ゆとり世代は、これまでとは義務教育の方針が大きく変わった世代。前の世代と比べると大きく価値観が変わった世代であることから、仕事に対する考え方の違いなど、何かとやり玉に挙げられることが多いです。また、後輩にあたるさとり世代は教育方針が「脱ゆとり教育」であったことから、ゆとり世代とも違う価値観があるといわれています。
この記事では、ゆとり世代が生まれた時代背景や特徴などを紹介します。どのような世代なのかを知って、ゆとり世代と呼ばれる人たちと会社でうまくコミュニケーションを図れるようになりましょう。
ゆとり世代の意味とは? いつからいつまで生まれ?
ゆとり世代とは、1987年4月2日生まれから2004年4月1日生まれで、義務教育においてゆとりのある教育を受けた世代の人を指します。
ゆとり世代の現在の年齢
ゆとり世代の2024年時点の年齢は20歳~37歳です。ひとくくりに「世代」と言ってもそこには17歳の差があり、年代も2024年時点で20~30代と幅広くなっています。
ゆとり世代の語源
「ゆとり世代」の語源となった「ゆとり」とは、「物ごとや気持ちに余裕のあることや、きゅうくつではないこと」をあらわす名詞です。「心のゆとり」「経済的なゆとり」「ゆとりがある広さの部屋」といった使い方ができます。
2002年から新しい学習指導要領のもと、義務教育や高等学校などの授業時間数や授業内容に大幅な変更が加えられました。これがいわゆる「ゆとり教育」で、教育方針がそれまでとは大きく変わり、教育を受けた世代の人となりにも影響しているとされています。そこで、ゆとり教育を受けた世代のことを「ゆとり世代」と呼ぶようになりました。
ゆとり教育では、幼稚園や小中学校、高等学校の授業時間数が削減され、完全週5日制となりました。教科内容も削減されて、児童や生徒の負担を軽減して詰め込むよりゆとりを持たせつつ、あまった時間は総合的な学習に充当されました。
総合的な学習の時間では、国際理解や情報、環境、福祉・健康など、複数の教科を横断的・総合的に学習します。
ゆとり世代が生きてきた時代背景
ゆとり世代が生まれたのはバブル経済が崩壊した1991年~1993年の前後。その後のITバブルの崩壊やリーマンショックなど、幼少期を平成大不況の中で過ごしています。ゆとり世代の多くが学生であった2011年には東日本大震災があり、自然災害の脅威も実感している世代です。
2012年以降には好景気となり、就職活動はそこまで厳しくはありませんでした。しかし2020年にはコロナショックが訪れ、過酷な環境の中で学生生活を送ったり就職活動を行ったりした人も多いです。
ゆとり世代と、さとり世代など他の世代の違い
ゆとり世代は、ほかの世代と比較されることが多いです。簡単に違いを見ていきましょう。
さとり世代との違い
さとり世代とは、バブル経済崩壊後の1990年代に生まれた世代で、ゆとり世代と少し重なります。
小さい頃から不景気だった影響から、浪費や高望みをしない点や、ほどほどの穏やかな暮らしを望むなど、さとりきったような生き方をするとされることが「さとり世代」と呼ばれる由来です。
プレッシャー世代との違い
プレッシャー世代とは、ゆとり世代と氷河期世代の間の1982年~1987年頃に生まれた世代で、若くして世界で活躍する人が多いなど、プレッシャーに強いとされます。打たれ弱いといわれるゆとり世代とよく比較されます。
しらけ世代との違い
しらけ世代は、1955年前後に生まれた世代です。
無気力で、物ごとにしらけた態度をとることから名付けられていて、ゆとり世代やさとり世代と似た特徴があるといわれることがあります。
ゆとり世代の仕事でプラスになる特徴
ゆとり世代はこれまでの世代と比べ、性格などが大きく異なるといわれます。どのような特徴があるとされるのか、まずは仕事に生かせる長所を見ていきましょう。
素直
ゆとり教育ではそれまでの詰め込み教育と異なり、ゆとりの中で特色のある教育を受けてきました。のびのび育っているので、素直な性格の人が多いといわれます。
小さなことでも褒めると喜ぶといわれ、仕事の成果も出しやすいでしょう。
まじめ
ゆとり世代は的確な指示を与えれば、しっかりこなしてくれるとされます。
指示がはっきりしない場合やマニュアルがない場合などは、どうすればいいのか判断できず動けないこともあるようです。しかしやることが明確になっていれば、まじめに仕事を行ってくれるのが特徴といわれています。細かいマニュアルや指示を準備しておきましょう。
横のつながりを大切にする
ゆとり世代はワークライフバランスを重視したいと考えている人が多く、会社への帰属意識が低いといわれています。
一方でプライベートを重視しつつも、横のつながりは大切にする人が多いようです。尊敬する人から言われたら素直に聞くなど、直接関わりがある人との関係を大切にするのが特徴とされます。
創造力が優れている
ゆとり世代は、ゆとり教育の中で一つの科目に限定しない、横断的・総合的な教育を受けています。興味を持てるものを追求する教育方針により、独創性が育まれたとされます。そのためデザインなど創造力を生かせる仕事に向いているでしょう。
ゆとり世代の仕事でマイナスになりやすい特徴
ゆとり世代にはまじめである点など仕事に役立つ長所が多いですが、デメリットになりやすい特徴もあるといわれています。
以下に、ゆとり世代に一般的によく見られる特徴として、デメリットに働きそうなものをまとめました。彼らにうまく対応するためにも知っておきましょう。
協調性に乏しい
多くの場合、仕事は1人ではなくチームで行うものなので、協調性が必要です。しかし、ゆとり世代は若くからSNSが発達していた影響で、コミュニケーション能力が低く、自分から積極的にほかの人に関わろうという意識があまりないといわれています。
先輩や上司から声をかけるようにするなど、コミュニケーションをサポートするのがおすすめです。
自主性がない
ゆとり教育は競争より個性を伸ばす教育方針だったので、ゆとり世代は社内での競争にあまり興味がないとされています。任された仕事以外はやらないなど自主性が低く、指示された以上のことをしない傾向にあります。
後輩や部下にゆとり世代がいたら、細かく指示を与えることを意識するといいでしょう。
繊細でメンタルが弱い
ゆとり世代はゆとり教育を受けてきて、あまり競争にさらされていないことから、打たれ弱い人が多いといわれます。メンタルが弱く、ささいなことで会社を辞めてしまう、という話を聞いたことがある人も多いでしょう。
傷つきやすいので、叱る際は本人が改善点を見いだせるような言い方を意識しましょう。
コミュニケーションに対して積極的でない
ゆとり世代は、仕事以外でのコミュニケーションにあまり積極的ではないといわれています。「最近の若手は飲み会に参加しない」などという話を聞いたことがある人も多いでしょう。プライベートを重視していることや、バブル世代のようには経済的に潤っていないことも理由として考えられます。
無理をして仕事の後の飲み会に参加するよりも、出世競争せずともストレスなく働きたいと考える人が多いようです。
ゆとり世代との仕事での接し方・教育方法
仕事上でゆとり世代とうまく付き合っていくため、ゆとり世代との接し方のコツを紹介します。
IT分野などの得意な仕事を任せ、褒めて伸ばす
ゆとり世代の一般的によく見られる特徴として、繊細でストレス耐性が低いという点が挙げられます。過度の注意や叱責は当人たちの萎縮を生んでしまうため、不慣れな仕事に就かせるのは得策とは言えません。そのため、当人の得意な業務などをヒアリングすることが重要となってきます。
インターネットが普及した時代に生まれ育っていることから、ITリテラシーが高い人も少なくありません。なるべく本人の適性に沿った仕事を与え、しっかりとした成果を出せたら褒めてあげるといいでしょう。
指示を出す際は「明確」「合理性」「具体的」を意識する
ゆとり世代はインターネット全盛の時代に思春期を迎えているため、わからないことがあればすぐにネットで検索する習慣が身に付いていると考えられます。よって、物事を進めるときは合理性や効率の良さを重視する人が多いでしょう。
また積極的にコミュニケーションをとらないため、与えられた指示の内容が不明瞭だったり抽象的だったりすると、上司にその内容を確認することにためらいを覚えてしまいがちです。
これらの点を踏まえ、指示を出す際は「明確」「合理性」「具体的」といったキーワードを意識するといいでしょう。
適度な距離間でコミュニケーションをとる
ゆとり世代はワークライフバランスを重視し、プライベートの時間を大切にしている人が多いといわれています。もちろん個人差はありますが、職場で自身のプライベートに干渉されることに違和感を抱く人もいることでしょう。
このようなゆとり世代には過度に親密な関係性を求めようとせず、仕事上の話題に絞ってコミュニケーションを取るのがベターです。
ゆとり世代に限らず、同僚や上司との心的距離感は人それぞれです。その距離感をしっかりと見極めたうえで、適切なコミュニケーションをとることを心がけましょう。
ゆとり世代の有名人
プロスポーツ選手やアーティスト、現役アイドルなどで活躍しているゆとり世代の有名人は少なくありません。
代表的なのは、プロスポーツ選手の羽生結弦さんや錦織圭さん。アーティストの米津玄師さんや乃木坂46・AKB48などの多くのメンバーもゆとり世代です。
ゆとり世代のとの付き合い方を理解して対応しよう
「ゆとり世代」と呼ばれている理由は、個性を尊重して落ちこぼれをなくす「ゆとり教育」が行われた世代だからです。その影響からか、協調性に乏しくメンタルが弱いなどの短所がクローズアップされがちです。一方、長所は素直で真面目かつ、自由な発想が得意なこととされています。
さまざまな世代が集うビジネスシーンにおいて、ゆとり世代の特徴やゆとり世代との付き合い方を理解し、仕事を円滑に進めるようにしましょう。