氷河期世代とは、バブル経済が崩壊した後に就職活動を行って、大きく影響を受けた年代のことです。ロストジェネレーション世代、略してロスジェネ世代といわれることもあります。氷河期世代には大卒でも就職活動がとても厳しく、有効求人倍率が1.0を切った年も続きました。

新卒でないと正社員への就職が厳しくなる日本ならではの事情もあって、現在も正社員として就職できない人が多数存在するなど、社会問題として注目されることも多いです。

この記事では、氷河期世代とはどのような世代なのか、氷河期世代に関わる問題、対策されていることなどを紹介していきます。

  • 氷河期世代とは

    氷河期世代とはどのような世代なのかやその社会問題などを紹介します

氷河期世代とは? 何年生まれの人?

氷河期世代とは1970年~1982年頃に生まれ、1993年~2005年頃までの就職氷河期を経験した世代のことを言います。下記でより詳しく見ていきましょう。

氷河期世代の対象と現在の年齢

「氷河期世代」は、2024年時点での年齢が42歳~54歳程度で、いわゆる働き盛りの世代です。「就職氷河期世代」、また「ロストジェネレーション世代」「ロスジェネ世代」と呼ばれることもあります。

内閣府の「就職氷河期支援に関する行動計画2021」は、就職氷河期世代を「希望する就職ができず、不本意ながら不安定な仕事に就いている方、あるいは、無業の状態にある方など、さまざまな課題に直面してきた方々」と定義しています。

氷河期世代と呼ばれる理由

バブル崩壊後の1993年~2005年頃までにあたる、大規模な就職難が社会問題となった時期が就職氷河期です。有効求人倍率が1.0未満だった時期が続いていて、その時期に大学や高校を卒業して就職に苦労した世代が、就職氷河期世代と呼ばれています。

就職氷河期は、大卒求人倍率は1倍を切ることも

就職氷河期世代はほかの世代と比べて大卒の求人倍率が低く、2000年には0.99倍となるなど、大学を卒業しても就職できなかった人や、希望の業界・仕事に進めなかった人も多い世代です。

下記の表で10年ごとの求人倍率を比較してみましょう。

卒業年 求人倍率
1991年(バブル期) 2.86倍
2001年(就職氷河期) 1.09倍
2011年(リーマンショック後の回復期) 1.28倍
2021年(コロナショック後) 1.53倍

就職氷河期の求人倍率が2021年のコロナショック後よりも低いことから、就職先を見つけるのがいかに大変な世代であったかがわかります。

就職氷河期が訪れた理由

就職氷河期が訪れた最大の理由は、バブル経済の崩壊による大不況です。株価や地価が急落したことで金融システムが機能しなくなって破綻する大手証券会社が出てくるなど、景気も極端に悪化しました。

たくさんの企業が、生き残るために新卒採用人数を抑えた状態が続いたことから、大卒の新卒でも就職難となりました。これらの社会状況が、就職氷河期が訪れた理由です。

ロストジェネレーション世代とも呼ばれる

ロストジェネレーションを直訳すると、「失われた世代」です。2007年にバブル崩壊後の失われた10年の間に社会に出た世代の実態が新聞に連載されました。

就職難民や派遣労働者、フリーターやニート、ひきこもりなど、氷河期世代の実態をあらわす言葉として用いられたことが、「ロストジェネレーション世代」が広がったきっかけです。2008年には流行語大賞に選ばれるなど、一般に浸透していきました。

2019年時点での就職氷河期世代の雇用形態

厚生労働省の「令和2年版厚生労働白書」によると、2019年時点で就職氷河期世代の5割強が正規雇用として働いています。しかし、2割強の非正規雇用がいる点や、職に就いていない人が15%程度いるなど、正規雇用以外で働く人や無職の人も多いようです。

  • 氷河期世代とは

    氷河期世代とは卒業時に就職が厳しかった世代のことです

氷河期世代の特徴

氷河期世代は就職に苦労した影響を受けて、前後の世代とは異なる点があるといわれています。氷河期世代によく見られるとされる特徴を確認していきましょう。

生真面目でストイック

氷河期世代は就職難で、人によってはアルバイトや派遣などで長期間働くことを余儀なくされました。そのため、限られた雇用条件で就業して粘り強さが身についている人が多いといわれています。

また、企業の倒産などを目の当たりにしてきたことから、個人の力を身につけるため、専門知識を真面目にコツコツ勉強している人も多いのが特徴です。

資格取得に積極的な人が多い

氷河期世代は正社員として雇用されなかったことや、正社員でも倒産やリストラなどを目にしてきました。その影響もあり、会社の中だけ評価されても仕方ないと、自分の力を磨くための資格取得などを積極的に考える人が多いようです。

IT企業の創設者が多い

氷河期世代が就職活動をする頃は、ちょうどITが発達しはじめた時代と重なり、IT企業を創設して成功している人もいます。例えばサイバーエージェント創業者の藤田晋さんや、2ちゃんねるを開設した西村博之さんなども、氷河期世代です。

  • 氷河期世代の特徴

    真面目でストイックな点は氷河期世代の特徴のひとつとされています

氷河期世代に関わる問題

氷河期世代は卒業時に就職に苦労しただけでなく、現在でも続く社会問題が多いです。氷河期世代に関連する社会問題を紹介します。

働き盛りにも関わらず非正規雇用者が多い

氷河期世代はフリーターや派遣労働などの非正規雇用者が続出した世代です。2024年時点での年齢が42歳~54歳程度と働き盛り世代にも関わらず、正社員ではなく非正規雇用者はまだまだ多くいます。

新卒で正社員になれなければ、その後の正規雇用が難しくなる日本ならでは事情も影響して、ずっと非正規で働いている人は少なくありません。

就業経験を積めない人も多い

氷河期世代は雇用状況が不安定だったため、就業する経験を積めずに来た人も多いです。就職氷河期が落ち着いて第2新卒として就業できそうな頃にリーマンショックの不況が訪れ、就職できない状況が長く続きました。

2019年には氷河期世代で家事も通学もしていない人と失業者を合わせると70万人もおり、自己責任では済まされないほどの人数です。中にはずっと就職できていない人もいて、ひきこもりなど社会問題になっています。

会社や技術の後継者不足

氷河期に採用を抑えたことから、中小企業を中心に氷河期世代の人材がほとんどいない会社は多いです。大量採用した世代が退職を目の前にして初めて担い手や後継者不足に気づき、氷河期世代を含む世代を採用しようとしている会社は増えています。

結婚や出産を諦めた人も多い

氷河期世代は非正規雇用が多いことや、正社員でも昇給しにくい状況がありました。結婚適齢期でも結婚してやっていけるほどの経済状況ではなかったことから、結婚や子どもを持つことを諦めた人は多く、未婚率や出生率に影響しています。

  • 氷河期世代に関わる問題

    氷河期世代に関する社会問題はいくつもあります

氷河期世代のための就職支援について

氷河期世代の就業に関する問題は、日本全体のGDPや税収などにも影響するため、自分とは直接関係なくても気になる人は多いでしょう。あまり知られていませんが、近年国が支援を始めています。

内閣官房による就職氷河期世代支援プログラム

氷河期世代が抱える問題は生活や就職など幅広く、さまざまな問題があります。そのような問題を解決するために、内閣官房は就職氷河期世代が利用できる施設や施策を準備しました。

主に国が行っている施策を、悩み別にwebサイトやリーフレットなどでまとめて紹介しています。

厚生労働省による就職相談などの支援

ハローワークや労働局、職業訓練所を管轄している厚生労働省では、氷河期世代の支援プランとしてさまざまな施策を実施。就職に対する支援やサポート、社会参加に向けたプログラムなど、個人の状況に合わせて支援してくれます。

国家公務員の中途採用試験も開催された

2021年度には、就職氷河期世を対象とした国家公務員の中途採用選考試験が実施されました。通常は30歳くらいまでが対象ですが、この試験では1966年4月2日生まれから1986年4月1日生まれと、30歳以上も対象でした。

これから公務員として働く道が設けられるなど、選択の幅が徐々に広がっています。

  • 氷河期世代に関わる問題

    氷河期世代がこれから正規雇用で働くための対策は増えています

氷河期世代は就職難を経験した世代

氷河期世代とは、就職活動においてバブル崩壊の影響を大きく受けた1970年~1982年頃に生まれた世代のことです。有効求人倍率が1.0未満となる年もあり、厳しい状況が続いていました。

大卒でも就職できなかったことや、新卒以外の就職が厳しいという日本特有の事情によって、現在でも就業経験がない人や非正規雇用で働く人は多いです。働き盛りにも関わらず非正規雇用者が多いことから結婚や出産を諦めた人もおり、出生率低下の一因ともいわれます。

就職からずっと厳しい状況が続く世代だったからこそ生真面目でもある氷河期世代。後輩として仕事の相談をすると親身になってくれることも多いはずです。異なる世代であってもお互いに対する理解を深め距離を縮めていきましょう。