米労働省が2021年5月7日に発表した4月雇用統計の主な結果は、(1)非農業部門雇用者数26.6万人増、(2)失業率6.1%、(3)平均時給30.17ドル(前月比-0.1%、前年比+4.2%)という内容であった。
(1)4月の米非農業部門雇用者数は前月比26.6万人増と、市場予想(100.0万人増)を大幅に下回った。前月の77.0万人増(91.6万人増から下方修正)からも大きく減速した。内訳では「レジャー・接客」が33.1万人増加した一方、人材派遣、製造業、運輸・倉庫などで減少した。非農業部門雇用者数の3カ月平均増加幅は52.4万人となり、緩やかな回復に留まった。
(2)4月の米失業率は6.1%と市場予想(5.8%)を上回り前月から0.1ポイント悪化。一方、フルタイムの就職を希望しながらパート就業しかできない人なども含めた広義の失業率である不完全雇用率(U-6失業率)は10.4%と、前月から0.3ポイント改善した。労働力人口に占める働く意欲を持つ人の割合である労働参加率は61.7%と前月から0.2ポイント上昇した。
(3)4月の米平均時給は30.17ドルとなり、前月から0.21ドル増加。コロナ禍の大混乱で昨年4月に記録した30.07ドルを上回り過去最高となった。伸び率も前月比+0.7%、前年比+0.3%と、予想(0.0%、-0.4%)を上回った。
米国で新型コロナウイルスワクチンの接種が加速する中、4月雇用統計は大幅な改善が期待されたが、蓋を開けてみれば「ショッキング」な数字が並んだ。非農業部門雇用者数の増加幅は予想の4分の1程度に留まり、失業率は低下予想に反して上昇した。その背景として、米政権の失業給付上乗せ措置によって就業意欲がそがれたのではないかとの見方や、一年前(昨年4月)の非農業部門雇用者数がコロナ禍で未曾有の2,000万人減となっていた事から季節調整に歪みが生じたのではないかとの見方が出ている。いずれにせよ、U-6失業率の低下や労働参加率の改善も見られる事から、表面的な数字ほど深刻な雇用統計ではないと言えるだろう。米4月雇用統計を受けてドルは下落したが米国株は上昇、米長期債利回りも一時の低下から持ち直しており、実際のところ市場は今回の雇用統計をそれほど悲観的に捉えてはいないようだ。その分だけ、次回5月雇用統計の結果が重要になりそうだ。