1億200万画素のイメージセンサーを採用する富士フイルムの最新中判ミラーレスカメラ「GFX100S」。センサーシフト方式の手ブレ補正機構の搭載や、このクラスでは軽量コンパクトなボディなど、注目点の多いミラーレスに仕上がっています。実写でGFX100Sの実力をチェックしていきましょう。
フルサイズよりも圧倒的に大きい高画素センサーを搭載
まずは、改めてGFX100S のスペックをおさらいしましょう。GFX100Sには通称“ヨンヨンサンサン”と呼ばれる44×33mmのCMOSイメージセンサーを搭載しています(正確には43.8×32.9mm)。36×24mmのフルサイズセンサーと比べると、およそ1.68倍の面積を持ちます。さらに、有効画素数は前述のとおり1億200万画素。大きなイメージセンサーと高解像度によって、圧倒的な写りが得られます。「ピクセルシフトマルチショット」機能を使用すれば、複数回自動的にシャッターを切るマルチショットにより、実に4億画素の画像を記録することも可能です。
ちなみに、GFX100Sのイメージセンサーには、Xシリーズのイメージセンサーでおなじみの「X-Trans」という名称は付いていません。これは、イメージセンサー自体の構造的な違いからくるものです。
画像処理エンジンは、Xシリーズのトップエンドモデルおよびミドルレンジモデルと同じ「X-Processor 4」を採用。1億画素という膨大な情報量を高速で処理し、画像として生成します。
このエンジンは、同社の絵づくり機能「フィルムシミュレーション」も担います。フィルムシミュレーションに新たに搭載されたのが「ノスタルジックネガ」。1970年代に流行した「アメリカンニューカラー」をイメージしたシミュレーションです。アンバーっぽい色調に、軟らかなハイライト、ディテールの残るシャドーが絵づくりの特徴となります。もちろん、つややかな絵づくりの「PROVIA/スタンダード」や、記憶色を意識しきらびやかな仕上がりの「Velvia/ビビッド」、映画撮影用フィルムをシミュレートした「ETERNA/シネマ」、モノクロフィルムの階調を再現した「ACROS」なども、これまでどおり搭載されています。
オートフォーカス性能は不満なし、手ぶれ補正機構も頼もしい
中判デジタルカメラながら、AFはまったく不足を感じさせないものです。機能編でも書いていますが、同社では中判デジタルを開発するにあたり、ミラーレスしか選択肢はなかったといいます。一眼レフでは、ピントの精度がミラーレスにくらべて劣りやすいのがその理由だそうです。特に、1億画素ともなると、わずかなピントのズレが写りに大きく影響してしまうのですが、実際にGFX100Sで撮影していても被写体に合わせたはずのピントが外れてしまうようなことはなく、高いピントの精度を実感できました。
さらに、中判デジタルながらAFが高速で、AF-S(シングルAF)は隙を感じさせない仕上がりです。AF-C(コンティニュアスAF)も同様で、ちょっと前までミラーレスはコンティニュアスAFが弱いといわれていましたが、今やそれもほぼ一眼レフと変わらぬレベルまできており、トライアルした限りにおいては被写体追従性能など不満らしい不満は感じませんでした。
手ブレ補正機構の存在は、撮影ではやはり心強く思われます。角度ブレ、シフトブレ、回転ブレに対応する5軸対応で、ピントと同様にわずかなブレも写りに影響する画素数であることを考えれば、必須と述べてよいものです。補正効果は、シャッター速度に換算して最大6段分相当。実際、作例を見ても手ブレをよく抑えており、小型軽量なXシリーズのミラーレスで手持ち撮影するようにGFX100Sでも軽快に撮影が楽しめました。なお、前述したピクセルシフトマルチショットは、この手ブレ補正機構を応用したものと考えられます。
1億画素がもたらす解像感や立体感に圧倒される
掲載した作例のとおり、圧倒的な解像感や立体感は、中判デジタルならではといえるものです。それは、まるで35mmフィルムで撮影した写真と、中判フィルムで撮影した写真を比較したときとまったく同じ。しかも、APS-Cサイズとフルサイズの違い以上に大きく、同社がAPS-Cサイズのミラーレスとともに展開しているのがフルサイズではなく“ヨンヨンサンサン”の中判デジタルとしたことがよく理解できます。今回のレビューでも、パソコンで作例を見るたびに、その写りから「今度はこのカメラでポートレートが撮りたい」「機会があれば風景を狙ってみよう」と思うこともたびたびでした。
ただ、正直にいえば重いのも事実です。ボディはまだしも、レンズは大きく重いものがほとんどで、複数のレンズを携えて撮影へ…というのはある程度覚悟のいるものです。もちろん、それによって得られる写りは何ものにも代えがたいものであるのも事実ですが。
上位モデルである「GFX100」をはじめ、これまでも中判デジタルで1億画素を超えるものは存在していますが、この“比較的”廉価なGFX100Sの登場により、1億画素の中判カメラがぐっと身近な存在になったといえます。もちろん、おいそれと買える価格のカメラではありませんが、超高画素の世界を、中判デジタルの写りを楽しんでみたいと考える写真愛好家にとって、最善の候補と成り得るカメラといえるでしょう。