ワイヤレスNCヘッドホンが今アツい
今、ノイズキャンセリング(NC)搭載のワイヤレスヘッドホンが再び注目を集めている。
日本をはじめとするアジア圏では、ヘッドホンよりもイヤホンの売り上げのほうが圧倒的で、NC機能を搭載した製品もアップル「AirPods Pro」やソニー「WF-1000XM3」が長らく人気を保っている。また、2020年あたりからは5,000円を大きく下回る低価格なTWS(完全ワイヤレスイヤホン)が多数リリースされたり、NC機能付きのTWSイヤホンが1万円以下で登場してきたこともあって、ワイヤレスイヤホンが全盛の時代を迎えようとしているのは確かだ。
そんな時代のなか、急にヘッドホンが売り上げを伸ばしてきた。しかも、人気を集めているのはNC搭載のワイヤレス製品だが、ゲーミングタイプも好調、NCなしで有線の低価格モデルも決して悪くない状況という話も伝わってきている。
好調な理由は簡単で、いわゆる“おうち時間”やテレワークなどでイヤホン・ヘッドホンを装着している時間が長くなったためだ。現在主流のカナル型イヤホンは、人によっては長時間の装着が厳しいと感じるため、ヘッドホンに注目が集まっているという。また、ブームマイクが付属しているゲーミングヘッドホンはもちろんのこと、マイクの位置が(イヤホンと比べて)有利なヘッドホンのほうが会話音声も良好だったりする。
そういった特別な時代ゆえに、ヘッドホン派が増えるという、これまでと方向性の異なるムーブメントが生まれているのだろう、と考えている。
コスパの高さが人気のag「WHP01K」。まるで価格破壊!?
そんな“ヘッドホン再注目時代”にあって、かなりの評判となっているのが国内ブランド「ag」のNCワイヤレスヘッドホン「WHP01K」。オーディオブランドfinalが監修する良質なサウンドとコストパフォーマンスの高さから、2019年の立ち上げ以来、わずか1年半ほどで一躍有名になったag初のヘッドホンだ。
Bluetooth対応はもちろんのこと、NC機能も搭載していながら直販9,800円という、価格破壊といいたくなるような圧倒的コストパフォーマンスの高さを持ち合わせている。
しかも、安かろう悪かろうではないのがagらしいところ。フィードフォワード+フィードバックのハイブリッド方式を採用した、かなり高性能なノイズキャンセリング性能を備えている。
実際に使用してみて分かったことだが、空調機器のノイズなど低音を中心として“暗騒音”とも呼ばれるストレスが強い、かつ音楽再生を妨げる騒音をかき消してくれ、実にピュアなサウンドを楽しめる。
ちなみに、ノイズキャンセリング機能は音楽再生せずとも個別にオンすることもできるので、スマートフォンやオーディオプレーヤーに接続せず、静かな環境で仕事や学習に集中することも可能だ。
(編注:NCには、ノイズを外側のマイクで集めるフィードフォワード方式と、内側のマイクで集めるフィードバック方式がある。ハイブリッド方式のNCでは、ヘッドホンの外側と内側のマイクで集めて低減するため、高いNC効果が得られる)
また、Bluetoothに関しても、クアルコム製SoC「QCC3008」を採用することでインテリジェントな機能性を確保。NCオンで25時間、NCオフだと35時間の連続再生が可能なほか、NCのみの利用だと60時間ほど使い続けることができる。3.5mmステレオミニ端子も備えていて、バッテリーが切れた場合も有線接続で音楽を楽しむことができるので安心だ。このごろはバッテリー切れでも音楽再生が楽しめる製品が増えてきているが、だからこそ、そういった機能性もそつなくフォローしていることに好感が持てる。
BluetoothコーデックはSBCやAACに加えて、良音質なaptXや遅延の少なさで注目されているaptX LLにも対応。音楽だけでなくゲームや映画鑑賞など、さまざまなコンテンツを楽しめる。
外観に関しては、agらしいというべきか、かなりコンパクトかつシックな印象だ。イヤーパッドはアラウンドイヤータイプでありながらかなり小さめのサイズにまとめられており、折りたたみもできることから屋外に持ち出すときも充分な手軽さを持ち合わせている。
イヤーパッドとヘッドバンドには柔らかくサラッとした感触の素材を使用しているため、上品、かつ上質に感じられる。また、全体がマット調の単色でカラーコーディネイトされているのも好印象だ。
カラーバリエーションがブラック、ダークグレイ、クリームの3色というのはなかなか地味に見えるかもしれないが、こういった(和テイストとも感じられる)落ち着いた色調を展開することこそ、agならではの色選びといえる。
音を聴いてみる
さて、肝心のサウンドはいかがなものだろうか。一聴して感じるのはフォーカスのよさだ。aptX対応のおかげか音響設計の巧みさか、全帯域にわたってクリアでダイレクトなサウンドを実現している。
特に低域のフォーカス感がよく、演奏が普段よりも幾分躍動的と思える。それは、もともとの音質のよさに加えて、NC機能が生み出す静粛性も功を奏しているのだろう。まさに、音楽のためにあるNC機能といっていい。その効果の恩恵もあってか、ヴォーカルもクリアで活き活きとした歌声を聴かせてくれる。特に男性ヴォーカルが、基本的には普段とそう変わらないニュートラルな歌声でありながら、ほんの少しハスキーな声色によるものか、普段よりも大人っぽい魅力的な歌声に感じられる。
ちなみに、NCのオン/オフでそれほど音質や音色が変化しないのは大きな美点だと思う。WHP01Kユーザーの大半がNCをオンにしたまま使い続けるだろうから、こういった配慮は大歓迎だ。
一方で、音の解像感やSN感については価格相応といえるレベルで、ジャズやポップスではまったく問題ないものの、フルオーケストラの曲を聴くとやや物足りなさを感じてしまう。抑揚ももう少しダイナミックだったら、とも思ってしまうのだが、そこでふと、WHP01Kが1万円を切る価格であることを思い出した。
いや、この価格帯の製品としては、充分なクオリティともいえるし、そもそもハイブリッド方式のNCが備わっている。仕立てのよい外観も含め、agブランドはコストパフォーマンスに対して何か強迫観念めいたものがあるのか? とさえ疑いたくなるくらい、出来のよい製品だ。
aptX LLコーデック対応ということで、その効果も試してみた。正直な話をすると、有線接続時にはまったく及ばないものの、aptXに比べるとかなり遅延が抑えられているように感じる(本当なら数値的に比較できればベストなのだろうが……)。WHP01Kは有線接続も可能なので、音質優先のaptXか遅延を抑えられるaptX LLか、遅延のない有線かは、コンテンツに応じて柔軟に対応することをオススメしたい。
コスパの良さが光るWHP01K
冒頭で時代にマッチした注目製品として紹介した「WHP01K」だが、agとしては大きな自信を持って狙い撃ちしたという、満を持した発売スケジュールではなかったようだ。
最初は社内でも「ヘッドホンは厳しい」という(TWSメインのメーカーならではの)意見もあったそうだが、3月に発売したとたん大いに人気を集め、いまだに製品の入荷待ち状態が続いているという。agとしてはまさに嬉しい悲鳴といった状況が、発売から2カ月近く経った5月時点でも続いている(編注:直販ストアでは5月下旬以降に入荷予定)。
実際、機能性も音質もなかなかに良質なだけに、ここまで人気が集まっていることが伺える。ぜひ一度、実機を手にしてその実力を試して欲しい。あまりのコスパのよさに思わず予約してしまいそうになる、魅力的な製品だと断言しよう。