シャープがSIMフリー市場と楽天モバイル向けに発売した「AQUOS sense4 plus」(2020年12月25日発売)。大画面が特徴の本機、これまでのAQUOSスマホのイメージを良い意味で打ち破る“らしくない”スマホでした。

  • AQUOS sense4 plusの実機をレビューしていきます。販売価格は事業者により異なりますが、だいたい43,780円~50,380円前後となっています

AQUOSスマホ史上最大のディスプレイが特徴

AQUOS sense4 plusはAQUOSスマホで最大の6.7インチディスプレイを備えています。上位モデルほど狭額縁ではありませんが、縦横比は20:9で、映画コンテンツを再生したときに没入感を得やすいサイズ感です。手で持てるコンパクトなシアターとして、ベッドサイドで1人で観るには十分な迫力があります。

  • 6.7インチの大画面。HDR対応ではありませんが、1人用なら没入感は十分なディスプレイ

ボディデザインは、ハイエンド「AQUOS R」シリーズのイメージを踏襲し、樹脂製の背面にメタルフレームの側面という組み合わせ。側面にはなだらかな窪みがあり、指の腹がフィットしやすく、安定して長時間持てる形状です。

AQUOSスマホといえば省電力なIGZOディスプレイが売りの一つでした。しかし、今回のAQUOS sense4 plusは液晶ディスプレイですが、IGZOではありません。その代わり、AQUOS senseシリーズとして初めて90Hz駆動のハイフレームレート表示に対応しました。

  • ディスプレイ。指紋センサーを背面に回したぶん、周りの額縁が狭くなっています

ハイフレームレート表示は、たとえばTwitterでスクロールした時に、その残像を眺めても疲れづらくなっています。またゲームにも適しており、FPSゲームではすばやく標的を発見して対抗するといった使い方ができるでしょう。

基礎体力は4G LTE対応のSIMフリースマホの中では高めで、チップセットはSnapdragon 720Gを搭載。メモリは8GBでLPDDR4Xという比較的新しい世代を搭載しています。ストレージも128GBと大きめで、最大1TBのmicroSDカードも備えています。

モバイル通信では5Gには対応していませんが、そもそも5Gのエリア展開が進むのは今後2年ほどかかるという点を考慮すれば、実際の利用時に不便を感じることはないでしょう。4G LTEのデュアルSIMに対応しており、2回線の同時利用も可能です(2回線目のnanoSIMスロットはmicroSIMスロットと排他仕様)。

  • 背面。指紋センサーは中央からちょっと高めの位置に配置

  • 左側面は電源や音量などのボタン類

  • 右側面にSIMスロットとmicroSDスロット。トレイの取り出しにはSIMピンが必要です

  • ボタン類は上から音量上下キー、Google アシスタントキー、電源ボタン。それぞれ形状が違うため迷わず押せます

  • 上部。メタルフレームがやや凹んだデザインはAQUOSスマホらしい作り

  • 下部。インタフェースはUSB Type-Cです

背面は4カメラ、マクロや超広角も活用できる

カメラ機能の構成も、従来のAQUOSシリーズとは一線を画すところです。背面カメラは標準画角4,800万画素+広角500万画素、マクロ190万画素、深度カメラ190万画素という構成。高画素な標準画角のカメラを主力として、マクロや超広角といったシーンをサブカメラが補完するイメージです。

  • 4眼カメラですが、超広角カメラ以外は補助的な役割です

広角側は4,800万画素ですが、記録できる最大画素サイズは1,200万画素。センサーのフル画素をそのまま残することはできません。高画素が生かされるのは薄暗い屋内や夜景を撮る時。4つの画素をたばねて、大きな1画素として扱うことで、1画素あたりの光量を増やす、つまり暗い環境下でもより多くの明かりを取り込むように動作します。

実際の撮影では、技術的には上で述べた動きをしますが、使っている時に気にすることはありません。AIがシーンを判断して、最適な設定を選んでくれます。夜景や食事といった定番のシーンのほか、人間(顔認識)や犬、猫に適したシーン設定もあります。

動画を楽しく味付けする機能があるのもAQUOSならでは。そのひとつ「フォーカス再生」機能では、動画再生時に写っている人を選んで、その人がセンターに移るよう自動でズームしながら再生できます。たとえば、子どもがいる人なら、学芸会や運動会の映像から自分の子どもだけを移したクリップを作れます。

  • インカメラもデュアルカメラ仕様。約800万画素 標準+約190万画素 深度の組み合わせです

特徴的なのは、インカメラもデュアルカメラ仕様(約800万画素 標準+約190万画素 深度)となっているところ。広角のカメラと深度補正用のサブカメラという構成で、自分撮り写真に自然なボケ味を追加できます。

さて、何枚か作例を撮ってみたところ、日中の屋外という条件下では安定した画質を得られるものの、超広角はやや解像感が足りないかなという印象。また、夜景下での撮影はピントが合いづらく、撮影の難易度が高いようにも感じました。一方で、マクロ撮影ではボケ感が心地よい写りで好印象でした(以下、作例は1,200ドットにリサイズ。クリックで原寸大を表示できます)。

  • 標準画角(79度)での撮影

  • 超広角(115度)での撮影

  • 標準画角での撮影

  • 超広角での撮影

  • 最大8倍のデジタルズームに対応しています

  • 菜の花に寄って撮影。ボケ味が好印象です

  • 小物類を寄って撮影

  • インカメラの作例。77.5度と広角寄りでグループでの撮影にも向いています

防水&おサイフ、AQUOSならではの安心感

大画面や多眼カメラのミドルレンジモデルといえば、シャオミやOPPOなど中国メーカーの得意分野。SIMフリーで発売されるAQUOS sense4 plusは、両社とがっつり競合するモデルとなるでしょう。

その中で防水やおサイフケータイにしっかり対応している点は、国内メーカー製ならではのアドバンテージとなりそうです。防水仕様はIPX5/IPX8相当と本格的なもの。お風呂場でくつろぎながら映画をみるといった使い方もできます(お風呂場で使用する際は使用時の注意を参考にして、危険な使い方にならないようご注意を!)。

AQUOSでは前面下部に配置されることが多い指紋センサーですが、本機では背面の中央上部に配置。前面は4辺を狭額縁にしたことで、没入感を高めています。ただし、指紋センサーは片手持ちで下部を支えるような持ち方をすると、やや指が届きづらい位置にある印象です。

  • イヤホンジャックも備えています

アプリはこれまでのAQUOSシリーズと同様に、プリインストールアプリはかなり厳選されています。たとえば写真アルバムアプリは「Google フォト」のみをプリインストールするなど、機能が重複するアプリが複数入らないように配慮されています。

細かい点ではFMラジオ機能を備えており、有線イヤホンを挿せばデータ通信なしでラジオ放送を聴取できます。ラジオアプリとして「radiko+FM」をプリインストールしているため、FM波が受信できなくてもインターネットラジオで利用できて便利です。

Android 11が使える! 今後のアップデートも予定

AQUOS sense4 plusはこれまでのAQUOSスマホの良いところを取り入れつつ、大画面化を図った異色の存在といえます。大画面で滑らかなディスプレイは動画やSNSと相性が良く、指紋センサーを背面に移したことでより没入感も高くなっています。その一方、防水仕様は残したことで、競合のSIMフリースマホには無い利便性も確保しています。

唯一気になる点は「5G」に非対応という点ですが、5Gのエリア展開はまだ始まったばかり。今の4G LTEスマホでも電波の入りは満足という人なら、5G非対応はデメリットと感じることはないでしょう。

最後にもう1つ、AQUOSスマホならではのアドバンテージについて言及しておきましょう。AQUOSスマホでは数年前から「製品発売後2年はアップデートを提供する」という公約を掲げています。実際に早いタイミングでAndroidアップデートが提供されており、AQUOS sense4 plusではすでにAndroid 11バージョンアップも実施されています。

  • Android 11対応のOSアップデートも早期に実施されました

なお。サポート面では、SIMフリースマホでは珍しい、有料の補償プログラムが用意されています。シャープが提供するプログラム(モバイル補償パック for SIMフリー)で、月額495円で加入すれば、故障時に少ない負担金で新品同様品に交換できます(価格はAQUOS sense4 plusの場合。楽天モバイル版は加入不可)。サポート面での安心感から本機を選ぶのもありかもしれません。