Intelは5月11日、Tiger Lake-Hこと11Gen Intel Core mobile Hシリーズプロセッサ、及びIntel Xeon W-11000シリーズを発表した。これに関する事前説明会の内容を元に紹介したい。
Tiger Lake-Hの存在そのものは、今年1月に開催されたCESのタイミングで公開された。要するに8コアのTiger Lakeである。今回はウェハ写真(Photo02)及びダイのアップ(Photo03)も公開された。このダイであるが、相対的にCPUブロックがかなり大きく、GPUの占める割合がそれほどでもないのが、これはTiger Lakeよりずっと少ない32EU(Tiger Lakeは以前こちらで説明したように48ないし96EU)しか搭載していないのが理由である。Tiger Lake-Hの場合、Gaming Note向けということでDiscrete GPU搭載が半ば前提となっているので、あえてGPUを減らしてその分ダイサイズを縮めたというあたりだろうか。仮に96EU構成にした場合、ダイサイズは横方向が36%ほど伸び、280平方mm近くになりかねない。これはコストの観点からも許容しにくいだろう。
さてそれはともかく。Tiger Lake-Hの投入にあたり、IntelはいわゆるGaming NoteやMobile Workstationのマーケットにいくつかの新しい定義を持ち込んだ(Photo04)。これは筆者の想像だが、なんでこんな事をしたかというと、間もなく投入されるXeベースのDiscrete GraphicsをTiger Lake-Hと組み合わせて、それこそEvoの様な形でラインナップすることをIntelは想定しているのかもしれない。恐らくこのMobile向けDiscrete Graphics(Xe-HPGだと思う)は3つぐらいグレードがあり
- Core i5+Low end Xe-HPG : Essential
- Core i7+Low end Xe-HPG : Ultraporable
- Core i7/i9+Middle Range Xe-HPG : Thin enthusiast
- Core i7/i9+Top end Xe-HPG : halo enthusiast
といった形でのラインナップを予定している格好だ。ただ現状はまだXe-HPGベースのDiscrete Graphicsは存在せず、なのでAMDないしNVIDIAのGPUと組み合わせる格好なので、あくまでカテゴリー分けを見せるに留まっている、というあたりだろうか? ただ既にOEMメーカーはこのカテゴリー分けに沿った形で製品を投入しつつある、という話である(Photo05)。
話をプロセッサに戻すと、今回のTiger Lake-Hの特徴はこんな感じ(Photo06)。Tiger Lakeの周辺回路などについては以前こちらで説明しているが、通常(?)のTiger Lakeとの違いとしては
- PCIe Gen4レーンがx20利用可能 : Tiger Lakeではx4のみだった。
- Xeが最大32EUに削減
といったあたりになる。ちなみにこの図ではPCHとCPUが別々のダイになっているようにみえるが、CESでのスライドとか、今回の冒頭の写真(Photo01)にあるようにダイそのものは1つであり、なのでCPUとPCHダイは物理的には一つではあるが、内部的には分離されており、DMI 3.0×8で接続されるという構造になっている模様だ。
さて肝心の性能である。まずはGen 10(第10世代)のCore i9-10980HK vs Core i9-11980HKの比較がこちら(Photo07)、Ryzen 9 5900HXとの比較がこちら(Photo08)、Ryzen 9 5900HS vs Core i5-11400Hの比較がこちら(Photo09)である。
比較はゲームベンチのみだが、いずれもTiger Lake-Hが高い性能を発揮する、とアピールしている。もっともそのゲームタイトルがやや偏っているのは考慮しておきたいところで、また実際のフレームレートが示されていない他、細かく設定を見ていると電源プランをBalancedにしているのが気になる。BalancedだとAMDでは負荷が掛かってから実際にフルパフォーマンスになるまでやや時間が掛かる、というのは以前こちらのレポートでIntelが述べていた話であり、これはこれで現実に寄せたと理解は出来るのだが、こういう性能比較であればFull Performanceに設定しておくべきという意見もあるだろう。今回大差がついた理由のいくつかが、これで説明できるという可能性は残る。他にはContents Creationでは第10世代と比較して14~22%(Photo10)、Ryzen 9 5900HXと比較して18~24%(Photo11)高い性能を発揮できる、としている。
さて、最後がXeon W-11000シリーズであるが、これはTiger Lake-HにvProの機能を全部有効化した形で提供されるもので(Photo12)、加えてECCメモリのサポートも追加される。
ちなみに製品ラインナップとしてこちらのレポートでは、1月13日の時点でark.intel.comにラインナップされていた3製品のスペックをまとめたが、実際には10製品がTiger Lake-Hとして発表されることになった(Photo13,14)。なお質疑応答によれば、今回のTiger Lake-Hの場合、PL1は45W、Base PL2は107W、Performance PL2は130W、PL1 Tauは56secとの事だった。どうやらPL2が更に細分化された模様だ。