「ぞっとしない」は、「恐ろしくない」の意味で誤用されがちですが、本来の意味は全く異なります。恐怖や寒気を感じたときなどに使う「ぞっとする」の反対語にも思えますが、「ぞっと」には「強い感動を受ける」という意味もあるのです。
そこで本記事では、「ぞっとしない」の正しい用法や類義語、英語表現などについてくわしく紹介します。
「ぞっとしない」の意味
「ぞっとしない」は、「面白くない」や「興覚め」「感心しない」という意味がある言葉です。そのため、「ぞっとしない話」というと「面白くない話」や「感心しない話」という意味になります。
「ぞっとしない」は誤用されやすい
広く知られている言葉「ぞっとする」には「恐怖や寒気が体を抜けていくさま」という意味があるため、その否定語として「怖くない」「恐ろしくない」などの意味で誤用されがちです。
文化庁の「国語に関する世論調査」によると、「ぞっとしない」の意味を「恐ろしくない」などの誤った意味で回答した人は54.1%と半数を超え、本来の意味である「面白くない」と正しく答えた人は31.3%に留まっています。
本来、「ぞっと」には「強い感動を受けて身体が震えるさま」という意味もあります。この意味を知っておけば、その否定形である「ぞっとしない」は「感動しない」「面白くない」を意味することが理解しやすくなるでしょう。
「ぞっとしない」の例文
「ぞっとしない」の例文を紹介します。
「友人は楽しそうに話していたが、自分にとってはぞっとしない話だった」
「話題の映画を見たけど、ぞっとしなかったよ」
「楽しみにしていた旅行が台風で中止になったのでぞっとしない」
いずれも「面白くない」という意味の例文です。日常生活ではあまり使わない「ぞっとしない」ですが、言い回しのひとつとして覚えておけば、スマートに使いこなせるでしょう。
「無断欠勤するなんてぞっとしないね」
「感心しない」という意味で使う場合の例文です。「ぞっとしない」の意味を間違えていると「無断欠勤も怖くない」などの誤った解釈をして会話が成立しなくなってしまいます。
「ぞっとしない」の類語
「ぞっとしない」の類語を紹介します。
つまらない・面白くない
一般的に使われている言葉です。現代では「ぞっとしない」ではなく「つまらない」や「面白くない」が広く使われていますが、ぞっとしないの類語なので覚えておきましょう。
味気ない
「面白みがない」「魅力がない」などの意味で使われる言葉です。「味気ない話」は「ぞっとしない話」の言い換えとしても使えます。
興ざめ
興味が薄れて面白みがなくなることを意味する言葉です。「花見に行ったら人が多すぎて興ざめした」などと使います。
「ぞっとしない」と意味が同じ慣用句
「ぞっとしない」と似た意味の慣用句も覚えておきましょう。
味も素っ気もない
「何の趣もない」「つまらない」という意味の慣用句です。「味も素っ気もない格好だ」は「ぞっとしない格好だ」の言い換えとして使えます。
芸がない
「工夫や趣向がない」「面白みがない」などの意味で使われる慣用句です。芸人などの芸のなさを嘆くだけではなく、何の工夫もないプレゼンなどに対して「まったく芸がないね」などのようにも使います。
座が白ける
「それまで盛り上がっていた雰囲気が壊れて面白みがなくなること」を意味する慣用句です。「興ざめする」意味はほぼ同じです。
枠にはまる
「型通りで新味がない」という意味の慣用句です。ぞっとしないとは少し意味合いが違いますが、ビジネスシーンでは「その説明では枠にはまりすぎていて面白みがない」などの使い方ができます。
「ぞっとしない」の英語表現
「ぞっとしない」は「面白くない」や「興覚め」と意味が同じなので、以下のような英語表現が適しています。
- not be overly impressed(あまり感動していない)
- be not very happy with(あまり感心しない)
- It's not fun.(面白くない、つまらない)
「ぞっとしない」の正しい意味を理解しよう
「ぞっとしない」は、「面白くない」や「興ざめ」という意味の言葉です。「恐ろしくない」という意味で使うのは間違いなので注意してください。
「ぞっと」には「強い感動で身体が震える」という意味もあるので、あわせて覚えておくといいでしょう。使い方や例文も頭に入れておけば、ビジネスシーンでもスマートに「ぞっとしない」を活用できるはずです。
日常的に使う言葉ではありませんが、類語や似た意味の慣用句は多いので、まとめて理解しておくと語彙力を高められるでしょう。