされることはないです。

社会の変化というのももちろんあるけど、男性の場合は組織の論理で生きている人が多いせいか、上の人間が変われば下もコロッと変わったりするんですよ。ジェンダー問題は女性側から言うより、男性同士で解決してくれないかなと思う部分が正直、ありますね。

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■悩み3 : 男ですが、彼女には言えないくらい年収が低いです。このままだと結婚は無理でしょうか。

男性が「家族を食わせる」なんていう気概をもつ必要はまったくないし、「家庭の大黒柱にならないと」なんていう気持ちも一切必要ないと思います。少なくとも、私の場合はそう。

年収が低いといった「弱さ」を男性が他人に見せられないのは、男性間の競争社会の影響もあるのかなと思います。

私自身は、「もっと弱さを出してくれていいのに。むしろ出してくれない方が心配で困る」と思っているし、出してくれたら受け止めるようにがんばります。弱さを彼女に出せないのは相談者自身の問題で、いかにその殻を自分で打ち破るかじゃないかな。

もちろん、こういう世の中でも「デート代は男性が出すのが当たり前でしょ」みたいな女性は確かにいます。昔、私より年上の女性が「自分より年収の低い男に抱かれていても気持ちよくないでしょ」と言っていて、「なんて人の尊厳を踏みにじる発言なんだろう」と愕然としました。

男性が女性の尊厳を踏みにじるだけじゃなく、女性が男性の気持ちを踏みにじることも多々あると思うので、それはお互いに話し合って、関係を是正していく方がいいんじゃないかなと思います。

ただ、この背景には社会の構造的な問題もあるかな、と。男性も女性も同じように働く機会があって、同じだけの給料を受け取れるなら、女性が男性の経済力に頼る必要はなくなるし、男性もすべてを背負う必要はなくなります。

ジェンダー問題にはそういう社会的な底上げも不可欠だし、社会が変わることで生きやすくなるのは女性だけでなく男性も同じだと思います。

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